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聖玉と巫女の物語  作者: ともるん
32/53

地下洞窟

 中は下へ続く階段になっていた。


「お気をつけ下さい。かなり深くなっております」

 カイサルはランプの火を使い、地下階段入り口の壁にかけてあった松明に火を灯し、それを手に持ち、ランプは王子に渡した。


 神官長に説明を求める前に、体が動いていた。

 フリンツ、ウェルギンがカイサルに続いた。


 ヘイワードはファルサを止めようとしたが、だめだった。

「お願い。私も知りたいの」

 ヘイワードは仕方なく、自分の後ろにいるように、と言って中に入った。


 ファルサが中に入ったあと、エリクは少し時間を置いて入ってきた。その時、人数が増えていることに、エリク以外気付く者はいなかった。


 先頭を行くカイサルは、等間隔に壁に設置されている松明にそれぞれ火をつけていった。そのおかげでしだいに周りの様子がわかってきた。

 片側が岩壁にはりついてる石段を下りているのだが、反対側は何もなく、ただ暗闇があるだけ。足で蹴った小石は底に着くまでに時間がかかった。

 かなりの深さがある。そして空間も。

 さきほど書庫に来る時に通ってきた、単なる通路ではない。

 まるで地下洞窟のようだった。

 その時、どこからか風がゴォーッと吹いてきた。空気感が違った。


 階段を降りきったところは、舞台のようになっていて、カイサル神官長がその舞台のまわりを取り囲むいくつもの松明に火をつけると、徐々に異様な光景が浮かび上がってきた。


「これは……!」

 思わず声を上げたのはヘイワードだった。


 舞台下には、ひとかかえほどもある大きな石がゴロゴロと無数にあちこちに散らばっており、それらの真ん中にひときわ巨大な石の塔が建っていた。石碑のようだった。


 そして、その石の塔の上には、国旗で見たことのある剣が突き刺さっていた。

「あれは、バイサイファルの剣?」

 ウェルギンが言うと、みんなは「本当にあったんだ」という風に、驚きの表情で伝説の勇者の剣を見つめていた。


「神官長、ここは?」

 フリンツが聞いた。

「墓地だ」

「墓地……? 王族の、ですか?」

「……」


 カイサルが口ごもると、彼とは別の声が響き渡った。

「違う」

 声の主の方を見た時、彼らは驚愕した。

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