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ノブナガ奇伝  作者: 天野眞亜
雌伏編(天文13年~)
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4. そういうお年頃

 オッス! 俺、ノブナガ。

 二度も頭に衝撃を受けたっていうのに、前世の俺が消えてくれないために信長ミッション続行中だ。犬千代と並んで傾奇者として名を馳せるはずなのに、どうしてこうなった。

「やっぱり尻か」

「ふむ。吉法師様は尻派、っと……」

「この馬鹿犬、何をメモしてんだよ。どこに書き付けてんだよ!」

「ちなみにおれは乳派でぶへ」

 犬千代のドヤ顔がムカついたので拳を叩き込んでおいた。

 ロリコン侍のくせに、おっぱい星人とか詐称にも程があるだろう。それとも未来性を見抜く才でもあるのか。あるいは大きく育てる自信が――。

 けしからん。実にけしからん。

 だが大きい、ってことはいいことだ。素晴らしいことだ。我が妹・お市は発展途上であるらしく、期待が持てるそうだ…………って今、何言った。ええ、もう一度言ってみろ。今度そんないやらしい目でお市を見たら、その目抉るからな。

「! …………!!」

 ガクガクと頷くだけの人形になった馬鹿犬を解放する。

 そういや、俺には兄弟がいるんだった。

 前世では一人っ子だったし、兄弟は大事にしたいよなあ。

 可愛い妹は一度未亡人になった後に、再婚するも秀吉に城を攻められて鬼柴田と運命を共にする。真面目な弟は跡目争いで負け、自刃して果てる。

 なんてことだ。俺を含めて、三人とも天寿を全うしていない。

「歴史改変」

 ぼそりと呟いただけで、冷や汗がつうっと流れた。

 先に発生するだろう弟の問題は何とかできる、かもしれない。

 要は跡目争いを阻止すればいいのだ。お市は生まれたばかりだから、結婚なんて当分先。待てよ? どこぞの息子は5歳の嫁をもらったんだったな。あ、俺の娘か。生まれたら一度ボコっておこう。これも舅の務めだ。

「いや、待てよ?」

 一抹の不安が生まれる。

 歴史は大河に例えられるように、大きな時間の流れだ。小石を投下した程度じゃ、流れの向きは変わらない。信行の死は、歴史を大きく変えるものだろうか。

 過去が変われば、未来も変わる。

 織田信長の魂が俺である時点で、もう本来の歴史は変わったも同然だ。それなら信行の死だって避けられるかもしれない。跡目争いをしなくても、俺が家督を継げばいいのだ。織田信長が本家を凌ぐ力を得て、上洛する。

 天下統一ちょっと前まで進むまでを辿れば、歴史は変わったことにならない。

 その後は秀吉に任せて、最終的に家康が幕府を開けばいい。

 ヤバい、俺閃いちゃったぞ。

 本能寺で死体が見つからなかったんだから、俺の死亡はそこで確定していない。こっそり抜け出した後は「織田信長は死にました」と宣伝すればいいのだ。

 この地味顔なら、少しの変装でいける。

 49歳で死んでなるものか。

 前世同様に、天寿を全うしてやる。前世以上に、今を満喫してやる。

「おーい、吉法師様」

 まずは信行をなんとかしよう。

 おっと、まだ元服していないから勘十郎だ。兄より先に改名するわけないもんな。その辺りは通例もあることだし、親父殿も理解しているはずだ。

「おーい、きっぽーしさまー」

「誰だ、俺の名を間延びして呼ぶうつけは」

「ひいっ」

 小さな悲鳴を上げて、猿が転がった。

 それだけで終わらずに頭を抱えて、ぶるぶる震えている。小姓にしては着ている物がみすぼらしく、馬廻りの役にこんな面構えの若者がいたなと思い出す。

「だから言っただろ。考え事をしてる吉法師様に声掛けんなって」

「わ、わしゃあ、そんなつもりはなくっ」

「なくても、そうなんだよ。ですよね、吉法師様いだっ」

 ムカついたので殴っておいた。

 犬のくせに、偉そうに講釈を垂れるとはいい身分だ。いや、本当に身分だけのことなら猿よりも犬の方が上だ。今はまだ、という注釈がつくとはいえ――。

「何用だ」

「へ、へえっ、申し訳ございませんっ」

「猿。二度は言わぬぞ」

「はっはい、わしは乳も尻も大好きですと言いとうて」

「……は?」

「きっぽー…………わっ、若様ほどの方でしたら、さぞ美しい嫁をもらうんでございましょう。いやあ羨ましい。わしも今、なんとか頷いてもらおうと必死で」

「てめえの惚気なんざ、どーでもいいっつの」

 何か思うところがあるのか、ムスッとしている犬千代。

 いずれ恐妻にして良妻賢母のおまつを迎えるはずだが、今はその気配すらないようだ。強い嫁という意味では、猿の嫁になる女もなかなかで――。

「く、くくっ」

 犬の嫁、猿の女か。

 本人たちには決して言えないフレーズだが、妙にツボに入った。これに俺の嫁である蝮の娘が加われば、とんだ魑魅魍魎である。なるほど、確かにどんな男も怖くなかろう。

 せいぜい尻に敷かれろと呪っておく。

 その呪いが遠くない未来、ブーメランで返ってくることを俺は知らない。


たまーにこんな感じの、しょーもない雑談が混ざります。

主人公:特になし。あえていうなら、ふともも派(意外に一途)

犬千代:おっぱい星人(育てる系)

日吉:むっちり美女好き(浮気性)


この時代だったか忘れましたが、「ちちしりふともも」がむっちりしているのが美女とかいう説があったそうです。顔の美醜は二の次。

中世は面長のうりざね顔が美形とされていたので、公家衆はそういう顔立ちが多いということになります。あと色白はステータス。白ければ白いほどいいとかで、白粉塗りまくって厚化粧していたとか(濡れたら大惨事)

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