08淫蟲に咬まれた奴隷をベッドで治療する話
アリーシャをお姫様抱っこで抱え上げ、急いで自室へと帰ってきた。
「はあっ……はあっ……あっ……」
荒い呼吸音。玉の様な汗。
ベッドへ寝かせ、水タオルを額に乗せたが、アリーシャの症状は酷くなる一方だった。
「サイラス様、どうすれば……」
心配そうなセシル。
「解毒薬の類は、ゲイラも持っていなかった。
こんな特殊な蟲の解毒薬は、帝都の蟲屋にでも行かなきゃ手に入らないだろう。
つまり、ここの治療術師でも治せない」
俺がそう言うと、セシルは泣きそうな顔になった。
「そ、それじゃあ……」
「……1つだけ、方法がある」
だが、その方法を使うのは躊躇われた。
それじゃあゲイラとやってる事が変わらなくなる気がするからだ。
しかし、このまま放置すれば、アリーシャはやがて限界を迎えて悶え死ぬ。
決断するしか無い。
俺はアリーシャの耳元に顔寄せ、囁くように言う。
「すまない、君を静める方法は、もうこれしかない。
君を助ける、なんて言っておきながら、こんな事になって、本当に……すまない」
アリーシャは荒い呼吸音の中、全てを察したようだった。
「……分かっ……た……」
トロンとした目で、俺の事を見つめている。
「お願い……もう、我慢……出来な…い……」
俺は頷き、着ていた騎士団の制服に手を掛けた。
「セシル、すまないが、しばらく外を向いて、見ないでいてくれ」
「えっ?」
ーーーーー
(……見られてる)
(見ないでってサイラスが言ったのに、手の隙間から……)
(こんな……恥ずかしい姿……見られてる……)
ーーーーー
「治療」は終わった。
ベッドには汗だくになった俺とアリーシャ。
ソファには真っ赤な顔で座っているセシル。
「……。」「……。」「……。」
三人の間に気まずい沈黙が流れる中、最初に口を開いたのはアリーシャだった。
「ううっ……うっ……」
小刻みに震えるアリーシャの身体。
眼には涙が溢れ始めていた。
「すまない、俺は……結局、君を……」
「あなた……ずーっと『すまない』ばっかり、そんなに……謝らないで…よ」
「ご……」
思わず、『ごめん』と言いそうになって、言い淀んでしまった。
「こんな、形で……初めてを……。
吟遊詩人の歌う物語みたいには……いかないものね。
まあ、白馬の王子様が……迎えに来るなんて、思ってた…訳じゃない……けど」
そう言いながら、目に溜まった涙をグイッと腕で拭いて、
「こっ……こんなの……」
うん?
「こんなの、やったうちに入らないんだから!
これは事故、そう事故よ……。
だからカウントされない、ノーカンよ、ノーカン!」
ノーカンって……。
「あなたも、こんな事ぐらいで私をものにしたなんて、思わないでよね。こんなのは今回だけ、これっきり」
そう言って、プイッと顔を背けてしまった。
「……ああ、その事なんだが」
俺はためらいがちにアリーシャに説明を始めた。
「君に打ち込まれた淫毒は、かなり強力な物だ。
完全に抜け落ちるまでは、まだ時間がかかる」
「ええっ?」
「しばらくの間は、夜が来る度に後遺症に悩まされるだろう。
その都度、沈めていくしか無い」
「……どれぐらい続くのよ」
「1週間ぐらいすれば、落ち着くと思う」
「1週間?……まだ、あと……七回も……」
アリーシャは顔を赤らめながら、
「……あんな、すごいの……が……」
口に手を当てながら、絶句した。
ーーーーー
倉庫に転がっていた連中は、憲兵隊に突きだしておいた。
三人組は、他者の指定奴隷に手を出したので、厳重注意に加え減俸。
次は無いぞと上官に脅されていた。
ゲイラは完全な軍規違反だ。
拘束され帝都に搬送されて行った。
恐らくはそのまま軍刑務所送り。
ああ、その前に入院が必要かもな。
俺はといえば、四人を相手に打ちのめした話に、尾ひれや背びれが付いて広まって、回りから一目置かれる様になってしまった。
あまり目立ちたく無かったのだが……。
「聞いたぜ、ゲイラの奴を返り討ちにしたんだってなあ」
朝礼へ向かう途中で、いつものようにライネルが話し掛けてきた。
「お前と奴隷交換するの、やっぱ止めとくわ。俺まで倒されちまいそうだ」
そう言いながらバシバシと俺の肩を叩いて笑っていた。
ーーーーー
翌日の夜、危惧した通りアリーシャの身体に後遺症が襲いかかる。
「はあっ……はあっ……」
ベッドの上でもどかしそうに喘ぐアリーシャ。
「……やはり、ぶり返しが来てしまったか」
アリーシャの額に手を当てる。
火照っていて、熱い。
「……するしか無いのなら……早く、して……あまり長く…苦しめないでよ……」
「……分かった」
俺はアリーシャの両肩に手を置き、その身体の上に覆い被さる。
「あ……」
ーー
それからは夜毎アリーシャと肌を重ね合わせた。
最初のうちはぎこちない動きだった二人の行為は、回数をこなす内に段々と手慣れていった。
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