〔1〕
くるまも、でんしゃも、へんしんセットもいらない。ぼくがいちばんほしいものを、どうしてサンタさんはくれないんだろう……?
あしたから、ふゆやすみだってせんせいがいった。おともだちとあえなくなるから、きょうは、たくさんおそとであそぶんだ。
ようちえんバスで、おおきなこうえんにきたけど、ぼくはこのこうえんがきらいだ。だって、たくさんのいきものがいて、あそぶじゃまをするから。
だけどみんなは、わかんない。
あのながい、きのいすは、もうずっとまえからねこさんがねているのに、そのうえに、かばんやおすなばどうぐをおいたりしている。
かわいそうだ、ねこさん。
「おまえ、なんでないてんだよ」
ゆうきくんだ。
ぼくはちょっとだけ、ゆうきくんがこわい。だってゆうきくんは、すぐにおともだちをたたくから。
でも、だれかのおもちゃをとったり、すべりだいのじゅんばんをまもらなかったりするおともだちしかたたかないんだ。でもやっぱりたたくのはよくない。せんせいだって、そういってる。
「なあ、だれかがいじめたのか?」
ぼくがだまっていたら、ゆうきくんがまたそういった。
ちょっとやさしい、いいかただった。
ぼくはなんでないてるか、おしえてもいいとおもった。
「あのいすは、ねこさんのものなんだ。ずっとあそこでねてるのに、みんなが、かばんとかおいて、かわいそうなんだ」
「ねこなんて、いないじゃん」
「いるんだ、ぼくにはみえるんだもの」
ゆうきくんは、ちょっとへんなかおをした。
やっぱり、いわなきゃよかった。
「わかった」
あれっ? とおもったら、ゆうきくんはいすにはしっていって、うえにあったかばんを、ぜんぶしたに、おとしてしまった。
「こらぁ、優樹君! 何やってるの? いけないでしょう、お友達の鞄をそんなふうに投げちゃ!」
せんせいがすぐにはしってきた。ゆうきくんが、せんせいのことを こわいめでみてるから、ぼくはすごくどきどきした。
「ここは、ねこのばしょなんだ」
「猫なんかいないわよ?」
「いまはいないけど、もどってくるんだ」
せんせいは、こまったかおをしている。
「そう、じゃあ猫さんの場所を少し空けておいてあげましょうね」
それからゆうきくんとふたりでかばんをひろって、いすのすみにかさねておいてくれた。
「投げたらだめよ?」
せんせいがいっちゃうと、ゆうきくんがぼくのほうをみた。
ぼくはまた、こわくなってにげだしたくなった。だけど、ゆうきくんはぼくにむかってにっこりわらったんだ。
ぼくはとても、うれしくなった。
ようちえんにかえってきて、かえりのじかんまで、みんなでサンタさんに、てがみをかいた。
「遼くんは、なんて書いたの?」
せんせいにきかれたけど、ぼくはおしえなかった。