第七十三話 論功行賞 大配分
さて、弟たちの配置は済んだ。
その周囲の者たちについても別途指示することにして、次だ。
なんせ先は長い。
詳細は省き、実務者レベルでの調整は別途行われることとなっている。
そんな訳で、残りの一門と大身の者たちについてである。
* * *
「高木能登守殿。同じく肥前守殿。綾部備前守殿。御前へ。」
「「「ははっ」」」
高木兄弟は当初からの協力者。
綾部備前は途中で小田駿河らが引き込み、馬場らの抑えに活躍してくれた。
「高木肥前守殿を三根郡司に任命する。また、綾部備前守には同郡代を任せる。」
「御意。」
「あ、ありがたき幸せっ!」
高木肥前を郡司にするのはともかく、郡代を綾部備前とすることには異論が出された。
過去直接に龍造寺と矛を交えた訳ではないが、何せ外様である。
しかし、今後のことを考えて抜擢することにした。
成功体験が実際に眼前にあれば、皆奮起することだろう。
そんな含みもあったりする。
「また、高木肥前守殿の与力に横岳下野守を。綾部備前守の与力に隠岐守を付ける。頼むぞ。」
「「承知!」」
三根郡に力を持つ横岳下野を与力とし、更に一門で実績のある隠岐守を付けてバランスを取った。
横岳氏は少弐一門でも序列が高く、しかも横岳讃岐が宗家で横岳下野は傍流であった。
しかし、俺たちが大事にするのは龍造寺に従った横岳下野の方だけだ。
横岳讃岐は説得に応じて降伏した為、取り潰しはない。
だが、それだけだ。
拾った命を今後、いかに有効活用するか、それで全てが変わってくるだろう。
まあ、同じことは他の家にも言える訳だが。
「そして高木能登守殿。貴殿は今後のことを見据え、杵島郡司に任じたい。」
「はは。委細承知しております。」
杵島郡の勢力圏は、実質前田伊予の佐留志付近のみだ。
それでも今後、前田伊予と協力して侵攻することは確定している。
平井や多久など、仇敵の一端が健在なのだから。
そう言うわけで、恩賞としては暫定的でどうかと思ったが、高木能登を杵島郡司に任じた。
当然与力は前田伊予で。
これだけでは流石に不足に過ぎるので、金子や近隣の田畑などを進呈した。
また、この時改めて高木兄弟が龍造寺の旗下となることが確認された。
* * *
「それでは龍造寺日向守殿、同名備後守殿。同じく七兵衛殿。御前へ。」
「「「はは!」」」
一門の括りで日向守と備後守、そして七兵衛を呼ぶ。
「日向守。そなたには基肄郡の郡司を任せる。
また朝日近江の嫡子を養育したい申し出も許す。養子とするが良い。」
「ははぁっ。ありがたき幸せに存じ上げまする!」
日向守は養父郡にて、朝日近江を討ち取ると言う武功を挙げた。
その際、その幼い嫡子の行く末を託されたとのこと。
「なお、日向守の与力として安住安芸を付ける。よいな。」
「承って候。」
基肄郡は筑前に近く、龍造寺領としての実効支配は難しい。
そこで、次に用意した策を用いる。
「次に備後守。そなたを養父郡代に。そして、七兵衛を基肄郡代に任ずる。」
「「御意!!」」
「また、七兵衛には新たに壱岐守を任じ、一字を与える。以後、壱岐守信清と名乗れ。」
「ははっ!ありがたき幸せ。精進を重ねますっ!」
「うむ。」
七兵衛改め壱岐守には、雅楽頭様の跡を継いで貰わねばならない。
そこで、筑前との国境である基肄郡代として研鑽を積んで欲しいとの願いを込めた。
また、養父郡は基肄郡に隣接している。
安房守らとも連携して素早く事に当たれるよう、手配りしたつもりだ。
「筑紫下野守。そして筑紫長門守!」
「っ!?。は、ははっ!」
地理的な要因で以って、筑紫兄弟を呼ぶ。
「そなたらを郡代与力に命ず。下野が養父郡、長門が基肄郡だ。よいな?」
「ははぁ!承知仕りましたっ!」
筑紫とは過去、共同で少弐と戦ったという実績がある。
そういう意味で割と信用出来る。
それに肥前の養父郡、基肄郡から筑前にかけて勢力を持っているからな。
上手く使えば統治も問題なく行くことだろう。
* * *
これで大配分は概ね完了した。
まとめると、次のようになる。
基肄郡
郡司:日向守
郡代:壱岐守
養父郡
郡司:安房守
郡代:備後守
三根郡
郡司:高木肥前
郡代:綾部備前
神埼郡
郡司:小田駿河
郡代:六郎二郎
佐賀郡
郡司:山城守(俺)、肥前龍造寺当主
郡代:摂津守、水ヶ江龍造寺当主
小城郡
郡司:千葉介殿
郡司:徳島土佐
杵島郡
郡司:高木能登
なお、神埼郡・佐賀郡・小城郡の山内地方は神代大和の領地となるためこれに含まない。
また、小田駿河と千葉介殿は同盟者として俺と同格だ。
両名も旗下に降ろうと言ってくれたが、時期尚早として押し留めた。
一門でも越前守や播磨守、伊賀守らは大身だが、それぞれ本家の実務担当としてある。
郡司、郡代に任命したのは若手や武勇のやり手を選任している。
その辺りの匙加減が、結構難しいのだった。
考えるのは楽しい。
まとめ書き起こすのは大変。
これが真理。




