パーティ断絶の剣2
-1-
「そう言えばなんでクーが来てるんだ?こう言うのはリーダー……ディッフェ辺りのが良いんじゃ無いのか?」
「うぅ、本来はフエンテさんが来るはずだったんですが、シンティラさんとフエンテさんがディッフェさんにチョッカイ掛けて珍しく怒ったりディッフェさんが二人を縛り上げて絶賛お説教中なのです。それで、私が代理で来る事になりました」
それはパーティとして大丈夫なのか?という言葉を言いかけて飲み込む。やはり見た目15歳くらいの少女に不安を増長させるような事を言うのは何となく躊躇われた為である。
「ディッフェも大変だな……。そう言えば、個人の実力ってどんなもんなの?」
「個人ランクですか?確かシンティラとフエンテさんはBランクでディッフェさんはAランクでその中でもかなりの実力者らしいですよ。私はまだCランク何ですけどね……」
パーティの話をするクーは目を輝かせ楽しそうに、まるで自分のおもちゃを友達に自慢するように話す。
成る程。彼女は断絶の剣が大好きなのだろう。話している姿を見て自然と笑みがこぼれる。
「ふふっ、クーは断絶の剣が好きなんだな」
「はい!いつもはあんなのですけど、いざという時は皆さん凄いんですよ!?フエンテさんはああ見えてパーティ1頭が良くて、ダンジョンとかで罠を見つけたり解除したりするんです!シンティラさんの魔法はバチバチ〜って雷魔法で魔物に囲まれた時も助けてくれるんです。ディッフェさんもいつもはあんなに頼りないけど……本気になったディッフェさんはとんでもないんです!私達が毒で動けない時も一人で数十もの魔物の群れを一人で薙ぎ払って、三人を担いで病院まで走ってくれたんです」
三人の話をするクーの姿は身振り手振りでその凄さを話し、足取りも軽やかである。その話し方は差し詰め恋する乙女と言ったところであろう。
「お、おうそうか、まぁ話を聞く限り良いとこなんだろうな」
「それはもう!あっ見えてきました!あの宿です」
「ん?あぁあの宿か」
クーが指差した先には宿屋羽休めと書かれた木製の看板と大きめの宿屋であった。クーは宿の自分たちの取った部屋までユウを案内する。
「皆さん!ユウさんを連れてきました」
「おう、悪かったなクー本来こいつが行くはずだったのに……」
部屋に入ってまず目に入ったのは、両手を拘束されたシンティラとフエンテだった。
「ディッフェは冗談が通じないのよ。あれくらいジョークでしょ?」
「全くや、あれくらいワイらのお茶目やで?
それくらい目ぇ瞑ってぇな」
「お前ら……まだ反省してねぇようだな。はぁ、まぁ今はいい。取り敢えずユウと話を詰めておこう」
両手を拘束されて尚反省せず文句を言っている二人を諦めたようにため息を吐くディッフェ。
「あーせやな、今回は依頼を受けてくれたっちゅう事でえぇんやな?」
「ああ、ぶっちゃけ報酬が破格だからな。金に目が眩んだ」
「なんちゅうか正直やな、少しは誤魔化さんの?」
「仮とはいえパーティーみたいなもんだろ?下手な気遣いは無駄だろ?資金が心許ないのも事実だし」
ユウのぶっちゃけに苦笑いするフエンテだが、コホンと咳払いをしてから詳しい話を始めた。
-2-
「ーーこんなもんやろ」
「そうだな、俺としては特に文句も無いぞ?」
「ほな正式に一ヶ月間よろしくな」
小一時間ほど話をして細かいとこを詰めたとこで、本日は御開きとなる。パーティーとして受ける依頼はメンバー全員で考え、最終的にディッフェが決定するとの事なので明日の昼頃にギルドに集まる事になった。
「じゃ、また明日ギルドで」
「おう、ってか今から暇か?だったら少し二人で話したいんだがいいか?」
話し合いも終わり自分の宿に帰ろうとした時ディッフェに声を掛けられる。
「特に用は無いが、ここじゃダメなのか?」
「あぁ出来れば二人で話したい」
だめか?と聞いてくるディッフェだが、ユウとしても特に用もなくしばらく共に過ごす仲間とのコミュニケーションは大事だろうと思っている。
「いや、構わ無い」
「なら、ギルドの酒場にでも行こうか」
と言うわけで、二人は宿を出てギルド酒場へと向かうことにする。
「この前は悪かったな」
「え?」
ギルドに向かう途中に突然の言葉にユウは聞き返してしまう。
「初めて会った時だよ。あんな言い方してすまなかったよ」
「あーあれはシンティラとフエンテのお茶目だろ?俺には実害は無いし、謝ることは無いだろ」
「お前はアレをお茶目と言うか……胃が痛くなりそうだ」
ディッフェら大袈裟にお腹を抱え腹が痛いとアピールする。
「まぁ、ターゲットがディッフェである限り俺としては面白がる側の人間だな」
くつくつと笑うユウに「他人事みたいに言いやがって」どボヤくディッフェ。
そんな話をしているうちにギルド酒場に到着し、適当な飲み物と軽食を頼み話を続ける。
まだ、日が高いというのに辺りにはアルコールの匂いがしており、ディッフェもエールを頼んでいた。
「でなぁあいつらは何時も俺をからかって遊びやがるんだ……」
ユウは酒の入ったディッフェの愚痴を延々聞き続ける羽目になり、解放されのは5時間も後のことで、フエンテが迎えに来た時のことだった。
フエンテ曰く
「実践時は頼もしいんやけど、いつもはこうやからからかって遊んどんねん。実践時はホンマ頼もしいんやけどな」
そう語るフエンテの顔はやはり自慢する子供の様で、クー同様フエンテもこのパーティーが好きなのだと感じた。