静観
夜。
東の王都外縁。
ゼノは城壁の上から王都を見下ろしていた。
目的は明確。
若手二名の成長確認。
それだけ。
屋根を渡り、訓練場を視認する。
氷。
以前より鋭い。
停止干渉の範囲が広がっている。
「……伸びているな」
第二覚醒。
安定も早い。
隣で水が支える。
精度が高い。
連携も滑らか。
そして炎。
出力は抑えられている。
だが質は重い。
「第三覚醒封印状態であれか」
目を細める。
三人の呼吸は揃っている。
以前より隙が少ない。
だが――
「……一人、足りないな」
記憶を辿る。
前回の戦場。
氷と同時に覚醒した風の使い手。
軽い動き。
荒削りだが伸び代のあった若手。
あの反応がない。
魔力も感じない。
ゼノは王都内部の戦闘報告書を確認する。
侵入は容易。
警備は甘い。
報告書。
ゼノ襲撃。
上級兵多数戦死。
若手一名死亡。
第二覚醒到達者。
「……そうか」
静かな吐息。
名前までは見ない。
興味があるのは“資質”だけ。
「惜しいな」
同時期に覚醒した若手。
あれは、伸びる目をしていた。
生きていれば、面白い駒になった。
あるいは――
殺し甲斐のある敵になった。
「戦場は選ばない」
残るのは、より強い者。
それだけだ。
ゼノは再び訓練場を見る。
氷は確実に成長している。
水は安定を与えている。
炎は――
わずかに揺れている。
視線。
距離。
反応。
「感情か」
小さく笑う。
絆は力にもなる。
だが、隙にもなる。
「今は静観」
若手がもう一段階上がるまで。
あるいは、内から崩れるまで。
ゼノは夜へ溶ける。
去り際、最後に呟く。
「次に会う時、どこまで上がっている?」
風が吹く。
王都は静か。
だが確実に、
嵐は近づいている。




