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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第4章

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第53話 日常と覚醒──スキル「鑑定」の目覚め

 リュークとシャドウファングが静かな森の小道を進んでいると、不意に風がざわめき、木々の間から低い唸り声が響いた。


「シャドウファング、警戒しろ。」


 リュークは素早く短剣を抜き、身を低くする。暗闇の中、茂みがガサリと揺れた。

 次の瞬間、獣が飛び出した。


「スティングウルフか!」


 灰色の毛並みに黒い縞模様を持つ狼型の魔物。鋭い爪と毒の牙を持ち、群れで行動することが多い。


「グルルッ!」


 シャドウファングが唸り声を上げ、リュークの隣に並ぶ。その眼光は鋭く、いつでも飛びかかれるように身構えていた。


「数は……二体か。やれるな。」


 リュークは冷静に観察する。スティングウルフは素早いが、狭い森の中では動きに制限がかかる。


「シャドウファング、左を頼む!」

「グルルァ!」


 リュークは右側のウルフに向けて駆け出した。短剣を構え、狙うは関節部分。だが、ウルフは跳躍し、リュークに飛びかかる。


「くっ!」


 リュークは咄嗟に体をひねり、腰のポーチから何かを取り出した。それは、彼が道具屋で手に入れた閃光玉だった。


「くらえ!」


 パァンッ!


 閃光玉が弾け、強烈な光が暗闇を切り裂く。ウルフは目を潰され、怯んだ隙にリュークは短剣を振るった。


 ザシュッ!


 刃はウルフの前足を斬り裂き、獣は悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。だが、まだ終わりではない。


