第61話 古代遺跡調査と準備と情報共有
リュークはギルドを後にし、足早に宿へ戻った。
扉を開けると、部屋の片隅で休んでいたシャドウファングが顔を上げる。
「ただいま。……これから忙しくなるぞ」
声をかけながら、リュークは荷物の確認を始めた。
革袋の中には、採取用の小刀、保存瓶、仕掛け罠用のロープ、それに爆裂玉と作り貯めたポーション――必要最低限は揃っている。
だが、遺跡という未知の領域に挑むには、まだ心許ない。
「明日は遺跡調査か……今のままじゃ足りないな」
リュークは静かに呟き、腰のポーチを締め直すと宿を出た。
夕暮れの市場は、昼間よりも落ち着きを見せつつも、なお活気が残っている。
行き交う人々を縫うように歩きながら、リュークは一つずつ必要な道具を買い揃えていった。
まずは錬金道具を入れるための頑丈な袋。
次に、魔物の接近を察知できる小型のベル。
そして、影に潜む存在への対策として、光属性を帯びた魔法灯石――これは念のためだ。
品定めと交渉を終えるころには、街灯が次々と灯り始め、空はすっかり茜色から藍色へと変わっていた。
宿へ戻ると、リュークは机の上に買い集めた道具を丁寧に並べた。
シャドウファングが傍らに寄ってくると、その頭を優しく撫でる。
「よし、これでひとまず準備は整ったな……」
深く息を吐き、リュークは次の工程へと気持ちを切り替えた。
ポーチから取り出したのは、昨夜街の図書館で手に入れた古文書の写しと、色あせた古い地図。
慎重にランプの火を灯し、彼は羊皮紙に描かれた文字と線をじっと見つめる。
「さて――今夜は、ここからが本番だ」
独り言のように呟きながら、リュークは静かに作戦を練り始めた。
◆影月の遺跡
かつて、この地に栄えた古代王国が、魔物を封印するために築いた遺跡。
その中心部には「深淵の魔核」と呼ばれる強大な魔力の源が眠っているという。
「深淵の魔核か……。もしかすると、あの黒い影とも関係があるかもしれない」
リュークは地図を広げ、遺跡への道筋を確認する。
遺跡は街の北東に位置する深い森の奥、朽ち果てた石造りの門を抜けた先にあるらしい。
「これなら、道に迷うことはなさそうだな」
翌朝、ギルドに集まったガルドたちにその情報を共有することにした。
◆ 情報共有と作戦会議
ギルドの奥、静かなテーブル席にリューク、ガルド、リーナ、ザックの四人が腰を下ろした。
リュークは持ってきた古い地図を広げ、みんなの前に差し出す。
「俺が調べた限り――古代遺跡の名前は『影月の遺跡』らしい」
そう言いながら、リュークは指先で道筋をなぞった。
「これが、遺跡までのルートだ。一本道だけど、途中には獣道や魔物の縄張りが点在している。油断は禁物だ」
ガルドは地図に目を凝らし、低く唸った。
「なるほどな……見た目より手強そうだ」
一方、リーナは地図の端に描かれた小さな魔法陣の印に気づき、眉をひそめる。
「この印……封印陣ね?」
リュークは静かに頷いた。
「ああ。古文書によれば、遺跡の最深部には『深淵の魔核』と呼ばれるものが眠っているらしい。」
「黒い影――あれの正体とも関係している可能性が高い」
そう言って、リュークは懐から古文書の写しを取り出し、テーブルの上に広げた。
ザックが腕を組み、険しい表情を浮かべる。
「封印が解けかけてる……ってことか?」
「断定はできない。ただ、封印が弱まっているか、何かが目覚めかけている可能性はある」
リュークの真剣な言葉に、場の空気が一瞬重くなる。
彼は皆の顔を見渡し、静かに続けた。
「だからこそ、確かめに行きたい。危険は承知の上だが……無理にとは言わない。
行くかどうかは、みんなに任せる」
言葉を区切った瞬間、ガルドがニヤリと口元を歪めた。
「何言ってんだ。面白そうじゃねえか。もちろん行くさ」
リーナも苦笑しながら頷く。
「魔核が本当に存在するなら、放置すれば街にも被害が出るかもしれないものね。そういうの、見過ごせないわ」
ザックは肩をすくめ、短剣を指の間で器用に弄びながら軽く笑った。
「罠と仕掛けだらけの遺跡探索? 俺がいなきゃ進めないだろ」
リュークは思わず笑みを漏らした。
頼れる仲間たちの言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「……ありがとう。じゃあ、出発しよう。準備は各自、しっかり頼む」
ガルドが拳を突き出し、リュークも迷わず拳を合わせる。
リーナとザックも続き、四人の拳が静かに重なった。
「行くぜ、遺跡探索だ!」
その言葉と共に、影月の遺跡に挑む仲間たちの決意がひとつになった。
黒い影の真実を暴くため――彼らは、出発した。
次回:影月の遺跡へ――静寂の森の先に
予告:森を抜けた先に待つのは、かつての影の真なる姿。
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