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子連れ王女と誓言  作者: rare
6/8

集会。

6

 室内は光に満ちていた。

 意外と広く、室内には既に四十人ほどの村人が集まってきていた。

 皆、何か世間話でもしていた。

 アーファは乳母車を押しながら周りを見回した。

――特に危険な人物はいなさそうね。

 老婆が隣にずっと居てくれているのも心強かった。

「ところで嬢ちゃん。その赤子は名前は何と言うんだい?」

 アーファは一瞬、答に戸惑った。そういえば名付けていない。

「まだ……。名付けていません」

「そうかい。名前は重要だよ? 下手に重い名前なんてつけたら、プレッシャーで潰れちまうこともあるしね。よく考えてからお付け」

 名前か……。何にするか考えてもいなかった。というか、子供を産む予定もなかった。或る日、突然腹が膨れて、気がついたら現れていた。

「お前の名前は何にしようか?」

 アーファは赤子を覗き込んだ。

 赤子は周りの様子をキョロキョロと見回している。

――そういえば、この子、一切ものを口にしていない。しようとさえしない。

 流石に大丈夫だろうかと考えようとしたところだった。

「皆様、今日もこの講義においで下さって、有り難う御座います。それでは、皆様に今日も色々と覚えて帰って頂きましょう」

 声が前方から響いた。

 皆の話し声がぴたりとやんだ。

「あれは、村長だよ」

 老婆が小声で伝えてきた。

「これから何を聴くんです?」

 アーファの問いに、老婆が、

「……まあ、聴いてりゃわかるさ」

 とだけ答えて、前を向いた。

「お集まりいただいた村民の皆様、それでは先日の復習です。物事は〝声音〟と〝共鳴〟に左右される、といったお話をしましたね」

 村長はとくに講壇で話しているわけではないので姿は見えないが、声からして五十代ほどであった。大きく通りの良い声だ。

 村長の声だけ響いている。皆、押し黙って聴いている。

「――と、おや、今日は新しいお客様がいらっしゃるようだ」

 村長の声と共に、村民皆が一斉にアーファの姿を振り返った。

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