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第4話




「・・いーち・・・にーい・・・あー・・・ワカンナイなぁコレ」




 森の奥深くの茂みだらけの空間に十体の魔物が集まっていた。彼らはそこそこ知恵のある魔物で後先考えずに突っ込んっで来るような連中じゃない。

 今、侵入者の事を話していた。


「ここまで来れただけでも面白れぇ。しかも黒の殺気が突然消えちまったぞ?まさか巨人を殺ったのか」


「あそこの巨人は手がつけられない。存在は消えてないけど、どういうことだ?」


「俺は千里眼じゃねぇんだ。分かるかよそんなこと」


「今はどうでも良い。侵入者のことのほうが興味が大きい」


 各々が言いたいことを述べる始末。ここにリーダーは存在していない。


「魔物が数十体と、よく分かんねぇのが一体だ」


「何だよそのよく分かんねぇのって」


「言葉のままさ。‘よく分かんねぇ’んだよ」


「ギャハハハ!一番面白そうじゃねーのソイツ。俺に殺らせろよ」


「いつも何度も言うが、その下品な笑い方をやめろバリ!鳥肌に加えてなんかもう・・・!!」


「落ち着けサテル。単細胞なのだから仕方無いのだ」


「え?俺のことか?ギャハハハ!単細胞って何だー?ギャハハハ!ニックネームつけられちゃった?友好的だなァギャハハハ!」


「・・・。アアァ!!!むかつくコレ!!」


「話が進まない。取り敢えずお前黙ってろ単細胞」


「しょうがないなァ友好的にニックネームで呼ばれちゃったし黙ってやるよ」


 自分が(けな)されているとも気づいていない超お気楽でおバカな魔物だ。ニカッと笑って親指を立てて黙った。


「じゃあ誰か見に行くか?そいつらの力は分かんねぇけど。人型だったら殺そうぜ?」


「えー。俺人型好きなのにー反対ー!」


「じゃあ何でお前は犬みたいな格好してんだ?レジル」


「人型のやつが可愛がるから?」


「それは『型』じゃなくてまんま『人』だよ。」


「じゃあ人でいいや。ゴホン!人が可愛がるから!」


「別に訂正しなくていいよ。つーかそんなに‘人’が好きなら街に行ったらどう?」


 尻尾をフリフリさせて結構愛嬌のある魔物。ここには人型が4体とその他が6体だ。


「俺行く!俺行く!なんか人型の予感!!」


「何だマジで街に行くのかと思った。んで人型だったら?」


「決まってんだろ?頭をなでなでしてもらうんだ!」


「お前もアホだな。ちなみに違ったら?」


「決まってんだろ?食べるんだ!」


「まずかったら?」


「吐くんだ!」


「素直でいい子」


 褒められると益々(ますます)尻尾を振って耳をたらして喜ぶ犬魔物。本質は魔物も同じようだ。


「よーしじゃあ‘取ってこい’!」


「ギャウ!・・・っ!ワンワン!」


 最初、(つた)()けたが真っ直ぐに走って行った。


「本当にいい子。じゃあしばらくワンコが帰って来るまでオセロしてようぜ」


「街に行って盗ってきたのか?クェクロー。つーか普通ここは皆で遊べるトランプだろ!」


「だってオセロが好きなんだもん」


 魔物も人間のおもちゃで遊ぶ事が判明した。結局UNOにした。















 ヘレンたちは今、道なき道を進んでいる。草を掻き分け・・・ていない。魔力の浸透したこの森に圧迫感を与えて逆に退()かせている


「なぁヘレン、気づいたか?」


「気づいたよ」


「お前平気なのか」


「は?当たり前でしょ?」


 何となく話に違和感を感じたヘレンだが、そのまま返した。


「へぇ、こーんな気持ち悪いの平気だったんだ」


 完璧にズレてるティランに振り返ると、ベチャベチャした宙を飛ぶムカデのようなややデカい生物が沢山いた。・・・瞬間顔が引つった。別に虫とかが苦手という訳ではないのだが、何匹もウジャウジャしているのは虫じゃなくても気持ち悪い。


「・・・キモイなぁ。」


 と思った時、前方から猛スピードで走って来る音が聞こえた。


「!」


 姿が見えるのと突撃されるのとが同時だった。しかし突撃してきた魔物は違う壁に激突してヘナヘナと倒れた。ヘレンが瞬時に出した魔方陣だった。・・・後先考えずに突っ込んで来る奴がいたよ・・・。


