崩壊と覚醒
雷樹巨像の拳が振り下ろされる。
回避不能。
グレイスが氷盾を最大展開。
セラフィナが黒紅を重ねる。
直撃。
世界が沈む。
氷が砕ける。
炎が散る。
衝撃波が王都中央を吹き飛ばす。
二人の身体が地面を転がる。
血。
呼吸が乱れる。
雷樹巨像が再び拳を構える。
王――
テンペスト・グラード
は冷静に見下ろす。
「届かぬ」
巨像の脚が振り下ろされる。
地面ごと圧砕。
グレイスが瓦礫に埋まる。
セラフィナが起き上がろうとするが、
巨像の蔦が絡みつく。
雷が流れる。
悲鳴。
黒紅が乱れる。
王が歩く。
「第三覚醒の先を制御したか。だが、規模が違う」
帯電圧が跳ね上がる。
空気が焼ける。
巨像が両拳を同時に叩き込む。
爆砕。
王都中央が完全に消える。
静寂。
土煙。
動かない。
王が目を細める。
「終わりだ」
――その時。
瓦礫の下。
グレイスの指が動く。
心臓が打つ。
(まだだ)
隣で、セラフィナが息をしている。
蔦に縛られながらも、
炎が消えていない。
二人の視線が合う。
遠く離れている。
だが、わかる。
もう一段、ある。
“共鳴”。
だが今までは魔力の重なりだった。
今からは違う。
グレイスが氷を内側へ沈める。
拡張しない。
凝縮。
極限圧縮。
セラフィナが炎を一点へ落とす。
燃やさない。
存在核へ集約。
二人の魔力が“外”ではなく“内”で接続する。
氷と炎が衝突しない。
融合もしない。
並立する。
均衡。
空間が歪む。
電流が一瞬、乱れる。
王が眉を動かす。
「何だ」
蔦が凍る。
だが砕けない。
内側から静かに分解される。
セラフィナが立ち上がる。
グレイスも立つ。
二人の背後に、
氷と炎の“二重紋章”が浮かぶ。
今までより小さい。
だが密度が桁違い。
魔力漏出ゼロ。
王が初めて警戒する。
「質が……変わった」
グレイスが静かに言う。
「合わせるな」
セラフィナが頷く。
「並べる」
次の瞬間。
二人が同時に踏み込む。
雷樹巨像が拳を振る。
グレイスが触れる。
拳が“停止”。
完全凍結ではない。
運動概念の凍結。
セラフィナがその一点を黒紅で貫く。
爆発しない。
削れる。
巨像の腕が崩壊。
王が巨像を再生させようとする。
だが再生速度が落ちている。
雷の循環が止まりかける。
グレイスが回転。
氷刃が巨像の脚を停止。
セラフィナが滑り込み、
核へ黒紅を叩き込む。
巨大な雷樹巨像がひび割れる。
王が叫ぶ。
雷が最大放出。
巨像が最後の一撃を放つ。
二人が同時に跳ぶ。
氷と炎が交差。
二重斬撃。
巨像の胸を斬り裂く。
静寂。
次の瞬間。
雷樹巨像が崩壊。
紫雷が霧散。
巨樹が砕け散る。
王が着地する。
鎧に大きな亀裂。
肩から血。
だが倒れていない。
王が笑う。
歓喜と怒りの混じった笑み。
「……それだ」
二人が並ぶ。
息は荒い。
だが立っている。
絶望からの覚醒。
共鳴最終段階。
雷樹巨像、破壊。
だが王は、まだ本体。
最終局面が近づく。




