プロローグ
「ねぇ。一緒に世界を変えてみない??」
彼女は突然そんなことを言ってきた。意味がわからない。まだこのとき小3だった俺にとってはとても理解に苦しむ発言だった。だが、俺は意味も分からずに
「うん、いいよ!!お姉ちゃんはこの世界が嫌いなの?」
と言っていた。
我ながら馬鹿すぎると思うがまぁ、小3だったから仕方がないのかもしれないな・・・
彼女は困ったような、悲しいような顔をしてた気がする。
「ううん。好きだよ、でもね。私のことを覚えててくれる人がいーっぱいいたらいいなって思うの。奏空くんは私のことずっと覚えててくるかな??」
「うん!!ぜったい、ぜーーったいお姉ちゃんのこと忘れないよ!!」
「ありがとう。奏空くんは優しいんだね。じゃーそんな奏空くんにこれあげる。」
そう言って、彼女は手をだしてきた。前に手を出して、彼女が手を開いても手には何も落ちてこなかったから、意味がわからなかったな。
俺が不思議そうに首をかしげていると渚は微笑みながら、優しい口調で言った。
「これはね。目には見えないけど、とってもとっても大きな力なの。」
俺はきょとんとしていた。まだ小3の俺には難しくてまったくわからなかった。
「お姉ちゃん。とってもとっても大きな力って何??」
窓から差し込む夕日が渚を照らし、渚は今までに見たことがないぐらい綺麗だった。さすがの俺でもドキッとしたな。
「【嘘つきの力】だよ。」
渚は、綺麗に笑いながら、優しく優しく語ってくれた。
「この力はね、もう私は使えないの。だから、奏空くんにあげるよ。きっと大人になったら使うとおもうから・・・」
確かこのときにはもう、渚は眼から美しい涙を流していた。夕日のせいであんまり顔はみれなかったけど、笑いながら泣いてた。
「私ね。明日殺されちゃうんだ・・・」
「えっ!?」
驚きのことを渚は笑いながらでも泣きながら、言った。あまりにも現実味がなくて信じることはできなかったけど、きっと渚の涙は真実を語っていたんだろうな。
「本当なんだよ。だから、死んじゃう前に奏空くんにこの力をあげたかったんだ。それだけなのに呼び止めちゃってごめんね。」
「お姉ちゃんなんで死んじゃうの?僕嫌だよ!!」
俺は渚が困るのなんておかまいなしに眼から大粒の涙を流しながら言った。
やっぱり、渚は困ったように笑いながら言った。
「これで【嘘つきの世界】を作ってね。」
夕日が渚の髪が金色に輝いていた・・・・