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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第4章

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第59話 闇の噂と骨董屋の地図

「次は……あの影の正体を突き止める番だ」


 リュークは短剣を腰に差し、シャドウファングと共に街方を見据えた。

 彼の冒険は、まだ始まったばかりだった。


 リュークはシャドウファングと共にギルドへ足を運んだ。


 夕暮れに染まる街では、人々の声がどこか遠く、柔らかく響いていた。


 ギルドの扉を押し開けると、活気に満ちた冒険者たちのざわめきが出迎えた。


 リュークは迷わずカウンターへ向かい、エリナに声をかける。


「エリナ、例の黒い影――何か情報は掴めたか?」


 帳簿から顔を上げたエリナは、少し険しい表情で頷いた。


「実は……旧市街だけじゃなく、最近は街の外れでも目撃情報が増えているの。

 しかも……」


 そこで言葉を区切るエリナ。

 その沈んだ声に、リュークの胸がざわつく。


「……影を見た後、行方不明になる人が出始めたのよ」

「行方不明……?」


 リュークは思わず顔をしかめた。


「原因は? 共通点はないのか」


 エリナは少し戸惑いながらも続ける。


「それが……今のところ、はっきりしたことはわかっていないの。」


「ただ……影を見た人は皆、ひどく体調を崩していたみたい。まるで魔力を吸い取られたような……」


 その言葉に、リュークの脳裏に地下水道での戦いが蘇る。


 あの時も、あの影は空気すら重く変えて、体の奥底から力を奪おうとしてきた。


「……他に手がかりは?」


 低く問うリュークに、エリナはふと思い出したように言葉を紡いだ。


「そういえば……最近、街の北にある『古代遺跡』が、不気味な光を放っているって話を聞いたわ。もしかすると、関係があるのかもしれない」


「古代遺跡……」


 その単語を口にした瞬間、リュークの背筋に冷たいものが走る。


 思い返すのは、旅の途中で耳にした噂――


(……西の高地に“封印の石碑”と呼ばれる場所がある。記憶やスキルの開放に関わる、特別な場所――だったか)


