第0002撃「メタ氏、中学生となり部活に入る!!」の巻
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平成元年1989年、4月、中学1年の1学期。
1989年の春、
小生は中学受験に見事玉砕し、
地元の公立、芝嶋中学校へと進学することとなりました。
名門中学の制服に袖を通し、
朝の通学路を鼻高々に闊歩するはずだったのが、
人生、何が起こるか分からぬものであります。
入学して間もなく、
小学校は違えど顔馴染みだった紀野に、
「部活、どこに入るん?」と訊いてみました。
紀野は「技術部やな」と、ためらいもなく答えました。
紀野は、ミニ四駆を改造したり、
模型を組み立てたりすることに長けた男であります。
技術部というのも、いかにも彼らしい選択で、
「職人の道を進む気やな」と、小生は納得したのであります。
もっとも、小生には技術部など、
ハンダごてと電気コードが縦横に走る世界など、
どうにも敷居が高うございました。
「ちょっと無理やな……」と一人ごちたところで、
今度は多坂を見つけ、声をかけてみました。
「部活、どこ入るん?」
「テニス部やな」
と、彼は実にあっさりと答えました。
「テニスボールって、当たったら痛いんちゃう?」
「アホか、軟式やぞ、ゴムボールや!」
なるほど、軟式という言葉の響きに、
小生の心はやや前向きになったのであります。
何より、友と一緒というのは心強い。
「よし、それやったら小生も……」と、
気持ちはすっかりテニス部入部モードへ。
ところが運命の土曜日、
午前中の授業を終え、午後は部活説明会。
体育館には各クラブの代表者が壇上に並び、
マイク片手に自クラブの魅力をアピールするわけですが、
その中に、ひときわ異彩を放つ御仁がいました。
肌は小麦色、
髪は天然パーマで、ふわりふわり。
さながら、黒人ジャズシンガーのような風貌。
その人こそ、写真部の部長、渡瀬氏(仮名)でありました。
小生、その時点ではまだ、
「まあぼくはテニス部やし」と、
聞き流していたのですが、
渡瀬氏の「暗室」という言葉に、
なぜか妙に惹かれるものを感じました。
陰陽でいうところの「陰」、
目立たぬ者たちの隠れ家、
そんな空気が、小生の胸をくすぐったのであります。
放課後、
各クラブを自由に見学する時間となり、
小生はまずテニス部の様子を見に行きました。
ところが、そこはすでに大盛況。
人が多すぎて、コートを見るどころか、
何がなんやら分からない状態。
「これは……縁がないな」
と判断し、ふらふらと、
写真部を目指して校舎の奥へ向かいました。
人気のない階段の隅、
白く塗られた木の戸の上に、
「写真部」のプレート。
コンコンとノックすると、
「誰や誰やー!?」
と、中から陽気な声が。
扉が開くと、あのジャズシンガー顔の渡瀬部長。
「おう、写真部へようこそー!!」
と、小生の腕を取り、
ぐいっと中へ引きずり込みました。
そこが、写真部の部室。
正確には、「暗室」と呼ばれる場所でありました。
階段の真下の三角形の空間に、
木の椅子、長机、
その奥には、現像機が3台。
「まあまあ、座ったってや」
と部長に促され、
小生は木の椅子に腰かけると、
「腹減ってるやろ?」
と、カップヌードルを差し出されました。
すでにお湯ポットまで完備。
どこかの秘密結社の勧誘を彷彿とさせる接待であります。
さらに、奥では女子部員が紙にシャーペンでコマを割り、
いわゆる漫画を描いておりました。
なんと創造的な空間でありましょうや。
赤いライトを灯せば、
そこはもはや心霊スポット。
恐ろしくも、落ち着く。
そんな矛盾した感情に包まれた小生は、
帰り際、入部届けを提出しておりました。
2日後の月曜、
多坂に向かって小生は言いました。
「写真部、めちゃくちゃ楽しいぞ!
毎日放課後、テーマパークやで!」
勢いそのままに、多坂も入部。
ふたりそろって写真部の門をくぐることとなりました。
かくして、
小生の芝嶋中学生活は、
陰の空間「暗室」とともに静かに幕を開けたのでありました。
続くよ。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)
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