第ニ話 定められた運命
湯船に浸かりつつ、状況整理を始める。
学校帰りに虹色の石、[輝石]ってのを拾ったらテルスが出てきて……そのテルスが[星霊]っていう地球の力を持った存在。そして星霊同士が最後の一人になるまで戦う[星戦を行い、俺はテルスのマスターになって……なんか悪い言い方になる気がするけど巻き込まれたって訳か……整理したら少しは頭がスッキリしたかな。でも、それって俺、結構やばいのでは……?
色んな意味で、人生終わったかもしれん。戦いなんだから一筋縄じゃ行かない。何かもっと凄いものに巻き込まれて死ぬかもしれない。何より人間じゃないとは言えあんな小さい子たちが傷付くのは嫌だな。かといって、俺がどうこうできる問題でも無いのかもしれない。
柚の香りが鼻を通る。
俺はテルスのマスター......つまり、テルスのサポートをすれはいいのか。風呂から出たら、少しテルスと話をするか。
「上がったぞ」
「お帰りなさい、翔さん」
「えーっと、質問をさせてくれ。星戦ってのは、本当の殺し合いなのか?」
「はい、殺し合いの戦争です……マスターは、星霊に指示をだし、星霊をサポートすることが役目です。基本的に星霊同士の戦いは決闘ですから、マスターが危機的状況になることは少ないですが、少なからず危機的状況になる可能性は否定出来ません……」
「まぁ、その時はその時だ。大人しく俺も死んでやる。たまにはスリルがあってもいいんじゃないかな」
「私は、本当はこんな争いなんてしたく無いんです。でも、それが星霊の運命。私は、星戦で貴方を守る為、[神]となり世界の均衡を守る為。それに、勝者のマスターは何でも願いが叶えられるんです。そのためにも頑張らなくては」
「願い……まぁ、そのうち考えておくよ。なんか、優しいんだな。テルスは」
「え、えっと……なんか恥ずかしいです……」
「はは……さて、俺はもうなんか疲れて眠くなってきた。テルスの寝場所は……母さんとかの布団が空いてるから、それを使えばいいよ」
「ありがとうございます。すみません、色々ご迷惑をかけてしまって」
「いいよ、別に気にして無い。普通に暮らしてても、あんまり面白いこととか無いしさ。部屋、分けるか?それとも俺の部屋で2人で寝るか」
「えっと……じゃあ2人で」
「……了解」
とりあえずテルスの為の布団を自分の部屋に持ってきて、俺の布団の隣に敷く。
「それじゃあ、お休み」
「お休みなさい、翔さん」
テルスはすぐに眠った。よく見ると結構寝顔が可愛くえ、まるで妹が出来たみたいだった。
俺も眠くなってきた。いい夢、見れるかな。
12月22日 火曜日
目が覚める。時刻は午前6時38分。俺の隣にもう一つ布団があって、そこにはテルスが居る。
昨日は色々ありすぎて大変だったな……だいぶ理解出来てきたが。
隣で寝てるテルスを起こす。
「起きろ、テルス。朝だぞ」
「んっ……ふぇ?あー、おはようございますー......翔さん......」
星霊でも朝は弱いのか。一階に降りて、朝食の支度をする。俺は朝食を軽く作り、テルスはテレビを見てる。15分ほどで朝食は完成、テルスと朝食を食べながら話をする。
「学校に行っている間は、私は霊体となって姿を隠します。テレパシーで意思疎通は出来ますので」
「もし学校に行く途中とか、学校の中で戦うようなことがあったらどうする」
「星霊は別の星霊をある程度感知することが出来ますので、私がまずテレパシーで伝えます。その後は状況によって翔さんに任せます。ですが、まず最初に人目のつかない場所や戦闘被害の少ない場所に逃げること、それを優先してください」
「分かった。よし、そろそろ学校に行くぞ」
「分かりました」
テルスの体が一瞬で消えた。触れることも出来ない。
玄関のドアを開け、自転車に乗り、学校に向かう。特に何もなきゃいいんだが......
[翔さん、星霊の気配がします]
いきなりの発言に動揺してハンドルを大きく傾けてしまい、バランスを崩して転びそうになった。
[朝っぱらからか、えっと、どのくらい近いんだ?]
[ここから近くの、加賀見第三公園と言うところに反応があります。]
[そのまま野放しにしといて、何か影響はあるのか?]
[分かりませんが、マスターが精霊に命令をすれば、いくらでも物や人に危害を加えることは出来ます]
[……分かった。被害が出るとまずい。とりあえず、学校に遅刻の連絡をしてから第三公園に向かう]
[分かりました、お願いします]
手短に学校へと連絡をする。
遅刻理由は……体調不良とでも言っておくか。
単位はまだ平気かな。
俺は加賀見第三公園へとチャリを走らせることにした。
今回も読んでいただきありがとうございました。




