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子連れ王女と誓言  作者: rare
8/8

変貌

9

 アーファは剣に手をかけて、弓矢の飛んできた入口方面を振り返った。

 そこには、数名の兵士がいた。

「お前ら! この村に王女のなれの果てが来たと聞く! 誰一人として逃げられると思うな!」

 この調子であれば、どうやら囲まれているようだ。どうすれば――。

 ふと、老婆に目を遣った。老婆は小刻みに震えている。

 よく観ると、周りの人間全てが小刻みに震えている。

――いや、それは恐怖ではない。

 咄嗟にアーファは悟った。

「恐れることはありません」

 言葉が響き渡った。中央に居た男の声だ。これは、いったい――。

 男は立ち上がると、自分の胸に刺さった矢を引き抜いた。

 血が一滴も出ていない。男も小刻みに震えている。

 いや、〝振動〟していると形容したほうがいいか。

「後れを取るな! 矢を放て!」

 兵士たちから数十の矢が放たれた。しかし、村民は振動しているだけだった。

 アーファは咄嗟に自分の身を盾にして、乳母車に覆い被さった。

「う、うわぁぁぁあああああ!」

 司会の男の腕が、姉が差し向けてくれたゴーレムの腕のようになっている。兵士を握りつぶした手は、兵士の眼球を抉り出し、内臓を破裂させ、様々な方法で兵士たちをすり潰していく。

「お嬢ちゃん」

 アーファがふと顔を上げると、老婆にまで変化が現れていた。

 身体が倍ぐらいに膨れ上がっている。

 みると、周りの人間も膨張し続けていた。

「アタシらは、これから王都中に溢れる。伝染っていく。そんなときは、私たちの身体をじっと見つめれば良い。アンタなら、私たちの真の名を読むことが出来る。真の名を読めば、アタシらは退散する。……覚えて……おいで……」

 周りから煙の臭いがする。どうやら火をかけられたかのようだった。

 しかし、そんなものなんのその、膨れ上がった村民の一人が天井をぶち破って投げ告げていた。外では悲鳴が上がっている。

「いいかい、もし……名前が見つからなければ……若しくは普通の人間だったら……。その乳母車を使うんだよ。戦いな」

 言うことを言い終えたかのように、老婆も思いっきり膨れ上がった。

 アーファの目には、渦巻く文字と数式の塊に見えていた。

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