 影、遺跡、そして石碑。


 バラバラだった情報が、頭の中で静かに繋がり始めていく。


「……ありがとう、エリナ」


 リュークは深く礼を述べ、決意を込めた目でギルドを後にした。


 シャドウファングが横に寄り添い、鼻を鳴らす。


 その仕草に、リュークは小さく頷いた。


「行こう、シャドウファング。次の答えは……あの遺跡にあるはずだ」


 夜の帳が下りる頃、リュークは街を見渡しながら静かに誓った。


「今度こそ、あの影の正体を暴いてやる。」


 シャドウファングが低く唸り、彼の決意に応えるかのように闇の中に溶け込んでいった。


 リュークは短剣を握りしめ、次なる冒険へと踏み出した。


 リュークはギルドからの帰り道、夕暮れに染まるベルハイムの街並みを眺めながら歩いていた。


 街の活気に混じって、どこか不穏な空気を感じる。


 それは、黒い影の噂が広がり始めてからというもの、日ごとに強まっているように思えた。


「シャドウファング、行くぞ」


 黒狼は鼻を鳴らし、リュークの横を歩く。

 その頼もしい背に軽く手を添えながら、リュークは街の裏通りへと足を向けた。


 ◆闇の噂を追って

 まず訪れたのは、旧市街にある酒場「朽ちた斧」だった。


 この店は、冒険者だけでなく、街の裏事情に通じた者たちが集まる場所だ。


 扉を押し開けると、酒と煙草の混じった空気が鼻をついた。


「おや、見慣れない顔だな」


 カウンターの奥でグラスを拭いていた壮年の店主が、リュークを一瞥する。

 リュークは静かにカウンターへ腰掛けた。


「黒い影の話を聞きたくてな」


 その一言に、周囲の客たちが一瞬だけ動きを止めた。


 そして、興味なさげにまた酒に戻る。

 店主はリュークの顔をじっと見つめ、低く呟いた。


「あんた、命知らずだねぇ。まあいい、酒の一杯くらい奢ってくれりゃ話してやるよ」


 リュークは銀貨小を一枚置くと、無言で差し出されたエールを口に運んだ。


 ほんのり苦みの残る味わいが、喉を通るたびに疲れた身体を少しだけほぐしてくれる。


 店主はグラスを拭きながら、どこか重い口調で話し始めた。


「黒い影の噂が立ち始めたのは、ここ数週間だ。最初に見たのは、街外れの爺さんらしい。」


「夜更けに外を歩いていたら、路地裏を――すうっと、黒い霧みてえなのが通り抜けたってな」


「……黒い霧?」


 リュークは思わず眉をひそめた。


 店主は頷きつつ、エールの泡をじっと見つめる。


「そうさ。ただの霧じゃねえ、まるで生き物みたいに動いてたらしい。」


「それからだ、家畜がいなくなったり、飼い犬が怯えて逃げ出したりって話が、あちこちで出るようになったのは」


(黒い霧……まさか、地下水道で遭遇したあの影と同じ……?)

 リュークの脳裏に、あの時の不気味な存在感が蘇る。


「それで、誰か正体を見た奴は?」


 そう問いかけると、店主は首を振り、苦笑した。


「正体までは分からねえよ。けど、古道具屋の親父が妙なことを言ってた。」


「『影が立ち寄ったあと、急に空気が冷たくなった』ってな。

 ……もし興味があるなら、そいつに話を聞いてみるといい」


 リュークは静かに礼を述べ、席を立った。


 酒場を出ると、シャドウファングが当然のように隣へ寄り添う。


「行くぞ」


 リュークは短く声をかけると、夜の街へと歩を進めた。


 闇の中、冷たい風がどこか不穏に吹き抜ける。

 新たな影の気配が、静かに彼の背中を押していた。


 ◆古道具屋の証言

 次に向かったのは、街の片隅にひっそりと佇む古道具屋――《月夜の骨董》だった。


 扉を開けると、カラン、と控えめな鈴の音が店内に響き渡る。


 中は薄暗く、棚には使い込まれたランタン、錆びついた短剣、そして見慣れない魔道具が無造作に並んでいた。


「いらっしゃい。珍しいお客さんだねぇ」


 奥から現れたのは小柄な老人だった。


 細めた目がリュークを静かに値踏みするように見つめてくる。


 リュークは警戒しつつ、単刀直入に切り出した。


「……黒い影の噂を聞いて来た。何か知っているか?」


 その言葉に、老人の瞳が一瞬だけ鋭く光る。


 だが、すぐに口元を歪め、不気味な笑みを浮かべた。


「ほう……あんたも、あれを追ってる口か。確かに見たとも。夜中にね、裏手の路地を這うようにして動く黒い影を――。」


「冷たい風が吹いた直後、窓の外を“それ”が横切ったんだ。まるで、生きている闇だったよ」


「……生きている闇、か」


 リュークは思わず息を呑む。


 だが老人は肩をすくめ、少し声を潜めて続けた。


「昔聞いた話だがね。このベルハイムの地下には古い遺跡が眠っているという。

 影はそこから湧き出している――そんな言い伝えがあるんだよ」


 老人はそう言いながら、埃まみれの古書を店の奥から持ち出してきた。


「これは?」


 リュークは身を乗り出した。


「古い地図さ。この街ができるより前の時代、ここには儀式場があったらしい。

 もしかしたら、そこが影の出どころかもしれない」


 迷うことなくリュークは銅貨を数枚取り出し、地図を購入した。


 地図を手にした彼は、外へ出ると夜の帳が降りる街を見上げた。


 地図に記されていた場所――《影月の遺跡》。


 リュークはそれを睨みつけるように見つめた。


「……やっぱり、遺跡が関係しているのか」


 シャドウファングが彼の足元で静かに寄り添う。


 リュークはその頭を撫で、息を整えた。


「よし、次は遺跡を調べる。――黒い影の正体を突き止めるために」


 決意のこもった低い声とともに、リュークは夜の街を静かに歩き出した。



 次回:封印の記録と影月の真実

 予告:ギルド依頼と仲間への呼びかけ

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