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子連れ王女と誓言  作者: rare
3/8

旅立ち

               3

 次の日になった。

 赤子は結局なにも食べず、アーファだけが食事を摂っていた。

 アーファには妊娠に関する知識、子育てに関する知識は一切なかった。

 また、食事を運んでくる給仕も見覚えのない女性ばかりだった。

 朝、アーファが目を醒ますと、ベッドに隅に軽い鎧とロング・ソードが一振り、用意されていた。

 アーファは鎧に着替え、剣を佩くと、決意を持って赤子を抱え上げた。

「――行こう」

 お包みに包まれた赤子の笑顔だけが救いであった。

「それにしても、侍女たちはどこに……?」

 そのとき、男が入ってきた。

 産廟に入れる唯一の男性――国王だった。

「お父様……。私は――」

「従いてこい」

 国王は強い口調でアーファに告げ、そのままさっさと歩き始めた。アーファも後ろを歩いて行く。

 どこもかしこも静まりかえっていた。人の気配がない。

 不審に思いながらもアーファは赤子をしっかりと抱きしめ、国王に従いていった。

 しばらく歩いた後だった。

「ここまでだな」

 ここは王族しか知らぬ城の裏門。見送りには国王しか来ていない。

「お父様、これから私はどうすれば――」

 アーファの声には不安が籠もっている。

「大丈夫だ。此処から一日ほど下っていくと、一軒の家が山沿いの道にある。そこに居たら使いの者を寄こす」

「そうですか……。それでは、お父様、私はなんとしてでも生きていきます。この子を護って……」

 国王は背を向けると、「健闘を祈る」と言葉を吐き捨て、城に戻っていった。

 アーファはそれ以上することもなく、裏口の扉を開ける。すると、むっとした腐臭が立ちこめた。

 裏口の向こうの山道の沿いに、十数体の女性の磔死体が立ち並んでいた。

 アーファは絶句した。拷問を受けた後に腹を割かれ、苦悶に満ちた表情で内臓をまき散らしている死体の中には、あの女医の変わり果てた姿もあった。

 アーファは吐きそうになるのを必死で堪え、赤子をぎゅっと抱きしめた。

――どうして、こんなことに……!

 噎せ返る血と臓物が放つ腐臭の中、赤ん坊だけが笑みを浮かべていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  淡々とした無機質で硬質な文が、主人公のこれからの困難を想像させていいですね。 [気になる点]  ジャンル「パニック」(SF)って、ゾンビ大増殖でギャーとか、隕石落ちてくるよギャーとか、謎…
2020/05/15 18:49 退会済み
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