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第四十一話 謀反

少弐勢、肥前へ乱入。


この知らせが入ってきたのは、諸々の手配を終えた頃だった。

ギリギリセーフと言ったところか。


少弐屋形は三根郡の横岳讃岐の支援を受けながら、神埼郡の江上伊豆と合流した。

そしてそのまま、勢福寺城にいた大内様の城代を追い出し城主に収まった。


三根郡と神埼郡に出した軍勢は、対応が間に合わなかった。

というか、敢えてそう見せかけた。

総合指揮を任せた鍋島周防は上手くやってくれたようだ。


三根郡に行った備後守には、そのまま現地で睨みを利かせるよう指示。

神埼郡の隠岐守も同様に警戒を続けさせている。

鍋島周防率いる本体には、少弐屋形と江上伊豆が籠る勢福寺城を囲ませた。


同時期に東千葉も挙兵し、佐賀郡を伺う姿勢を示した。

これには千葉介殿たちがすぐさま対応。

横合いを突きかけ、東千葉は敢え無く居城へ逃げ戻った。


神代大和はまだ動いていないが、戦支度はしていると聞こえている。


状況は、常に流動しているようだ。


* * *


八月下旬、周防にて陶尾張守隆房が突如挙兵。

大軍に攻められた大内様は命辛々、近臣たちと共に長門へ落ち延びた。


九月初頭、肥後に大友左衛門督が軍勢を率いて侵攻。

その結果、隈本城に籠っていた菊池左京が堪え切れずに切腹して果てた。

菊池方の諸将は大友に降り、大友左衛門督による肥後平定が成る。


同、大内様は石見の吉見大蔵を頼ろうとするも果たせず、長門にて自害。

これは、長門守護代の内藤左衛門尉が陶尾張に協力したが故だった。


その後、大内様の幼い嫡子も殺害され、中国筋に覇を唱えた大内家は事実上滅亡した。


これら一連の情報は、すぐさま九州一円に広がった。

俺の元にも、肥後の様相は赤司党から届けられたが、周防の様子はそれこそ各方面から聞こえてきた。


大内様の滅亡は、この時期だったか。

それに肥後菊池の滅亡も重なるとは予想外だった。


随分と立て続けに波乱が起こるものだ。


しかし、予定は何も変わらない。

計略の面からすれば、むしろ好都合だ。


造反勢力も勢い付くことだろう。


各方面に改めて指示を送っておこう。

ついでだ。

母上と慶法師丸を村中に呼び寄せておくか。

秘密裏に籠城の準備を進めておく。


* * *


各方面から諸情報が集積されている。


「筑前では守護代様が原田弾正殿と合流し、籠城の構えです!」


「同じく筑前では宗像と秋月が陶尾張に通じたようです。

 また、大友と陶の間に密約があったのは間違いないようです。」


「豊前は城井や長野らが陶尾張と同意の模様。

 麻生がこれに協力し、守護代殿と宇佐宮も同様です。」


「筑後は変わらず、大友の旗下にて安定しております。

 少弐に追従する者はおりません。」


「肥後では菊池の後始末が進み、大友左衛門督は豊後に帰国しました。」


「豊後衆が動く気配はありません!」


「右衛門尉様は、難を避けられたとの知らせが届いております!」


「江上左馬頭が少弐屋形と共におり、江上伊豆守は城を出ているようです。」


「山内の神代に、動きは見られません!」


誤報虚報も錯綜しているだろうから、鵜呑みは危険だ。

玉石混合とはこういうことを言うのだろうか。

仕分け、大変です……。


「石見爺さん、吟味を頼む。」


「承知。」


恐らく今回が最後の会合となるだろう。

最終チェックをしておこうかね。


「筑後。領内の確認を怠らせるなよ?」


「承ってござる!」


「新次郎!母上たちは?」


「皆、集合しております。準備も滞りなく。」


「長門!筑前の様子見は滞りなく頼むぞ。」


「御意。」


「伊賀。日向らとの連絡は?」


「全て恙無く。」


「孫四郎。水ヶ江の様子は?」


「孫九郎様と越前守様を始め、関係者の皆さまは落ち着いておられます。

 ただ、久助殿はこちらに来ておりますが……。」


「ああ、そうか…。いや、仕方ないな。うん。それは良い。」


「はっ」


「左近将監!本庄のことは頼んだぞ。」


「承知しております。弟を良く使って下され。二男も連絡役に置いておきます。」


「分かった。鍋島と石井一党には大いに期待しているからな。」


「光栄です。」


「そうそう孫四郎。小城の方を頼むぞ。」


「承知。殿も、どうぞ御無事で。」


「ああ。」


納富石見、小河筑後の両執権。

そして鍋島左近と周防の親子に、孫四郎は行動を共にしない。

主な一族連中もな。


江副安芸と福地長門、そして鍋島駿河は同行することになっている。

堀江兵部は一家揃って同行する。


母上たちの世話役も兼ねている為に、結果そうなった。

凛ちゃんと新次郎の絡みで捩じ込んだとか、そんな事実は断じてない。


さて、皆どうやら覚悟完了と言えるかな?


……大丈夫のようだ。


では、始めるとするか。


* * *




「土橋加賀守。ご謀反にございます!」




* * *


まもなく村中城は、東肥前一帯の領主たちの大軍に包囲された。

その中には、水ヶ江城主・龍造寺孫九郎の旗も翻っていた。



・主な鍋島一族

鍋島左近将監清正(本庄鍋島惣領)

嫡男:鍋島周防守清虎

二男:鍋島伊豆守信定

三男:鍋島右近


鍋島駿河守清房(本庄鍋島分家)

嫡男:鍋島孫四郎房重

二男:千葉左衛門大夫胤安

三男:鍋島犬法師丸

四男:龍造寺初法師丸

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