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聖玉と巫女の物語  作者: ともるん
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鎮魂

 アルマンとアシュリータは二つの聖玉を合わせ、お互いの手を重ねた。

 二人のまわりから、光のような霧が立ちのぼった。

 アシュリータは目を閉じて祈った。

 霧はしだいに虹色の渦となり、それは紫色の雲の方へと手を差し伸べるかのように広がっていった。


 フリンツはそれを信じられない思いで見つめていた。それを少し離れたところから見ていたウェルギンもまた、目の前で何が起きているのかわからなかった。ファルサはただ、動かなくなってしまったヘイワードを抱きしめて泣いているばかりだった。


 清浄な光を帯びた渦は、紫色の雲をとらえると、そのまま上に向かっていった。

 それらは地下の天井に染み入り、消えていった。

 雲は徐々に小さくなり、やがてその中から倒れた神官長と王の姿が現れた。


「父上!」

 フリンツの体がようやく動けるようになった。彼はホルティス王のそばに駆け寄った。

「……フリンツ」

「父上! ご無事なのですね! 良かった……」

 王は手を息子に差し出した。その手は宙をさまよっていた。

「父上、目が……」

「カイサルは? 神官長はどうした?」

 フリンツは傍に倒れていた神官長を見て、息が止まりそうになった。

 神官長は恐ろしいものを見たような表情のまま冷たくなっていた。

 フリンツの無言で王は察したようだった。

「カイサルが最期まで私の盾になってくれた」

 その時、轟音とともに大きな振動が地下空間を襲った。


「アシュリータ! 地下崩壊は避けられない。ここにいる人たちを……」

 アルマンの言葉が響いたあと、アシュリータが何か叫んだが、それは地下天井の崩落が始まった音でかき消された。フリンツはホルティスの体をかばうように身を丸めたが、一瞬、目の端でバイサイファルの剣が光ったように見えた。



 ちょうどその頃、北の森の上空高くフェネルたちが旋回しているのを、北の森の外れで待機していたヘイワードの隊が目撃していた。

 エリクと神殿に待機していた騎士たちによって神殿およびその周辺の人々はすでに高台に避難していた。

 彼らは信じられない光景を目にする。

 神殿の一部が大きな音とともに、陥没した。


「なんだ、あれは!」

 そして、地下から二重の霧のような雲のような帯が立ち昇り、それは空へと消えていった。


「キラキラ光ってたよ」

 無邪気な子供たちが口々に天を指さした。


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