循環、崩壊
王が崩れ落ちた瞬間。
静寂は、たった一呼吸。
次の瞬間――
空が割れた。
紫でも赤でもない。
色のない魔力が、雲を突き破り噴き出す。
地面が震える。
王都の石畳が浮き上がる。
遠方で、炎柱。
別方向で、氷の森が瞬時に発生。
誰も詠唱していない。
誰も覚醒していない。
それでも魔法が発動している。
制御者不在。
循環暴走。
グレイスが息を呑む。
「……違う」
セラフィナも理解する。
これは残留魔力じゃない。
世界全域から魔力が溢れ出している。
王という巨大な“重石”が消えたことで、
抑え込まれていた流動が一気に解放された。
空に巨大な紋様が浮かぶ。
世界規模の循環陣。
今まで見えなかった“本体”。
それが軋んでいる。
東の山脈が氷結。
南の海が沸騰。
西の森林が暴走成長。
遠くで都市が崩壊する光が見える。
王都だけの問題じゃない。
世界全土。
魔法そのものが飽和している。
セラフィナの黒紅が勝手に揺らめく。
グレイスの氷輪が意思なく回転する。
二人の覚醒紋章が、強制的に輝き始める。
止められない。
感情とは無関係に出力が上がる。
グレイスが歯を食いしばる。
「俺たちが……押し上げてる」
第三覚醒のその先。
二人が到達した領域が、
循環を限界突破させている。
強者が強くなるほど、
世界は耐えられなくなる構造。
王は利用していた。
だが同時に、抑えていた。
頂点に立つ存在が、
全魔力の流れを一点に集約していた。
今は――
頂点が二つ。
そして均衡なし。
空の循環陣に亀裂が走る。
パキン。
音が鳴る。
目に見えない何かが割れる。
魔力の雨が降る。
触れた建物が崩壊。
触れた地面が結晶化。
兵士たちが倒れる。
覚醒紋章が暴走。
悲鳴。
セラフィナが震える声で言う。
「これ……止まらない」
グレイスが空を見上げる。
理解する。
王を倒したのは正しかった。
だがそれは、
構造の崩壊を意味していた。
世界はもう、
三覚醒時代を支えられない。
循環陣がさらに割れる。
空全体に亀裂。
まるで巨大な器が砕ける直前。
このままなら、
数時間で世界規模の魔力崩壊。
大陸が消える。
セラフィナが小さく呟く。
「……終わらせないと」
グレイスが頷く。
もう選択は一つ。
王を倒すことが目的だった戦いは、
世界を救う決断へ変わる。
空が裂ける。
光が落ちる。
世界が悲鳴を上げる。
二人が並ぶ。
手が触れる。
次が――
本当の最終局面。




