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聖玉と巫女の物語  作者: ともるん
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魔族狩り

「隊長、やはり妖魔がいました!」


 一人の騎士がそう叫ぶと、紺色の国旗がはためく中、他の騎士たちが興奮した声をあげた。

 その時、大きな怪鳥が威嚇の声を出しながら飛び上がって行った。


「フェネルが北の森に逃げ帰っていきます!」

「ほおっておけ。眷属は単独では何もできん」

 隊長の男は、怪鳥に向かって矢を射ようとした騎士を制した。


 ここは北の森のはずれ。フェネルという怪鳥が目撃され、馬たちが興奮しだしたことから、近くに妖魔がいると判断したのだった。


 残された妖魔は一体。

 目は充血しており、正気を保っていない。

 その容姿はまるで、背を丸めて二足歩行する大きな猿のようだった。目は落ちくぼみ、髪の毛と思われるものは見当たらず、皮膚は骨にひっついているかのよう。肉はほとんどない。性別の判断すらつかなかった。


 騎士たちは剣を振り回しやすいように周りの木々の枝をなぎ払った。

「飛び立てないように間合いを詰めろ!」


 鎧と兜をまとい、剣を持った十数人の騎士たちが馬をおりて、妖魔と対峙する。

 妖魔は背中にはりついた黒い翼を広げられず、たじろいだ。羽毛はなくコウモリのような羽根で、広げると体の四、五倍はあった。

 妖魔は威嚇し、鋭い爪で騎士たちを襲う。


「ぎゃああ!」

 一人の若い騎士が腕を負傷した。


 出血を確認した仲間が彼を陣から外し、同行の神官のもとへ連れて行く。

「解毒剤を!」

 妖魔の爪には毒があった。

 神官は持っていた薬籠の中から解毒剤を取り出し処置を始めた。

「幻覚を見るようなら、すぐに城砦に連れ戻って、神殿の牢に一時隔離しろ」


 十数人の騎士たちが妖魔を取り囲み、隙を狙って剣を振り下ろす。

 妖魔の黒い翼は今やボロボロだった。

 騎士たちの攻撃が功を奏し、しだいに妖魔は弱っていく。


「今だ、巫女をお連れしろ」

 鎧をまとった騎士たちに囲まれて、アシュリータはただ一人、くさりかたびらのみを紺色の衣類の下につけたままの簡素ないでたちであった。


「巫女、とどめを」

 アシュリータは胸元から聖玉を取り出し、祈りを込めた。

 たちまち、その場はまばゆい光に満たされた。


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