手紙の主は
■手紙の主は
次の日の放課後、私は調理室で、ホットケーキを作りながら、事件について考えていた。
問題は誰が『たすけて』と誘導したのか。野村さんはやっていないと言う。名前を出したことだけ認めて、その点だけ認めない理由が判らない。
野村さんが、嘘を言っているようには見えない。
とすると・・・消去法で考えると残るのは当然、二人。富田さんと藤原さんだ。
富田さんは、わたしたちに事件の調査を依頼した依頼者だ。推理小説だと、依頼者が犯人ということがあるけど、その場合は、大抵は探偵の信用力を利用したものだ。わたしたちに、それだけの信用力があるだろうか?
そもそも、富田さんが犯人だとしたら、何のメリットがあるんだろう。
何か隠された動機があるのだろうか。
判らない事だらけだ。
どうどう巡りで良い考えが浮かばない。
私が事件について考える一方で、背後では宮下五月がフォークとナイフを手に持ちながら、わめいていた。
「お腹減ったよ~」
五月は、椅子座りながら、テーブルにうつぶせに倒れていた。
「ひもじいよ。お腹が空いて死んじゃうよ」
ほとんど、幼稚園児の世界である。
「判ってるわよ。だからホットケーキ作っているじゃない。五月だって、一応料理部なんだから、ホットケーキぐらい自分で作ればいいじゃない」
「だって、茜ちゃんが焼いた方が美味しんだもん。しょうがないじゃない」
そう言われて、ついつい五月を甘やかしてしまう私にも問題なのだが。
「だったら、私の代わりに推理して、事件解決してよ。解決したら、いくらでもご褒美で焼いてあげるから。私には、もう何が何だか」
「なら、ご褒美に沢山焼いてよ。三段重ねで、バターと蜂蜜たっぷりがいい」
「えっ」
「もう犯人は判ったから」
「茜ちゃんにまだ話してなかったけど、昨日、借りて来た由美さんの持ち物に重大な証拠があったのよ」
「教えてよ」
「由美さんの指紋と、美紀さんの指紋が一致したの」
「一卵性双生児の双子だから、由美さんと恵美さんの指紋が同じでもおかしくないでしょ」
「茜ちゃん。推理小説なら、由美さんの指紋と、美紀さんの指紋が一致したという事実で読者の9割は犯人が判るわよ」
「すいませんね。ヘボ探偵で」
「一卵性双生児だとDNAは同じだなんだけど、指紋は違うのよ。もう、何が起きたかは明白よね。茜ちゃんのホットケーキを食べた終わったら、幽霊退治に行くことになっているから。茜ちゃんも一緒に来るでしょ」