「今度は……魔法だ!」


 リュークは深く息を吸い込み、手のひらに魔力を集中させる。

「炎よ、我が意に応えろ……ファイアボルト!」


 指先から火の玉が放たれ、ウルフの胸元に直撃した。爆裂音と共に獣の体が弾け、黒焦げの塊が地面に崩れ落ちる。


 その隣では、シャドウファングがもう一体のウルフに噛みつき、強烈な一撃で仕留めていた。


「ふぅ……やったな。」


 リュークは短剣を納め、シャドウファングの頭を撫でた。


 その時——


【リューク・サーガハート】

 •レベル:5

 •HP:150/150

 •MP:50/50

 •筋力:15

 •敏捷性:18

 •耐久力:16

 •魔力:10

 •新スキル:鑑定


「レベルが……上がった?」


 リュークは少し自信に満ちていた。

 今確かに強くなっている。


「メモリーバンクの力……これが俺の可能性なのか?」


 視界に浮かぶ新たなスキル【鑑定】に目を留めた。


「これで、魔物やアイテムの正体を見極められるのか……?」


 リュークはそっと目を閉じ、シャドウファングの方を見た。視界の隅に浮かぶ【鑑定】の表示を意識する。


 ——シャドウファング

 •種族:影狼シャドウウルフ

 •レベル:7

 •HP:200/200

 •MP:120/120

 •筋力:30

 •敏捷性:57

 •耐久力:40

 •魔力:20

 •スキル:シャドウストライクLV.1フェイタルバイトLV.1、ダークハウリングLV.1


「すごい……こんなふうに見えるのか。」


 やはり、シャドウファングの方が強いのか、それにスキルがある。

 何かスキルのようなものを使ってるとは思ってはいたが……。


 新たな力を得た興奮が、静かに心を満たしていく。


「帰るか、シャドウファング。」


 黒狼は鼻を鳴らし、リュークの隣を並んで歩く。

 夕焼けが二人の影を長く引き伸ばしていた。


 森の中を抜ける道すがら、リュークはふと立ち止まり、静かに空を見上げた。

 茜色に染まった雲が、ゆっくりと流れていく。


「……きれいだな」


 戦いの日々の中で、こんなふうに空を眺める余裕を持てたのは、久しぶりだった。

 隣でシャドウファングも立ち止まり、静かに鼻を鳴らす。


 リュークは小さく笑い、そっと黒狼の首筋を撫でた。


「お前も、ちょっと疲れたか?」


 シャドウファングは尻尾を軽く振っただけで、特に嫌がる素振りも見せない。

 それが、リュークには妙に嬉しかった。


 やがて二人は並んで歩き出し、森を抜け、宿へと向かう。


 リュークは宿に戻ると、部屋の灯りを灯し、椅子に腰掛けた。


 窓の外には、夜の帳がすっかり降りている。

 重い鞄を床に置き、革のポーチを外す。


 そのまま、ぐっと背伸びをして、固まった肩をほぐした。


「ふう……」


 暖かな室内にほっとしつつ、手のひらを見つめる。


 ふと、新たに手に入れたスキルを思い出す。


【鑑定】


「試してみるか……」


 彼は腰ポーチから適当なアイテムを取り出した。

 それは、道中で拾った錆びた短剣だった。


 リュークは短剣に意識を向け、スキルを発動させる。


「鑑定!」


 視界に淡い光が走り、目の前に半透明の文字が浮かび上がった。


【錆びた短剣】

 品質:劣悪

 攻撃力:5

 耐久度:12/30

 備考:手入れをすれば使用可能。鍛冶屋で修理可。

「なるほど、こんな風に見えるのか。しかも、修理すれば使える可能性もあるわけか…」


 リュークはさらに試してみることにした。次に取り出したのは、魔石草。依頼で採取したものだ。


「鑑定!」


【魔石草】

 品質:良好

 効果:魔力回復(小)

 備考:乾燥させることで保存性が向上。ポーション素材として利用可。


「ポーション素材になるのか…日常の記憶に何かヒントがあった気がする」


 リュークはポーチの奥から小さなガラス瓶を取り出した。魔石草を摘みながら浮かんだ、幼い頃のぼんやりとした記憶を手繰り寄せる。


(確か…薬草を煮詰めて、不純物を取り除いて…)


 彼は宿の厨房を借りると、鍋に水を張り、焚き火台に火を灯した。魔石草をそっと取り出し、指先で葉を撫でる。その感触に、昔どこかで感じた懐かしさが蘇る。


「これがポーションに使えるなんてな…」


 リュークは鍋の水が温まるのを待ちながら、魔石草を細かく裂いていった。茎は硬く、葉はしっとりとしており、噛み締めると微かな苦みが舌に残った。


「これなら…いけるか?」


 水が沸騰し始めると、リュークは魔石草を慎重に鍋に入れた。ジュワッと小さな泡が弾け、淡い緑色がじわじわと滲み出る。


 鍋から立ち昇る独特の香りに、彼の意識が集中する。


「確か…煮詰めすぎると成分が壊れるはずだ。温度はこれくらいか?」


 火加減を弱めながら、鍋の中を木の匙で静かにかき混ぜる。煮詰める時間を測る術はないが、体が自然に動く。まるで、手が勝手に覚えているかのように。


(これが日常の記憶…なのか?)


 彼は完成を待つ間、魔法で手をかざして鍋の温度を一定に保った。


 そして、ふと思い出しながら呟く。


「鑑定…!」


【鑑定:魔石草エキス(未精製)】

 効果:魔力回復作用(低)、不純物多し。精製が必要。


「やっぱり、これだけじゃダメか」


 リュークは焦らず、次の手順を思い出す。

 取り出したのは薄い布。これで不純物を濾過するのだ。


 ゆっくりと鍋の中身を布で漉し、液体をガラス瓶に注ぎ込む。青緑色だった液体は、透明度を増しながら瓶の中に蓄えられていく。


 再度、鑑定を使ってみる。


【鑑定:簡易魔力回復薬(試作品)】

 効果:魔力回復(小)、体力回復効果なし。品質:低


「やった…!」


 完成した液体は淡い緑色に輝き、月明かりにかざすと瓶の内側が淡く光って見えた。


「これが…俺にもできるんだな」


 満足げに瓶を見つめるリュークの隣で、シャドウファングが鼻を鳴らした。彼は狼の頭を撫でながら、小さく笑う。


「これで、金貨稼ぎもできるかもしれないな」


 リュークは瓶をポーチに収め、静かに夜の空を見上げた。彼の瞳には、新たな可能性への期待が浮かんでいた——。


 さらに、部屋に戻り日常の記憶を探るように目を閉じる。


 ふと、昔見た市場の光景が思い浮かんだ。商人たちが品物を吟味し、価値を見極めていた様子。


 それに倣って、自分も街で品物を見て回れば、掘り出し物を見つけられるかもしれない。


「よし、明日は市場に行ってみよう。それに…」


 リュークは再び魔石草を手に取った。ポーション作りを極めれば、依頼とは別に収入源を確保できる。


 それだけじゃない。


 剣術や魔法だけでなく、こうした知識や工夫で生き抜く力を身に着ければ、この世界で生きる道がもっと開けるはずだ。


「シャドウファング、俺はもっと強くなる。戦いだけじゃなく、この世界を知り尽くしてみせる」


 愛狼は鼻を鳴らしながらリュークの足元に座り、まるで彼の決意を肯定するように静かに寄り添っていた。


 次回:朝の市場と歩む一歩──日常の戦い

 予告:静かな日々が力へと変わる。知識は“武器”になる。

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