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恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】  作者: 小林汐希
【第1部】初めて、恋を始めます
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21話 遊んでもらったお姉さんだなんて!




「桃葉さん。どうしてこちらに?」


 私は桃葉さんの登場に、どう反応してよいのかわからなかった。


 今の調理室には私一人だったから……。


 でもね、桃葉さんからは私に対する敵意などは全然感じられなかったんだよ。


「桜ちゃん、2日間大変だったんですってね」


「は、はいぃ……」


 そこに、着替えを終えたお兄ちゃんが戻ってきた。


「桃葉……」


「ちょうどよかった。さっき、お家の方にご挨拶に行ってきたの。これまでいろいろとご迷惑をかけてしまいましたって」


 どういうことなのだろう。もし、恋人関係が破綻したとしてもお兄ちゃんたちは大人だからそこに他の人が介入する必要はないはず。


「そうしたらね、高校の学校祭に二人が行っているってお話を聞いて、ちょうどいいかなって。私ね、地元に戻ることになったの。そのお引越しのご挨拶ってやつかな」


 そんな。お兄ちゃんと私がお付き合いすることになったからって、桃葉さんのキャリアを捨てるだなんて……。


「桜ちゃん安心して? 同じ会社で部署異動をお願いしたの。もともと私はそこの支店採用だから元に戻るだけ。そっちでのんびりとね」


 桃葉さんが明るく振舞っているだけなら申し訳ないのだけど、そんな様子には見えない。


「桜ちゃんには秀一くんじゃなくちゃダメ。一目でわかったわ。ちゃんと幸せにしてあげてね」


「桃葉さん……」


「秀一くんとのことはきっと長くないって予感はあった。たまたまね、高校生の同級生が私の事をずっと見ていてくれて、『戻ってこないか?』って。今回のお話になったの。桜ちゃんにも報告して安心してほしくてね」


「はい。よかったです」


「それと、桜ちゃんのご両親のことなのだけど……」


 桃葉さんはお兄ちゃんのお家で私の家のことを聞いたそう。すぐに隣のお店に寄って私のお母さんと話してくれたんだって。


「桜ちゃん。ご両親の事は心配いらないわ。私の両親に電話をしたら『任せておけ』ですって。ご近所ですもの。今は体を休めてって」


 いたずらっ子の女の子に戻った桃葉さんの顔を見て、私はふと思い出した。


「もしかして、桃葉さんって……。モモお姉ちゃんだったんですか?」


「思い出してくれた? 嬉しい!」


 私が幼い頃、お正月や夏休みにはお爺ちゃんのお家に預けられていたことがあった。まだお店を軌道に乗せるのに精いっぱいだったお父さんたちがお願いしてくれていたのだと思う。


 見知らぬ土地で一人ぼっちだった私に、年上のお姉さんが毎日のように遊びに来てくれて、私の孤独を埋めてくれた。当時詳しい素性は知らなかったけれど、モモお姉ちゃんと呼んでいたことは覚えている。


「なんだよ。桃葉さんと桜って知り合いだったんかよ」


「ふふ。大きくなった桜ちゃんを見てね。この子だったら秀一さんを任せられるって。だから、私も桜ちゃんも恨みっこ無し。ご両親が落ち着いたら遊びに来てね」


「はい! あの……、お手紙書いたりしてもいいですか?」


「もちろん! 桜ちゃんのご実家に届けば私に渡るようになってるから。手紙だなんて、桜ちゃんらしいわね。片付けの途中で邪魔しちゃってごめんね」


 そう笑って言い残すと、桃葉さんは手を振って出ていった。


「なんか拍子抜けだなぁ。桜の知り合いだなんて知らなかったよ」


「私も忘れていました。いいんですか?」


「桃葉さんを見ていてくれた人がいたんだ。今から混ぜ返しても失礼だ。桜だって、納得しないだろう?」


 そうだよね。お兄ちゃんが私の隣にいてくれると誓ってくれたのに。みんなに失礼になってしまう。


「今日はお疲れさん」


「お兄ちゃん、ありがとう」


 本当に最後にまかないとして残しておいたピザトーストを二人で焼いて食べた。


「桜。いいのか?」


「うん、だってお兄ちゃんと一緒だもん。それで私は満足です」


「忙しかったけど、あっという間に終わっちゃったな」


「本当ですね」


 ごみ出しも終わって調理室の鍵を返せば、私の学校祭は本当に終わり。


 でも、もう少しこのままでいたかった。


 出来ることなら、私たち二人で、もっと続けてみたかった。


「お兄ちゃん、私、本当に楽しかった」


 薄暗くなった部屋で、私はお兄ちゃんの手を取った。


「後夜祭の花火、一緒にここから見ませんか?」


「ここでいいのか?」


「ここの方が私らしいです」


 全校放送で後夜祭が始まると曲が流される。片付けが終わった生徒がグラウンドに出ていくのが見えた。


「疲れましたね」


「まったくだ。桜……?」


 校庭の方が明るいし、調理室の明かりは全て消してしまったので、ここに私たちが残っているなんて気付かないだろう。


 学校の中だなんてもう関係ない。


 私はお兄ちゃんに抱きついて体を震わせていた。


「桜……」


「やだよ……。離れたくない……」


 そんな私のことを何も言わずにそっと腕を回してくれたお兄ちゃん。


 花火と月明かりが私たちのシルエットを床に映し出していた。


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