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子連れ王女と誓言  作者: rare
2/8

翌日

      2

 次の日、アーファは目を醒ました。

 真新しい白い服を纏い、腹には疵の痕すらなかった。

 痛みはなくなっていた。

「……どうしたのかしら?」

 周りを見回す。誰も居ない。

 不意に、泣き声がした。赤子の泣く声だ。

 横を見ると、ベッドの上に、おくるみに包まれた赤子の姿があった。

 アーファはじっと見つめた。

……可愛い。

 愛くるしい赤子の顔は紅潮し、何かを求めるように手を突き出している。目はまだ開いておらず、小さな身体は生命力を放っていた。

 アーファは思わず抱き上げた。

 すると、赤子は泣き止んだ。

……私の赤ちゃんなのかしら……?

 それにしても、腹に違和感がない。何もかも取り除かれたようだ。

「出産の疲れは取れた?」

 突然の声に、アーファは固まった。

「何を驚いているの。姉の声を忘れた?」

「フェネルお姉様……」

 そこに居たのは、この国の第一王位継承者である、姉のフェネルであった。

 フェネルは近づいてきて、ベッドの端に腰を下ろす。

「昨日は大変だったわね。――調子はどう?」

「……良好、です」

 アーファは控えめに言った。良好も何も、何ら異変がなかったからだ。

「貴女、腹を割かれたのよ」

「え? お腹を?」

「そう。その赤子を取り出すために、ね。でも、貴女の傷はみるみる癒えていった。赤子は無事に産まれ、貴女も何の傷も残さなかった……」

 しかし、フェネルの顔は冴えない。アーファは不思議に思った。

「お姉様……。私、どうすれば……」

 フェネルの顔が、姉の表情から、気品に満ちた美貌に戻り、女王の片鱗を見せた。

「アーファ、あなたは追放される。明日までは食事も運ばせるわ。旅の準備も整えさせる。こんなことは言いたくないのだけれど、貴女は――」

 フェネルが立ち上がった。そこには一国を背負う女王の気品が纏われていた。

「アーファ、貴女をこの国から追放します」

 アーファは言われた言葉を飲み込めなかった。

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