1話~自堕落な生活
高二の夏、部活を辞めた俺(加藤 大地)は、家のクーラーがガンガン効いたリビングのソファーに寝転んで自堕落な生活を楽しんでいた。
スマホを弄りながらキンキンに冷えた炭酸飲料を飲む。
これほど素晴らしい生活があるだろうか。
幼少の頃から空手一筋だった俺は今までこんなにダラダラ過ごしたことがなく非常に今の生活を満喫していた。
そこに母さん、瑞穂がやって来た。
「大地!あんたはいつまでダラダラやってるの!部活辞めたからってずっとダラダラしていていいわけじゃないんだから!夏休みの宿題したの!?」
開口一番に思いっきり怒鳴り始める。
「最終日になんとかする」
俺は気だるげに返答をする。
「またあんたはいっつも最後まで引き延ばして、雪ちゃんに助けを求める気なんでしょ!」
「そ、そんなことしないよ」
なぜバレたんだ。
「どーだか!母さん、父さんのとこに行ってくるから、一週間は帰らないからね!それまでにダラダラした生活から脱却しなさいよ!さもないと来月の小遣いは無しだからね!」
母さんは俺に向けて警告してくる。
父さん、賢治はアメリカの大学で教授として働いて、それなりに業界では名があるとかないとか。
なのであまり日本には帰ってこず、よく家族でアメリカに会いに行き、親子の親交を高めていた。
「それはあまりにも殺生な!勘弁してください!」
俺は母さんにソファーの上で土下座しながら許しを請う。
「何言ってんのよ、今の生活から脱却するっていう、簡単な話でしょ!はぁ、父さんがいたらしっかり言って言い聞かせられるのに」
母さんはため息を吐きながら、呆れていた。
二人の言い合いの中、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴り響く。
母さんは玄関のモニターを見に行き、チャイムを鳴らした人物を確認するとニヤニヤした顔で俺を見ながらにこう言った。
「大地、よかったじゃない。彼女の雪ちゃんが来てくれてるわよ!ほらさっさと準備してデートでも何でもしに遊びに行きなさい」
「彼女じゃねーよ!雪はただの幼馴染だろ!母さんが一番よく知っているだろ!」
俺は反射的に答える。
「何よ、雪ちゃんほど可愛い子なんていないじゃない!性格も良くて、何が問題なのよ!さっさと落として、私に早く可愛い孫を見せなさい!それとも何?あんたもしかして女の子落とし方も知らないの?それなら母さんが教えてあげるわ」
「いいよ!別に俺が雪のこと好きだなんて一言も言ってないだろ!しかも母さんが女心知ってるわけないだろ!」
それを言った途端、俺の頭に思いっきり空手チョップが入れてきた!
「痛ってー、何すんだよ!母さん!」
俺は涙目で母さんに訴える。
「あんたが母さんに向かって女心ないなんて言うからよ!母さんの女心に傷を与えることなんてするからよ!」
「それにしたって思いっきりチョップするのはどうにかしろよ!もう少し手加減してくれよ!母さんの手加減なしとか尋常じゃないんだからさ!」
母さんは空手の世界選手権で二度ほど優勝したことがあるほどの使い手だ。
そんな相手の容赦のない空手チョップなど痛くないはずがない。
「私があんたを幼少の頃から空手を教えてたのよ!私のチョップぐらいでどうにかなるほど柔な育て方してないわよ!少しぐらい我慢して、さっさと雪ちゃんと遊びに行きなさい!私はもう行くから、帰ってくるまでにちゃんと普通の生活しなさいよ!」
母さんはアタッシュケースを持って出て行った。
「本当に容赦ないな、はぁ、行くか」
俺は頭をさすりながら、幼馴染が待っている外に繰り出した。
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