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第六十六話 投入

山内地方動くの第一報から後、続報が次々に入って来る。


まあ、神代の本拠地である三瀬城も神埼郡にあるので割と近い。

だから情報の入手も素早く行われると言う訳だ。


それよりも、その動きについての詳細だが。


どうやら神代大和本人が動いたと言うことはないようだ。

もっとも、それだけで安心できるものではない。


山内一帯は神代大和が上手く纏め上げ、統治している。

神代大和の是認なくして動きがあるはずはない。


ならば、密かに指示か、或いは黙認程度は有る筈。


その推測だけでもガッカリする。


已む無し。


そういう時代だと無理矢理納得させ、気持ちをリセットしよう。


* * *


要は、少弐屋形を守る江上からの救援依頼が神代の下に舞い込んだということだ。

そして、神代大和本人は龍造寺との不可侵の約定がある為、動くことが出来ない。


しかしながら、従来の交誼を鑑みるに、江上からの頼みを切り捨てるのは忍びない。

よって、一族か重臣に含みおいて出兵を黙認したという感じだろう。


そうすると、出兵するであろう人数はたかが知れている。

城に入ることもあるまい。


ふむ。


今後の事も考えて、穏便にお帰り頂くとしよう。


「使い番!」


「はっ!」


「石井三河に伝令!

 西方の猿岳への登り口を空けよ。

 そして小河の兵を裾に潜ませ、山内の兵が入ったら旗を上げさせよ。」


「御意!」


猿岳は江上の陣などからもよく見える。

神代の兵が入ったとなれば、彼らも安心出来るだろう。


その上で、遊軍から兵を割いて奴らを留め置く。

無理して攻め降りて来るようなら迎撃させるが、恐らくそうはならないだろう。


街道沿いの警備も広域に展開させるか。

罷り間違っても、鍋島孫四郎や木下伊予らの邪魔立てはさせない。


神代勢を押し留め、援軍の用を為さなければ、まあ心も折れやすくなるだろ。

あとは誰が神代勢を率いてくるかだが。

一族であれば少し面倒だな。

と、なると……。


「隼人はいるか?」


「ここに。」


「一隊を率いて神代勢に対する物見を致せ。

 奴らの進路は猿岳以外は許すな!

 また、神代の将を確認したら連絡するように。」


「承知!」


勝屋隼人を物見、というか遊撃部隊に指名する。

小身だが、目端が利くし小勢を指揮するのが上手い。


子息の勝屋采女は、もっとガッツリ戦う方が得意の様だ。

馬渡越後や戸田藤次郎らと仲が良い。


脳筋にならぬよう、気を配ってやらねば……。


* * *


「御注進!」


「どうした!」


「はっ。山内から神代の軍勢が出立!

 率いる将は神代対馬と思われます!」


「そうか。御苦労!」


「ははっ」


「申し上げます!」


「なんじゃ!」


「木下伊予守様の御家中、江上が舎弟左近将監を生け捕ったとのこと!」


「でかした!

 石見が陣中に拘留せよ。但し、丁重にな。」


「承知!」


「横尾出羽守殿。城中に攻め入ったとのこと!」


「よし。大田美濃に後詰を依頼せよ。」


「御意!」


陣中が慌ただしくなってきた。

そして、神代を率いるのは神代大和の弟・対馬と言うことが判った。


一族を出してきたか。

しかも弟。


まあ、江上に対する義理は十分に果たせるだろう。

しかし、こちらに対する不義理はどう対応するつもりだろうか。


一族が勝手に、とかがよくある切り抜け方だが。

神代大和ともあろう者が、そのような微妙な行動をとるものかな。


いずれにしろ、その一手を猿岳に留め置く方針は変わらない。

むしろ、絶対に留め置かねばならなくなった。


江上を降し、少弐を滅ぼした後に大人しく帰って頂きたい。

いや、江上を降した時点で帰って欲しいな。


動かないようなら交渉も必要か。

ま、その時はその時だ。


神代への手当てはしたし、江上左近も捕えた上に横尾出羽らが城中に攻め入った。

もう江上が落ちるのは時間の問題だろう。


少弐の守護をする者で、最も堅いのは江上伊豆で間違いない。


もうすぐ。

もうすぐそこだ!


おっと。

心を落ち着かせろ。


昂りすぎると焦りに繋がる。


うん。

だけど。


陣中が熱気と勢いに俄然盛り上がる。

これは、仕方が無いよな。


「全軍に通知!」


間を見計らって声を張り上げる。

皆が俺を注視している。


「今が攻め時である。

 四方の待機兵力を投入せよ!」




台風がヤバいです。

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