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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第3章

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第52話 盗賊討伐の報告と新たな力

 ベルハイムの街に戻ったリュークたちは、夜明け前の薄暗い通りを抜けてギルドへ向かった。戦いの余韻がまだ体に残っている。


 ギルドの扉を押し開けると、中はまだ人影もまばらだった。カウンターにはエリナが控えており、リュークたちの姿を見て驚いた表情を浮かべた。


「みんな……無事だったのね!」

「なんとか、な」ガルドが肩をすくめながら言った。「盗賊の残党は片付けた」


 エリナは安堵の表情を見せながら、カウンターの奥から報告書を取り出した。


「それで……盗賊団のアジトで何か分かったことは?」


 リュークたちは、盗賊団のアジトで起こった戦いを順を追って説明した。シャドウファングが盗賊を追い詰めたこと、リーダーとの死闘、そしてアジトから回収した物品について。


「何か、気になるものはありましたか?」


 エリナが尋ねる。

「そういえば……」


 リュークは少し考えた後、以前警備兵に報告した件を思い出した。


「盗賊団の仲間がベルハイムに潜伏している可能性があるって話をきいているか?」


 エリナはハッと目を見開いた。

「ええ、もちろん警備隊からきいています。」


 ガルドが腕を組んで唸った。


「あのアジトだけが拠点とは思えねぇ。もしかしたら、別の隠れ家が街のどこかにあるかもしれん」


「盗賊団の動きがこれで止まったかどうかは分からないな」


 ザックが低い声で呟いた。

 リュークは考え込んだ。


(もしまだ仲間が潜んでいるなら、街が危険にさらされるかもしれない)


 エリナは神妙な面持ちで頷くと、奥の部屋へと消えていった。しばらくして、ギルドマスターと共に戻ってきた。


「報告は聞いた。よくやってくれたな」


 ギルドマスターが静かに言った。


「お前たちのおかげで街の安全は確保された……が、まだ安心はできん」


 リュークが頷く。


「ああ、俺たちもそう思ってる」


「警備隊には改めて街の巡回を強化させる。ただ、お前たちにも頼みたい。何か異変を感じたらすぐに知らせてくれ」


「もちろんです」リュークは力強く返事をした。

「それと、報酬だ」


 ギルドマスターはエリナに合図を送り、金貨と銀貨が詰まった袋を差し出した。


「追加報酬に加え、ギルドからの特別報酬として魔力回復薬を贈る。受け取れ」


「ありがとうございます」


 ガルドは袋を受け取り、仲間たちに分け与えた。シャドウファングには干し肉を与え、嬉しそうに尻尾を振る。


「ひとまず休もう。次の依頼に備えてな」


 ガルドが立ち上がり、ギルドを後にする。リュークたちもそれに続いた。


 静かな夜明けの街に、彼らの足音だけが響いた。だが、リュークの胸には新たな決意が宿っていた。


(必ず見つけ出してやる。ベルハイムに潜む、もう一つの影を——)

 こうして、リュークたちは新たな脅威に備え、静かに夜明けを迎えるのだった。


 ◆新たな力の確認依頼

 ギルドの朝は早い。


 リュークがカウンターへ向かうと、エリナが微笑みながら迎えた。


「おはようございます、リュークさん。盗賊団討伐の件、お疲れ様でした」

「ありがとう。でも、まだ気は抜けないよ。街に残党が潜んでるかもしれないからね」


 エリナは頷き、依頼掲示板を示した。


「それなら、警備隊の巡回依頼なんてどうですか?あとは薬草採取や、小型魔物の討伐依頼もありますよ」


「うーん……」


 リュークは掲示板に目を走らせる。


 まだ朝の光が差し込む前、ギルドの空気は少しひんやりしている。


 奥のテーブルでは、他の冒険者たちが朝食をつまみながら、依頼の相談をしていた。

 パンをかじる音、カップのぶつかる音――それが静かな活気を生んでいた。


(今の自分の力を、確かめたい。でも、いきなり大きな依頼に挑むのは……)


 その時、ふと目に留まった依頼があった。


【依頼:森の魔石草採集】

 報酬:銀貨小5枚

 内容:森の奥に生える魔石草を採取せよ。途中で小型魔物が現れる可能性あり。


「これにしようかな」


 リュークが依頼書を指差す。

 すると、横から声が飛んできた。


「それなら、俺たちは別の依頼に行く。リューク、お前はお前で気をつけろよ」


 ガルドだった。

 リーナとザックも少し離れたところで準備を整えている。


「俺たちは、北側の森林帯での討伐だ。こっちも気を抜けねぇ」


 ガルドは軽く笑い、リュークの肩を叩く。


「無茶するなよ。シャドウファング、お前もな」


 そう言って、黒狼の頭をくしゃりと撫でた。

 シャドウファングは嬉しそうに鼻を鳴らしたが、すぐにキリッと背筋を伸ばす。


 その様子に、リーナがふっと微笑み、ザックは無言で軽く手を挙げた。


「……ああ、ありがとう」


 仲間たちはそれぞれ、次の冒険へと向かっていく。


 リュークは短剣の柄にそっと手を置きながら、小さく深呼吸した。

(俺も、自分のやるべきことを進めよう)


