3/71
炎の帰還
西の援軍は、統率も粗い雑兵部隊だった。
敗走した残党が呼び寄せた、ただの増援。
焦りだけで突っ込んでくる。
「囲め!」
怒号とともに、十数名が一斉に迫る。
俺は氷刃を生む。
小さい。
頼りない。
だが、確かにそこにある。
次の瞬間――
地面が赤く染まった。
セラフィナが一歩踏み出す。
身体に刻まれた紋様が淡く灯る。
空気が熱を帯びる。
「退きなさい」
静かな警告。
当然、止まらない。
刃が振り下ろされる。
炎が爆ぜた。
地を走る熱線。
兵たちは弾き飛ばされ、鎧が焼け、武器が溶ける。
だが彼女は殺しすぎない。
戦意だけを焼き払う。
数秒で、終わった。
炎は消え、紋様の光も落ち着く。
「……終わりよ」
息一つ乱れていない。
俺の氷刃は、まだ手に残っている。
使う必要すらなかった。
悔しさが、胸を刺す。
「弱い」
思わず零れる。
「ええ」
否定しない。
「でも、さっきより形は安定している」
評価だ。
事実だけを言う声。
俺は氷を握り潰す。
砕け散る小さな刃。
炎と並ぶためじゃない。
守られるためでもない。
「……強くなる」
それだけを口にした。
セラフィナは一瞬だけこちらを見る。
何も言わない。
ただ、わずかに頷いた。
そして背を向ける。
「行きましょう。王都はもうすぐよ」
炎の国へ。
俺が強くなる場所へ。




