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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第4章

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第65話 地下へ続く階段、封印の扉

 リュークたちは静まり返った遺跡の奥を慎重に進んでいた。


 松明の炎が**パチ…パチ…**と小さく音を立て、壁の古代文字を照らし出す。その揺らめきは、仲間たちの影を不気味に長く引き伸ばしていた。


 湿った空気が重くのしかかる。

 時折、どこからともなく**ポタ……ポタ……**と水滴の落ちる音が耳に届き、沈黙の中で異様な存在感を放っていた。


「随分と奥まで来たな……」


 ガルドが剣を肩に担ぎ、周囲を睨みつけながら低く呟く。

 その声は、静寂に溶けるというより、むしろ空間に重く響いた。


 リュークは頷きつつ、壁の古代文字に視線を向ける。

 リーナもそっと隣に立ち、指先で**スス……**となぞるように文様をなぞった。


「これ……前に見た封印の文様と似ているわ。『闇の核、光に抗いし時、影は現世に蘇る』……何を意味しているのかしら」


 リーナの声は、どこか張り詰めたものだった。

 リュークも考え込むように短剣の柄を軽く握り直す。


(闇の核……やはり、黒い影と繋がっているのか)

 その思考を遮るように、ザックが壁を**コン……コン……**と慎重に叩き、耳を澄ませる。


「この壁……裏に空洞がありそうだぜ。隠し部屋か?」


 リュークが目を細めると、ガルドが即座に警戒を強め、剣を**ギィ……キン……**と軽く構えた。


「待て。罠の可能性もある。慎重にな」


 リュークはザックの隣にしゃがみ込み、壁の継ぎ目を丹念に探る。

 指先を滑らせると、わずかに冷たい風が**スゥ……**と漏れてきた。


「……ここだ」


 リュークは声に出さずシャドウファングへと合図を送る。

 黒狼は即座に動きを止め、気配を消して背後を警戒する位置についた。


 リュークは慎重に指を隙間へ差し込み、力を込めて押し出す。


 ググ……ズズズ……ンッ!


 重く鈍い音と共に壁が奥へとスライドしていく。


「やっぱりな……!」


 開いた隙間の向こうには、さらに深く続く階段が口を開けていた。

 階段は湿気で苔むし、所々が崩れかけている。


 リュークは松明をかざし、闇の中を照らす。

 階段の奥からは、**ヒュウ……ヒュウ……**と冷たい風が吹き抜け、全員の頬を撫でた。


「この先に、何かがあるはずだ」


 リュークが静かに告げると、ザックが渋い顔をする。


「おいおい、どこまで続いてるんだよ……」


 それでも、誰一人引き返そうとは言わなかった。


 全員が無言のまま頷き、階段を下り始める。

 足元では**ザリ……ザリ……**と苔を踏みしめる音が続く。

 階段を降りるたび、空気はさらに冷たく、魔力の気配は重く圧し掛かってきた。


 やがて階段を下りきった先、目の前に巨大な扉が現れた。


「この扉……魔力の封印が施されているわ」


 リーナが手をかざし、扉から漂う**ピリ……ピリ……**とした微かな刺激を感じ取る。


 その瞬間、遺跡全体が静かに、しかし確実に、異様な気配で満たされ始めていた――。


「どうする?無理に開けて罠でも発動したら厄介だぞ」


 ガルドが剣の柄を軽く叩きながら、眉をひそめて言った。

 その言葉に、場の空気が一層重くなる。


 リュークはポーチを探り、指先で**カサ……カサ……**と音を立てて魔石草を取り出した。

 手にした草を見つめながら、これまでの経験を頭の中で辿る。


(魔石草……魔力を安定させる作用があったはず。もしかすると……)


「リーナ、これを使ってみてくれ。魔石草だ。封印を安定させられるかもしれない」


 リュークが差し出すと、リーナはわずかに驚いた表情を見せたが、すぐに頷き、慎重にそれを受け取った。


「わかったわ。試してみる」


 リーナは魔石草を掲げ、深く息を吸い込むと、静かに詠唱を始めた。


「清浄なる緑の力よ、魔を鎮め、光を導け——《ディスペル・ヴァイン》!」


 魔石草が**ピシ……ピシ……**と鋭い音を立て、淡い緑の光を強く放ち始める。

 同時に、光は蔦のように扉へと伸び、封印の核へと絡みつく。


 だが――


「……待て、脈動している」


 リュークが低く呟いた。封印全体が**ドクン……ドクン……**と規則的に脈を打っているのだ。


「この鼓動に合わせろ。そうしないと、弾かれる」


 リーナはわずかに頷き、詠唱のリズムを封印の鼓動に合わせて変える。

 緑光が高まったその瞬間、リュークは短く叫んだ。


「今だ、燃やせ!」


 彼は火打ち石で魔石草の先端をシュッと擦り、立ち上る白緑の煙を紋様の中心へと流し込む。

 煙はまるで意思を持つかのように、扉の刻印の溝を沿って流れ、封印全体をなぞっていく。


 すると――


 バチッ……!


 封印の紋様全体が淡く光り、古代文字が浮かび上がった。


「……これが“開錠の言葉”か」


 リュークが息を呑む。


 リーナがその文字を口にした瞬間、鎖の黒霧は**ズズ……ズウウ……**と後退し、悲鳴のような音を上げて揺らぐ。


「ザック!」

「任せろ!」


 ザックは短剣を抜き、封印の核めがけて一気に刃を突き立てた。


 ガコンッ!


 重い衝撃とともに、扉が**ギギ……ギィィ……**と軋みを上げながら、ゆっくりと口を開け始める――。


 その隙間から、**ヒュウウ……ゴウ……**と冷たい風が漏れ出し、辺りの空気が一気に張り詰めた。


 まるで奥で何かが目を覚まし、静かに呼吸を始めたかのような――生々しくも不気味な感触だった。


 シャドウファングが**グルル……**と低く唸り、即座にリュークの隣へと身を寄せる。


 リュークは無言で視線を送るだけで「警戒を続けろ」と合図を出した。

 黒狼はそれに応えるように、耳をピンと立て、闇の奥を鋭く睨み続ける。


 リュークは短剣を構え直し、静かに息を整えた。


「いよいよか……行こう」


 振り返って仲間たちを見る。


 ガルドは無言で頷き、剣を**ズリ……ガチン……と肩から下ろして構え直す。


 リーナは魔力を練り上げると、杖にピリ……ピリ……**と淡く揺れる光を宿した。


 ザックは短剣を逆手に持ち直し、**カチッ……**という硬い音と共に刃を握り込む。


 全員の緊張が、言葉なく共有される。


 シャドウファングは一歩前に出て、尾をわずかに振ったあと、一瞬だけリュークの方へ振り返る。


 その仕草はまるで「いつでも行ける」という無言の確認のようだった。

 リュークはその背中を見て、深く息を吸い込む。


「……行こう。奥が、まだ残ってる」


 仲間たちは互いに視線を交わし、わずかに頷き合った。

 そして、誰からともなく動き出す。


 ザッ……ザッ……ザッ……


 足音が静寂の空間に重く沈み込み、広がる闇の奥へと吸い込まれていく。

 その先には、明らかに異質な「何か」が待ち受けている――そう、誰もが直感していた。


 だが、それでも彼らは進むしかなかった。

 真の「影」の正体を、未だ知らぬまま――。



 次回:封印の解呪と蠢く影

 予告:闇は奥で脈打ち、待っている。

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