「さて、俺も行くか」


 リュークはシャドウファングに声をかけ、

 掲示板から依頼書を引き抜いた。


 ◆森での確認戦闘

 森は静寂に包まれ、朝露が葉を濡らしていた。魔石草が生える場所はこの先だ。


「行こう、シャドウファング」


 リュークは黒狼に声をかけ、警戒を強めながら進んだ。


 その時、茂みがガサリと揺れ、小型の魔物が飛び出してきた。


「スティングウルフか!」


 リュークは短剣を構える。灰色の体毛を持ち、鋭い牙を光らせながら襲い掛かってくる。


「シャドウファング、頼む!」

「グルルッ!」


 黒き影が駆け、スティングウルフの横腹に飛び掛かった。二匹の獣が絡み合いながら地面を転がる。


(ここだ!)

 リュークは短剣を逆手に持ち、魔物の横腹を狙って飛び込む。瞬間、頭に過去の剣術の記憶が流れ込んできた。


「剣は、刃を滑らせるように——!」


 短剣が魔物の皮膚を切り裂き、鮮血が飛び散る。倒れたスティングウルフを確認し、リュークは息をついた。


「……うまくいったな」


 シャドウファングが鼻を鳴らしながらリュークの隣に寄り添った。

 しかし、リュークはそこで立ち止まらず、手をかざして魔法の確認に移る。


「次は、魔法だな……」


 掌にじんわりとした温かさが宿る。まるで体の奥底から何かが湧き上がる感覚に、リュークは思わず息を呑んだ。これまで感じたことのない感覚だった。


(これが……魔力?)


 脳裏に見覚えのない知識が浮かび上がる。詠唱の構成、魔力の流れ、そして炎を呼び起こす言葉。まるで誰かが彼に教え込んだかのように自然に理解できた。


「……炎よ、我が意に応えろ。ファイアボルト!」


 リュークの指先が熱を帯びる。

 淡い赤い光が瞬き、手のひらから小さな火の玉が生まれた。


 その光景にリュークは思わず息をのむ。


「こんな簡単に……?」


 迷いを振り払い、目の前の枯れ木に向けて腕を突き出す。


 ボンッ!


 火球は勢いよく飛び、枯れ木に直撃した。乾いた爆裂音と共に、木の表面が焦げ付き、煙が立ち上る。目の前の光景にリュークは立ち尽くした。


「本当に……使えたのか?」


 驚きとともに、胸の奥に妙な確信が生まれた。

 それは、自分がこの魔法を


「知っていた」

 という感覚。手順を教わったわけでもないのに、自然と体が動き、魔力の流れを理解していた。


「これが……メモリーバンクの力?」


 リュークは指先を見つめた。

 その奥底に眠っている知識が、まだすべて解放されたわけではないだろう。


 もっと深く掘り下げれば、さらなる力を引き出せる気がした。


 次に、彼は腰のポーチに手を入れ、縄を取り出した。


「魔法だけじゃない……これも?」


 無意識のうちに、木の枝へ縄をかけ、素早く結ぶ。

 指の動きは迷いがなく、複雑な結び目すらも正確に仕上げた。


「これも……覚えていたことなのか?」


 道具の使い方、罠の仕掛け方。

 まるで昔から体に染みついていたかのように、手が自然に動く。


 日常の記憶――それは戦闘以外にも、生活に根差した知識が彼に刻み込まれていた。


 リュークはそっと拳を握り締めた。


「剣技、魔法、日常の知識……すべてが俺の中に眠っていたものか」


 ふと、森の奥から、風に乗って小さな花の香りが届いた。

 見れば、足元には控えめな白い花が揺れている。


(こんな場所に、花が……)

 戦いばかりだった日々の中で、そんな小さな自然の美しさに目を留める余裕が、自分に芽生えていたことにリュークは気づいた。


 彼はシャドウファングを振り返った。

 黒狼はじっと彼を見つめ、静かに鼻を鳴らす。


 その瞳には、どこか信頼と誇りが宿っているように見えた。

 リュークは微笑みながら、シャドウファングの頭を撫でた。


「ありがとう、シャドウファング。お前のおかげで、俺はここまで来られた」


 シャドウファングは満足そうに喉を鳴らし、リュークの隣を並んで歩く。


 リュークは腰のポーチを叩き、改めて気合を入れた。


「よし、次は魔石草だ。行こう」


 朝霧に濡れる森の中へ、二人の影が静かに溶け込んでいく。

 確かに感じる、己の中に宿る力――。


 その片鱗が覚醒した今、彼はもうただの「無能な冒険者」ではなかった。


(少しずつだけど……俺は確かに強くなっている)

 風がそっと二人の背中を押した。


 森は静寂に包まれ、柔らかな陽光の粒が、葉の隙間からこぼれ落ちていた。


 次回:日常と覚醒──スキル「鑑定」の目覚め

 予告:小さな依頼とレベルアップ

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これからも、さらに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、どうぞ応援よろしくお願いしま


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