 因みに数秒前までの犬魔物ことレジルの心中・・・


「わぁ!人だ!人だ!頭なでなでしてェェエエエグヮハッ!!!!!」


 レジルも盾が出てくるとは思っていなかったのだ。彼の妄想では、そのまま突撃して倒れた人型の顔を舐めてじゃれているはずだった・・・。


「犬か。スピードは結構だがアホだ」


 ヘタレ込んでいるレジルを見下ろして言ったヘレン。更に「犬は賢いはずだけどなぁ」と言いながら通り過ぎた。しかし唸るような声が響いた。


「待てぇぇ・・・!!・・・クソ・・・メチャクチャ痛ぇじゃねぇか・・・!!」


 身をよじるようにして起き上がったレジル。牙を剥き出し睨んでいる。


「しかも・・・そのまま素通りか・・・?!せめて・・・せめて・・・!!」


 牙をむき出すレジルは一歩前に出て叫んだ。



「頭をなでなでしていけよぉお!!人は普通可愛いワンチャン見たら撫でるだろぉお?!!」



 半泣きで訴えるレジルだが、ヘレンは真顔で言った。




「可愛くはない」




 しかもそれだけ言ってまた(きびす)を返してしまった。レジルはショックのあまり動けなかった。ボソボソと独り言を呟いていた。


「『可愛い』って言われたことはそりゃぁないけどさぁ・・・『可愛くない』って言われたのは初めてだよ・・・。あぁ、どうしよう。皆の所に戻るのが怖い。ホントは皆そう思ってたのかな・・・やばいなぁ・・・人前に出るのが怖くなってきちゃった・・・どうしよう・・・」


 ・・・随分とうたれ弱い犬魔物であった。そんな様子を何となく振り返って見てみたティランがヘレンに言った。


「なぁ、俺はアレ可愛いと思ったぞ?アホで」


「ならそう伝えて来たら?『元気だしなよ。可愛いよ?アホで』って」


「・・・それなんか微妙」


 耳の良いヘレンにもしっかりとレジルの呟き、いや嘆きが聞こえていた。実際の外見は別に不細工ではない。凶暴そうな外見だから可愛いとは言えないのだ。


「いいんだよヘタレはヘタレてれば。いちいち構ってたらいつまで経ってもアヴェルダンに着かないじゃないか」


「お前動物好きだったよな?」


「アレは動物じゃなくて魔物だよ。」


「じゃぁ、殺さないのか?」


「次歯向かってきたらね」


「・・・ぬるくなったなぁ」


 昔のヘレンは、敵ならばどんな奴でも殺したものだった。


「別に。魔力の無駄遣いに気づいたまでのこと」


「そうかい」


 どんどんと離れていく2人の姿。ここでやっと正気に戻ったレジル。急いで2人を追いかける。牙は全く出しておらず、その代わりへッへッと舌が出ていた。


「おぃ、さっきの来たぞ?」


 言われて少し振り返るヘレン。しかし相手に殺意はない。


「ちょっと待ってー!」


 今度は普通のスピードで走って来た。そしてヘレンたちの前にやって来た。


「俺‘取ってこい’って言われてたんだよ!」


「誰に?」


「え、つるんでる仲間?」


「ふぅん。で、何を?」


「言われてーない!」


 ハッキリと言ったレジル。2人はその対象が自分たちであると分かっていたが、ヘレンはニコリと笑った。


「じゃぁ、これらを持っていきな」


 指したのはさっき引いたムカデ達だ。さすがにそれを(くわ)えるのには抵抗があったようでレジルも顔が引つったが、ヘレンは普通の犬にするのと同じように頭を撫でて、首周りを揺するように撫でて言った。


