プロローグ 財宝の発見
この日、ランサー王国は滅亡した。
王国の十倍以上の兵力を誇るグランツ帝国は、圧倒的な兵力差を利用して電撃作戦を決行し、瞬く間にランサー王国の首都スピネルを陥落させたのだ。
王国の象徴だったスピネル城も落城した。
グランツ帝国騎士団の一人である俺は、仲間の騎士達数名と共に落城した城の中を歩いている。
「お前、この戦いが初陣だったそうだな。ツイてるぜ、初っぱなの戦いがこんな楽勝の戦いでよ」
先輩格の騎士であるライネルがそう言った。
実際、戦いは楽な物だった。
帝国の属領から強制的にかき集めた雑兵達に、強引に城の正門へ突撃させ、多数の死傷者を出しながら、無理矢理に攻め落とさせたのだ。
帝国にとって、属領兵の命など紙くずと同様。
いくら死んでも代わりなどいくらでもいるのだ。
死体の山を築きながら破壊された正門から、帝国の精鋭部隊である帝国騎士団が突入を果たし、城内を速やかに制圧下に置いた。
ランサー王国の国王も身柄を拘束され、主だった将軍達も全て討ち取られた。
先日までは、城内のあちこちで残敵の掃討が行われていたが、今では静かなものだ。
いずれ完全に鎮圧されるのも時間の問題だろう。
俺達が今向かっている先は、もはや数少ない小競り合いを続けている場所の一つだった。
城の最奥にある一室に、何人か立て籠って内側から鍵を掛けているという。
「俺の今までの経験から言うとな、ああいう立て籠った場所にはオタカラが詰まってるモノだぜ。お前、ほんとツイてるな」
ニヤっとした笑みを見せるライネル。
何か、金目の物でもあるということだろうか。
ーーーーー
ややあって、俺達は目的の部屋の前へ到着した。
部屋の前には既に到着していた属領兵が何人か待機していた。
手には斧を持っている。
「よし、お前ら、開けていいぞ」
ライネルが指示すると、属領兵達は部屋のドアへ向かって斧を打ち降ろし始めた。
帝国騎士団はただそれを見守っているだけ。
こういうただの力仕事は、下っぱの属領兵にやらせればいいと考えているのだ。
「へへっ、ほーらお出ましだ」
ライネルがそう言った次のひと振りで、ドアは完全に破壊され、打ち破られた。
ライネルが言うところの「オタカラ」が外から丸見えになる。
それは若い女性達だった。
城内で働くメイドや侍女といった女性の使用人達が一ヶ所に身を寄せて隠れ潜んでいたのだ。
「な、あったろ?オタカラが」
ニヤニヤ笑いを浮かべるライネル。
「よーっしお前ら、オタカラの山分けといこうぜ!」