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第八十四話 裏軍議

多久攻めの勲功第一は前田伊予。

随分前から深々淡々と進めて来たのが、遂に今回実を結んだ形だ。

これなら白石の方も期待できそうだ。


次点で直接の切欠を作り、本戦でも大いに活躍した円城寺吉蔵とした。


* * *


多久藤兵衛を滅ぼした後、しばらくは特に喧伝しなかった。

次を考えてからと思ったからな。


しかし、機を見るに敏な周辺の小領主たちはこぞって挨拶に訪れた。

若干面倒な気もするが、これも大将として大事な務め。

笑顔で応対していく。


応対しながら思うのは、これでまた一つ仇を潰せたと言うこと。

過去よりも未来を志向すべきとは思うが、中々どうにも。

まあ、今後の動きが円滑に行えるであろう喜びもあるから良しとしよう。


後始末に区切りが付いたところで、多久藤兵衛の不義とこちらの戦果を大いに喧伝した。

効果は大きく、音成ら小領主や相浦に白石、さらには後藤からも祝辞が届いたのは驚いた。

存外、目があるのか?

ついつい期待してしまいそうだ。



さて、多久を落としたら次はどうすべきか。


このまま平井を始末するも良い。

後藤に接近し、盟約を結ぶも良し。

北に進んで松浦郡か、南に進んで藤津郡か。

なお西に進み、外洋を求めると言う手もある。


個人的には平井を潰してしまいたい。

何せ、旧少弐勢力の中心の一端だ。

新五郎兄貴の仇でもある。


しかし、平井は強い。

悩ましいな。


まあ、まずは重臣たちによくはかることだろう。

何が先決で、最も重要かを確定させねばならない。


「皆を呼べ。軍議を行う!」


* * *


今回の出征に従軍したのは、同盟者の千葉介殿と杵島郡司に任じている高木能登。

主な重臣は一族から越前守、杵島郡代の前田伊予、俺の側近である石井尾張と鴨打陸奥など。

そして勝屋隼人、秀島雅楽、原左馬助などの武勇に優れる猛者たち。

所領復興を願い従軍する馬場肥前と藤崎筑前、彼らとの中間役を任じた犬塚伯耆も一軍を率いて参戦している。


そして円城寺吉蔵を始めとした千葉介殿の家中の者たちと、鍋島飛騨や鍋島右京、成松刑部と言った若手たち。

東肥前一帯を抑える者たちを除いた全力から、もうちょっと余力を残した状態での出征とした。


今回の軍議では、上記から身の軽い者を除き一部の者たちを加えている。


一部の者たちとは、高来郡の調査に向かわせている福島民部からの使者と、彼杵郡から戻って来た秀島主計だ。

情報交換に必須な者たちだな。

ちなみに彼杵郡には、一時的に弟の秀島図書が代わりに赴いている。



さて、次をと考えてはいるのだが、このまま次の戦に進む訳じゃない。

どこかへ一歩踏み出した後は一旦引揚げ、更なる準備をすることになる。


まずはその一歩踏み出す先を考えねばならない。

大体の場合、そこが次の出征先になるからな。

牽制にもなるし、策の一環ともなる。


そうした訳での軍議だ。



「平井めをどうするか、これに拠るでしょうな。」


「左様。先に潰すか、押し込んで締め上げるか。或いは取込むか。」


「笑止な。平井を取込むなど、有り得ませんぞ!」


「まあ落ち着け。何も、平井武蔵守めと結ぶとは言っておらぬ。」


「むむ?……なるほど、当主の挿げ替えですか。」


「うむ。それも一つの方策、ということじゃな。」


皆が言う通り、どこに進むにしても平井への対応を決めないと行けない。

勿論、とりあえず平井武蔵を潰すように動くことも含めて。


* * *


うんぬんかんぬんと軍議を進めた結果、一つの結論に至る。


「それでは総括します。」


司会進行は一族で重臣の越前守。

在りし日の越前守は結構軽い感じだったものだが、今やすっかり一族の重鎮。

頼もしい半面、少し可笑しさも感じてしまう。


まあ、表には出さないがな。


「軍を分け、まず一隊は藤津郡へと向かいます。

 目的は国人衆たちへの挨拶と面通し。

 無論、示威行為も兼ねますな。

 これが本隊です。

 また別の一隊は別働隊として、平井武蔵守を牽制するに留めます。

 即ち、次の目標は杵島郡の平井及び藤津郡となります。」


越前守のまとめに皆も頷いて承知を示している。

それを確認し、俺に向き直る。


「では殿。」


一つ頷き、方針を決する。


「多久の次は平井だ。各々、励むように!」


「「「ははぁーっっ」」」


一同の賛意を得て、行動を開始する。



…が、その前に。


* * *


主だった者を誘い、第二会議を開催。


参加者は、千葉介殿と越前守、高木能登に前田伊予。

あと石井尾張と鴨打陸奥、鍋島右京と飛騨、そして秀島主計。


正しく股肱の重臣と呼べる者たちだけを集めた。

鍋島の二人と秀島主計はまだ少し軽いが、まあ良い。


先ほどの軍議で決したことは嘘じゃない。

が、全てでもない。

その確認を行うための会議だ。

言わば裏軍議。


どういうことかと言うと、敵を騙すにはまず味方から。

そんなニュアンスを含んだ行動だよ。


それなりに所帯も大きくなり、動きの予定は大まかに各所へ発する。

基本的に味方と考えている所へ送るのだが、中には両天秤で敵方へ繋がってる者もいるだろう。

よって、流れても良い情報と流したくない情報を分けるのだ。


今回は特に、平井武蔵と言う敵性の強い奴が相手になるからな。

更に馬場肥前は、今は味方となっているが全く油断ならない。

慎重を期するに越したことはないのだ。


そして、確認するのは次の方針。


藤津郡と平井に向ける行動に変化はない。

しかし、他にも色んな工作が各所で進んでいることを発表していない。

いずれは発表するが、まだ早いのだ。

その確認と摺合せがメインとなる。


それと、杵島郡の残りや松浦郡への行動についてもだな。

実は、同時に動かして行く予定にしている。


その辺りの詰めを確認したのだった。



裏と言う程の裏ではありませんでした。

最近はサクサク動かすものが多かった為、やや鈍重に感じます。

これはこれで楽しいのですが。

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