エピローグ
目を覚ました恵美さんは、由美さんになっていた。
正確には、由美さんの記憶と恵美さんとして生活していた記憶を両方持っている由美さんと言うべきだろうか。
事実は、五月の推測通りだった。
二人は、ふたりのロッテを真似て、入れ替わっていたのだ。
しかし、事故で恵美さんが死んでしまい。由美さんは罪の意識から、告白できず恵美さんのフリをし続けていたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「本当にそれで全部なの」
次の日、調理準備室で、私と五月から事件の顛末を聞いた料理部部長兼探偵同好会幽霊開院の大木先輩は、何か不満なようだった。
「何か、ご不満な点でも」
「本当に誰も、入れ替わっていることに気が付いていなかったのかな・・・」
「どういうことですか」
「母は一番身近にいて二人を知っているのよ。何年もいるんだから、気が付いてもおかしくない」
確かにその通りだ。私自身も不思議に思ったけど、あまり気にしていなかった。
「確かに、その通りですけど・・・なんで、お母さんが気が付いていないフリをしなきゃいけないですか」
「私にも判らないのよ」
「そう考えると、気がつかなかったという可能性が一番高いような気がするんですけど」
「茜ちゃんは、その自分の答えで納得しているの?」
「正直、していません」
「しまった」
宮下五月が突然大声を出した。
「どうしたのよ。五月」
「親権よ。由美さんの親権を持っているのは父親なんだ。本当に死んだのが恵美さんだとしたら、由美さんはお父さんのところに行って、母親は一人になってしまうでしょ」
「確かにそうだけど」
「だから、娘さんのうそを利用して、暗示をかけたんだ。登校拒否状態になっていて学校に行かないから、誰も気が付かない。家を売って引っ越したから、近所には姉妹二人を知る人物は誰も居ない」
五月の言っていることには証拠はない。
だけど、私に真実のように感じられた。