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9話~救出

俺が飛び込んだ教室に広がっていたのは多数の魔物の姿と教室の端で額から血を流しながら、机や椅子を使い、なんとか魔物の攻撃を防いでいる幼馴染、雪の姿があった。


雪の後ろには涙を流しながら、雪を見つめている女の子たちがいた。


「雪、無事か!?」


俺はとりあえず近くにいたゴブリンを力一杯殴りつける。


殴られたゴブリンは他の魔物たちのほうに吹き飛ぶ。


「「グギャ!?」」


魔物たちは急な乱入者に驚きながらも、俺の近くにいたゴブリンたちが一斉に襲いかかってくる。


「……大地!」


「ふっ!」


俺は体制を低くし、一体のゴブリンの懐に素早く入り込み、そして正拳突きを腹部にめり込ませ、崩れるていくのを傍らに周囲のゴブリン達に回し蹴りし、吹き飛ばす。


周囲のゴブリン達は生きているか、死んでいるかも分からない状態で倒れ込んでいた。


「ふぅ」


やっぱまだ左腕は痛むな、でも耐えられる痛みだ。


俺は左腕の怪我の痛みを雪に勘付かれないようにに、雪の元へ向かう。


「「グルゥゥゥゥ!」」


そんな俺の目の前にコボルト達が立ちはだかる。


「何だ?この犬は?橘が言ってたコボルトって奴か?まぁ、どんな奴でも関係ねぇ!」


俺はコボルト達に突進する。


「グルゥ!」


コボルトは突進をしてくる俺に棍棒を振り落とすが、棍棒の軌道を読み、最小限の動きで攻撃を避ける。


コボルトは攻撃を簡単に避けられたことにショックを受けたのか目を見開き、少し動きを止める。


俺はそんなコボルトとの間合いを詰め、コボルトの喉を突く。


「グ!?グ、グゥ」


コボルトは喉を突かれたせいか、変な声をあげ、倒れそうになりながらも何とか踏ん張る。


「「グルゥ!」」


そんなコボルトを守るかのように他のコボルト達が攻撃を仕掛けてくる。


「へぇ、さっきの奴よりも連携はそこそこ取れるってわけか。」


少し感心しながら、奴らの攻撃に備える。


コボルト達は俺の周囲に囲み、同時に襲いかかってくる。


「でも‥‥‥」


俺はコボルト達の攻撃を躱しつづけながら、カウンターをかます。


「攻撃も牛野郎より速くもないし、大したことないな」


最後に立っているコボルトに正拳突きを繰り出しながら呟く。


先程までは多数の魔物達が蔓延していた教室であったが、今ではその魔物達は地に伏せ、そこから動き出す様子はなかった。


「ふぅ、一週間も身体を動かしてなかったから、かなり鈍ってるな。雪、無事か?」


俺は自身の身体の調子を確かめながら、雪に尋ねる。


「‥‥‥うん。助けてくれてありがと」


雪は右手でハンカチを持ち、額から流れている血を抑えていた。


「ホントに大丈夫か?結構血出てるみたいだけど」


「‥‥‥血はもう大丈夫。でもこの傷は跡が残っちゃうかも。私もうお嫁に行けない。」


雪は哀しげな顔をする。


「そんなに大した傷じゃないから大丈夫じゃないか?雪は美人だし、貰ってくれる人ぐらいいるさ!」


俺は雪に近づき、傷を確認しながら雪を慰める。


「‥‥‥じゃあ、大地が貰ってくれる?」


雪は何かを閃いたかのように悪戯めいた顔で俺に聞いてくる。


「な、なんで俺なんだ!?雪なら俺なんかよりもっといい奴が見つかると思うが。ま、まぁ見つからなかったら、そんときは考えてやるよ」


俺はあまりにも急な質問に驚いてしまい、初めて正直な気持ちを雪に伝えてしまった。


「‥‥‥ホント?じゃあ約束」


雪はいつもの軽い冗談のつもりで言ってきたのだろうが、まさかの返しに雪のように白い頰は真っ赤に染まる。


雪は俺に小指を差し出して指切りを求めてくる。


「お、おう」


俺も正直悪いとは思ってはいないことなので、指切りに応じる。


「‥‥‥これで将来も安心」


「いや、待て!これは雪を好いてくる奴が居なかったらの話であって、絶対になるわけじゃないからな!」


「‥‥‥照れ屋さん、さっきも私が怪我してたのを見て怒ってたくせに」


「いや、あれはだな‥‥‥」


教室は机や椅子が散乱し、魔物達が転がっている状況だが、雪と俺はいつも通りのやり取りをしていた。


「あの‥‥‥、私たちのこと忘れてませんか?」


女の子の一人がおずおずと手を挙げる。


「‥‥‥忘れてないよ。‥‥‥多分」


「うん?あぁ、君たちは怪我はないか?」


俺たちは女の子たちの存在を思い出したかのようにイチャイチャムードは消えていく。


「ぐすっ、私たちずっと一緒いたのに、イチャイチャされるほど忘れられてた」


「気にしちゃダメだよ!あれはリア充ってやつなの!私たちだって、いつかはリア充になれるはずだから!」


「うん!お姉ちゃんとお兄ちゃんのお陰で無事だったよ!ありがとう!」


三人の女の子たちの反応は様々でイチャイチャするほど忘れられて泣いている女の子、その女の子を慰めてるのか、自分に言い聞かせてるのかわからない女の子、大地の問いに純粋に返事する女の子という具合であった。


「よかった、みんな無事だったか。よし!こいつらがまた起きてしまわないうちに、さっさと教室から出て、グラウンドに向かうぞ」


俺は二人の女の子の様子が少しおかしいため、話を切り替える。


「‥‥‥賛成。またこんな奴らが来られたら厄介、早く出よう」


俺たちは教室から出て、廊下を走っていく。


廊下はとても静かで五人の足音だけが鳴り響いた。


少し走ったぐらいで俺は少し違和感を覚え足を止める。


「‥‥‥どうしたの?」


雪は俺の行動に対して疑問を口にする。


「静かすぎる。外では自衛隊が戦っている筈だし、まだ避難民の人たちの声や魔物の声、足音が聞こえてもいい筈だ」


「‥‥‥確かに。でもこのまま居座ることはできない。どうするの?」


「なんでこんなに静かなんだ?自衛隊になにかあったのか?」


俺は腕を組みをし、目を瞑って考える。


「簡単なことだよ。奴らは既に捕らえられたからだよ」


「何!?」


背後から聞き覚えのある野太い声が聞こえた。


俺たちは声の主の方に振り向くと、そこにはこちらを見てにやけているアーノルドの姿があった。


読んでいただきありがとうございます。

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