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恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】  作者: 小林汐希
【第1部】初めて、恋を始めます
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2話 お店の名前は私から?




 私の家は『さくら』という小さなレストラン。


 ファミリーレストランのチェーンではなく、地元の商店街にある、どちらかと言えば喫茶店の延長にあるような感じ。



 もともとはホテルのレストランで料理長だったお父さんが、そのホテルのパン屋さんで働いていたお母さんと結婚、そして私が産まれたことから独立して自分のお店を持ったのが始まりだとか。


 お店の名前だって、私の名前から採ったらしい。


「おはよう。二人ともまたお使い頼まれたな?」


「おはようございます。そうなんですよぉ、朝一番にこれなんですから」


 八百屋のおじさんともこんな会話はいつものことだった。


 お父さんはいつも食材をこの商店街で調達するし、私も小さい頃からこうやってお使いに出ていた。


「ほれ秀一、あんたが持って帰るんだよ」


「俺すか?」


「こんな可愛い桜ちゃんに重いもの持たせられるわけないだろ!?」


「へーい」


 うちもこの辺のお店としては結構古参になる。小さなお店だけど、こんな感じでやっているから、お客さんは地元の人も多い。


「お兄ちゃんごめんなさい」


「しゃあねーよ。桜に持たせるわけにいかないし」


 ジャガイモとタマネギの袋を両手にぶら下げて道を引き返す。


「お、パンやってるな?」


「そうですね」


 お店の前にはパンの焼ける匂いが漂っている。


 お母さんの日課は、開店前に今日1日に使う分を自分で焼くこと。


 これもうちの評判みたいで、パンを目当てで来てくれるお客さんもいるみたい。


「ただいまぁ」


「おかえり。秀一くんもごめんなさいね」


「い、いやぁ。別に。朝飯ごちそうになっちゃったし」


 お兄ちゃんのご両親はお互い泊まりの仕事をしているから、家に居ないことも多い。小さい頃から自然とうちで私と一緒に食事をすることが多かったし、今でもそれは続いている。


 今朝だって、そのついでに寝坊した私を起こしに来てくれたんだと思うけど……。


「桜はこの週末予定あんの?」


「うーんと、期末終わるくらいまではちょっとかな……。なにかあります?」


「いや、初めてのボーナス出たしさ」


「えっ?」



 ちょっとドキドキしちゃう。それって、どういう意味なの?


「変な気を起こすなよ? 他に使い道もないしさ」


 私の反応にお兄ちゃんも少し慌てたようだった。


「じゃぁ、期末終わったら。それまで残ってたらでいいですか?」


「残ってたらな」


「うん。今日は朝からごめんね。このあとお昼過ぎから雑誌の取材が入るんだって」


 本当はもっとゆっくりしていって欲しい。


 でも私も準備をする時間になってしまった。


「桜ん家も商売繁盛かぁ」


「でも、楽じゃないよぉ。……ねぇお兄ちゃん」


 2階に上がる階段の前。私は振り向いた。


「ん?」


「今夜は?」


「たぶん戻ってるよ。暇だからぶらぶらしてくるし」


「じゃあ、晩ごはん持っていきますね」


「分かった。桜も頑張りすぎんなよ」


「うん、ありがとう!」


 お兄ちゃんは、お隣に戻ってしまった。


「桜、ごめんね。最近こんなのばっかりで」


 お母さんが後ろから声をかけてくる。


 もうすぐ夏休みだから、雑誌やフリーペーパーなどに載せる取材が毎回入る。


「仕方ないよ。お店の服に着替えてくるね」


 普段なら私服で手伝っちゃう時もあるけど、今日はそうもいかない。


 普段は二つに分けている髪の毛をひとつにまとめ直す。


 白いブラウスと膝下までの青いフレアスカート、ここに薄ピンクのエプロンを着けて完成。個人のお店だから決まりは無いんだけど、私はお店に出るときは大抵この服を制服代わりにしている。


 お客さんから時々聞かれるけど、実は別々の通販とかで買いだめした物を私が好きで組み合わせているだけなんだよね。




 ランチのお客さんが終わって、ここから数時間の貸し切りにして取材を受ける。


「よろしくお願いします」


 もう一度、いくつか料理を並べて、写真を撮りながらインタビューを受ける。


 厨房のお父さん、パンとテーブル担当のお母さん、食器やら飾り付けとテーブル補助で、お店の名前にもなっている看板娘の私というのがいつもの流れ。


 これが記事に載るのは夏休み直前だって。


「また混んじゃうのかなぁ」


 お皿を洗って、再び営業中の札に変えながら、私はちょっとため息をついた。


「桜はゆっくりしてて。高校最後の夏休みだから、勉強もしないと」


「そうだねぇ」


「ま、勉強は秀一くんに見てもらえばいいから心配いらないか」


「えっ? でもお兄ちゃん今年から会社だよ」


 この春までは、お兄ちゃんも学生だったわけで、ご飯のお礼にと私の家庭教師をやってくれていた。


「今朝、これからもって頼んでおいたから大丈夫だって」


「もぉ、お母さん勝手に頼まないでよね」


 顔が熱くなってきたのが分かる。


「桜、顔が赤いわよ」


「へ、平気だもん。お兄ちゃんにご飯持っていくね」


「お店はいいから、ゆっくりしておいで」


 私はお盆にラップをかけて、隣の家に向かった。


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