「よーしよーし、ほらっ、持ってけ!」


「ワン!」


 気持ち悪くても反射的に大多数のムカデ共を咥えて走って行った。命令されたら体が反応してしまうようだ。おかげでだいぶ気持ち悪さが減った。


「可愛いじゃねぇか、なぁヘレン」


「そうだね」


 ポーカーフェイスの笑顔で言うヘレンは、スタスタと歩きだしてしまった。








「・・・おぃ、何取って来てんだよお前・・・」


 かなり気色悪い光景に誰もが顔を引つらせた。犬が大量のムカデを咥えているのだ。しかもベチャベチャの・・・。


「ひへわはははひほは?(見てわからないのか?)あほははは(アホだな)」


「お前にだけは言われたくねぇよ!!心より拒否します!!」


 おえっ、と口の中のものを吐くと、ニコリと笑った。・・・一体何の笑顔なのか・・・。


「褒めて?」


「馬鹿野郎ォ!!」


 期待に満ちた笑顔だったようだ。


「おぃおぃ、誰が(けな)せって言ったよ?褒めてって言ったんだよ?」


「もう一度言う。馬鹿野郎!!」


「だーめだおっさん話分っかんねーや」


「・・・クソ犬・・・!!!」


 犬に馬鹿にされる上呆れられてしまうというこの屈辱、どうすればいいですか?!など心の中で叫んでいたおっさん。壁に、と言うより(つた)に向けて悔しさをぶつけているおっさんは放置して、残りの9人で話を進めた。


「で?どんな奴らだったの?」


 嫌に爪の長い女の姿をした魔物が言った。


「女と男の人型だったよラナス。・・・撫でてもらった♪」


「そう。強さは?」


 素晴らしくスルーされたがあまり気に留めなかった。


「男は分かんねぇけど、女は確実に強かったぞ♪」


 ゲテモノを口に入れられたも同然の扱いを受けたくせにだいぶご機嫌のようだ。


「・・・ふぅん・・・。(まさかね・・・)」


 ラナスは勘が良い魔物だが、今回ばかりは自分の勘が外れてほしいと思った。















「ねぇ、アヴェルダンってそんなに遠かったっけ?」


 もう歩くのが億劫(おっくう)になってしまって小さめの魔物を召喚してそれに乗っている。


「あぁー、あと3日位で着くんじゃん?普通に行ったら」


「3日ァ・・・?ウソもっと近かったよ」


「じゃあ2日」


 どうでもいい会話をしていた。しかしまた、今度は3体の魔物の気配を感じた。しかし出てきたにはただの野生の魔物らしい。2人を囲うように迫ってきつつ、よだれを垂らして誰もが唸ってこちらを睨んでいる。


「腹ペコだってさ」


 ティランが笑って言った。しかしヘレンはダラリとした格好で魔物に乗ったまま動こうとしない。


「久しぶりに戦ってみたら?雑魚だし余裕でしょ」


 あくびをしながら言うヘレン。


「だって俺は殺せないんだぞ?」


「瀕死にさせれば?」


 どうも今はだるいようだ。仕方なくティランが相手をすることになった。


「マジかよ。記念すべき復活からの第1回目がいきなり3体とはね」


 笑顔で愚痴をもらすが相手の出方を伺った。するといきなり3体は吠えた。全く同じテンポで・・・。


「・・・え?これって・・・」


 このとき、ヘレンは魔物に寝そべったままニヤリと笑った。

 ティランが予想したのは連携タイプの厄介な魔物だ。同じように吠えていると、徐々に地面が自分たちを囲って光り出してきた。そして次の瞬間


「!」


 光が一気にたまり、あっという間に爆発した。・・・土煙が舞う中、2人は・・・。


「・・・おー・・・さすがだぜ」


 周りを囲むように防御系の魔方陣を地にして半円の中で守られていた。


「鈍すぎるよティラン。随分と足手まといになったもんだね」


「ははっ・・・御最もで」


 言われなくてもショックを受けていたのに、ここで言ってくるのがヘレンなんだ。


「じゃあ2体やってあげるから、1体は練習としてちゃんとやんなよ?」


 言いながらひょいひょいと手を動かし、直後獣の叫びが2つ聞こえた。・・・ヘレンは更に強くなっていた。


「1体くらいやってやるよ」


 三方向に立っていた内の二方向から声が聞こえたから、最後の1体の場所は予想ができる。ティランはその方向めがけて久しぶりの魔力を解き放った。


「ぎゃう!!!」


 何だかちょっと可愛い声が聞こえたが、しとめたみたいだ。・・・しとめたのか?


「おい聞いたか?やれば出来るんだ!」


 煙が晴れたその方向を見ると、全然違うチビッこい魔物が倒れていた。それを見て目を点にしたティラン・・・。


「そのようだね」


 半笑いでヘレンは言葉を返した。最後の一体はとっくに逃げてしまっていた。

 このときティランは「真面目に修行しよう・・・」と思ったのだった。・・・なまりは恐ろしい。



 今回はギャグ要素が多くなってしまいました。ギャグ好きなんですよー♪

っ次回は真面目にやります!

ここまで読んでくださり本当にありがとうございます!!

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