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第六十七話 少弐滅亡 前

北西方面から勢福寺城に向かってきた神代勢は、勝屋隼人らの誘導により猿岳に布陣。

そのまま三方を固め、動くことが出来ない様に処した。


その上で、四方から囲む友軍の諸将に通達。


”攻めよ”と。


北や東は上手く見通せないが、西や南の状況と左程違いはないだろう。

江上らの守る出城が、食い破られる様子が遠望出来る。


敵方の兵は算を乱して逃げ惑い、或いは出城や本城に退き、或いは友軍に降服した。

囲みを抜けて逃亡しようとした者は、漏れなく捕えられるか討ち取られた。


江上勢は這う這うの体で彼らの守る出城に引き籠ろうとするも果たせず、遂に降服を申し出た。

これを許し、木下伊予と大田美濃の手勢に保護させた。


東側からは、宗左馬助と光益新三郎の手勢を打ち破ったとの報告が来ている。


まずは、これで良し。

あとは少弐屋形本人と、大手の将である河津紀伊ほか、窪や島・牧などの小勢のみ。

包囲網を縮めて打ち掛かるべし。


* * *


猿岳にある神代勢が動くかと警戒したが、動く気配はない。

江上が押し込まれたときに動きが少しあったようだが、阻まれて抑え込まれたようだ。


やはり主力は江上伊豆の手勢で間違いなかったな。

有力な少弐方の将である、馬場や藤崎が綾部城に居ることも要因の一つか。


出城を破った龍造寺軍は、勢福寺城に籠る少弐屋形を四方から攻めた。


戦いは熾烈を極めるかと思われたが、最大勢力の江上が降伏した為か全体的に低調だった。

少弐屋形は武威を張ろうとするも、一向に士気は上がらなかったようだ。


更に、福地長門が小勢を率いて水路より攻め入り火を放ったことで城内は混乱。

その隙に鍋島孫四郎や水町左京らが乱入し、大手門の守り手であった河津紀伊を討ち取った。


これで趨勢は決まった。


さて、本丸に居るであろう少弐屋形はどうするかな?

仕舞いと諦めるか、はたまた……。


* * *


「自刃、か」


「はい。介錯は牧左京亮が為したと」


ふむ。

また逃げ出すかと思ったものだが。

流石に囲まれた揚句、頼みの江上が降ったことに意気消沈したか。


「牧左京亮が言うには、降伏を、という周囲の言もあったようですが」


「許される目はないと踏んだか」


実際、許す気はなかった。

眼前に据え置いて少し糺したかった気もするが、今更詮無いことか。


「御意。して、城中の処分は……」


「少弐屋形の首に免じて許す。そう伝えよ」


「承知!」


これで区切りなのだが、何かあっけないものだな。

江上伊豆を抑えたら終わりだと、最初から見通してはいたのだが。


「御注進!」


「どうした?」


「猿岳に在った神代勢、退去して行きます!」


「そうか。皆には手出し無用と伝えよ」


「はっ」


「但し!見張りを付けて間違いなく山内に帰るか、確と見届けさせよ!」


「御意!」


ふう。

これでこの辺りの仕儀はひとまず終わりかな。


おっと、少弐の弟がまだいたな。

あちらも一緒に片付けてしまおう。


「小田殿と福地長門を残し、我らは綾部城へ向かう」


「馬場と藤崎らが少弐の舎弟めを担いでおりますな」


「ああ。大人しく降ればそれも良し。歯向うならば……」


「……承知しました。皆に触れを出せ!」


「「ははっ!」」


福地長門は城内乱闘で矢傷を負った。

大した怪我ではなさそうだが、大事を取って当地の指揮を任せよう。


「おっと、ついでだ。新次郎に周囲を平らげるよう申せ」


「御意にございます」


「それと安住石見守。お主は出雲と姉川を連れて川副へ行け」


「ははっ」


新次郎は三根郡に布陣しており、横岳らもまだ健在だ。

それも少弐が滅したとなれば、すぐ終わるだろう。


安住石見らを川副に派遣するのは、少弐の末弟が居るからだ。

旧少弐家臣らに迎えさせて、保護させる。


あくまでも保護だ。

今の段階では、だが。

事と次第によっては、数奇な運命を歩むこととなるだろう。


* * *


綾部城は、勢福寺山城と同じく神埼郡にあり、やや北側に位置する。

そのため山内一帯に属する三瀬に近いが、神代勢はここには向かわず大人しく退いた模様。


ならば神代の事は後回しだ。


目の前には、少弐屋形の弟である彦三郎が城主となっている城がある。

馬場肥前や藤崎筑前らも共に籠り拠っているのだが、どう出て来るかな。


「使いは出したか?」


「はい。しかし、本当にあれで宜しいので?」


「構わない」


使いの内容は降伏勧告。

あれとは条件のことだ。


条件を簡単に言えば、命は助けてやるから大人しく降伏しろと言うもの。


鎌倉の御代から、三百年以上続く名家である少弐。

当然ながら、その名を惜しんだなどと言う訳ではない。

むしろ、今にも滅ぼさんとしている。


併せて、少弐屋形が自刃して果てたことも伝えさえる。


その上で、武門の意地を示して最期の華を咲かせるも良し。

名を惜しんで兄に殉ずるも良し。

命脈を繋ぐ道を選ぶも良し、だ。


例え城を枕に全滅したとしても、まだあと一人末弟がいるからな。


そのことも伝えている。


まあ、単純な揺さぶりだ。

戦になると色々面倒だからな。

避けられるならば、避けるに越したことはない。


果たして、どうか。




長くなったので分割します。

台風の被害は幸いにも軽微でした。

場所によっては未だに……。

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