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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第3章

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第51話 罠と激戦──牙を剥く盗賊の本拠

 アジトは森の奥、岩場を利用した隠れ家だった。リーナが魔法で周囲の気配を探る。


「中に……四、五人いるわ。ただ、妙な動きがある。見張り役が一人だけ外にいるなんて、ちょっと不自然」


「……罠かもしれないな」


 リュークは慎重に頷き、ガルドと視線を交わす。


「囮の可能性もある。警戒して動こう」



 シャドウファングが静かに唸り、岩陰に身を沈める。ザックは木陰に潜み、リーナは詠唱の準備に入る。


 リュークは一つ深呼吸すると、合図を送った。


「今だ!」


 暗闇に紛れ、彼らはアジトへと踏み込む。焚き火の灯りが揺らめき、盗賊たちの影が壁に映し出される。


「何者だ!?」


 盗賊の一人が声を上げた瞬間、リュークは腰の道具袋に手を伸ばした。


「行け、シャドウファング!」

「グルルァッ!」


 シャドウファングが闇から飛び出し、盗賊の一人に跳びかかる。しかしその直後、アジトの隅から金属音が鳴り響いた。


「罠だ、気をつけろ!」



 カシャッ——


 天井から網が落ち、ガルドの動きを封じようとするが、大剣で振り払って脱出する。直後、奥の方から悲鳴が上がった。


「くそっ、罠まで仕込んでやがる!」


 リュークは煙玉を地面に叩きつけた。


 ——パァンッ!


 炸裂音と共に白煙が立ち込め、視界が遮られる。


「何だ、煙か!?ぐっ……見えねえ!」


 煙の中で、盗賊たちが混乱する間に、リュークは影を縫うように駆け、短剣で敵の武器を弾いた。だが、煙の奥から声が響いた。


「仲間がやられたフリをしてる!隙を見て挟み撃ちにするぞ!」

「抜かりねえな……」


 リュークが呟く。

 目の前の盗賊が剣を振り下ろしてくる。


「甘い!」


 リュークは地面に転がって避けると、ポケットからもう一つの道具を取り出した。油の染み込んだ布きれに火打石を擦りつける。


 ——ボッ!


 火が灯り、敵の足元に転がす。布きれが燃え上がり、盗賊たちは怯んだ。


「くそっ、何をした!」

「このまま押し切る!」


 ガルドが吠える。彼の大剣が振り下ろされ、盗賊の剣ごと叩き割った。その隙にリーナが詠唱を終え、光の矢を放つ。


「ライトニング・スピア!」


 青白い稲妻がアジトを照らし、盗賊の一人を貫いた。悲鳴が響くなか、ザックは影から飛び出し、短剣で敵の首筋を狙う。


「くっそ、こいつら……ただの冒険者じゃねえな!」


 最後の盗賊が震えながら剣を構えた。しかし、その背後にはシャドウファングが迫っていた。


「グルルァッ!」


 シャドウファングが吠え、盗賊を地面に叩きつける。リュークはその隙を逃さず、短剣を突き立てた。


 盗賊が崩れ落ち、アジトには静寂が戻った。リュークは息を整え、短剣を納める。ガルドたちも無事を確認し合った。


「ふう……やったな」


 リーナは周囲を警戒しながら言った。「でも、あの罠と挟み撃ちの連携……ただの盗賊とは思えない」


 だが、その時。アジトから現れた男の存在が、空気を一変させた。


「ほう……随分とやってくれるじゃねぇか」


 現れたのは盗賊団のリーダーだった。眼光鋭く、大剣を肩に担いでいる。


「お前らを片付けりゃ、また一からやり直せるってわけだ」


 リーダーが構えると、場の空気が張り詰めた。リュークは短剣を握り直し、仲間たちに目配せを送る。


「こいつを倒せば終わりだ。みんな、行くぞ!」


 盗賊団の最期の戦いが始まる——。


 リュークは短剣を握り直し、盗賊団のリーダーと対峙した。


「お前ら、よくも好き勝手やってくれたな……」


 リーダーは大剣を肩に担ぎ、冷たい視線をリュークたちに向ける。傷跡だらけの顔に不敵な笑みを浮かべ、その全身からは歴戦の風格が漂っていた。


「ここから先は通さねぇ。俺を倒してから行くんだな!」

「望むところだ!」


 リュークが叫ぶと同時に、シャドウファングが吠え声を上げ、低く構

 えた。


 ガルドは剣を握り直し、リーナは魔力を練り始める。ザックは影に溶け込み、隙を狙う構えだ。


 だがその瞬間、リュークの足元にわずかな違和感が走る。 「——っ罠か!」 地面に仕掛けられていた細い針金が弾け、放たれた矢がリュークをかすめる。


「こいつら……準備してやがった!」


 リュークは苦い声で呟き、足元を素早く確認する。

(下手に踏み込めば、また罠が……)


 一瞬の逡巡。しかし——今は攻めるしかない。


「――構わず突破する!」


 叫ぶと同時に、シャドウファングが吠え、仲間たちが一斉に動き出した。


 リュークが踏み込むと、リーダーは咄嗟に大剣を振るった。

 その一撃は凄まじい風圧を生み、地面を抉った。


 リュークは紙一重でかわすが、その衝撃で体が浮き上がる。


「くっ……!」


 着地と同時に短剣を投げ、リーダーの視線を逸らす。その隙を突き、ガルドが正面から突きかかる!


「おおおおっ!」


 ガルドの剣がリーダーの大剣に弾かれ、火花が散った。リーダーは片手でガルドを吹き飛ばすと、後衛のリーナに視線を送る。


「魔術師狙いか……気を付けろザック!」

「了解!」


 だがそれより早く、盗賊の一人が物陰から飛び出し、煙玉を投げつけてきた。あたりが白煙に包まれ、視界が奪われる。


「くそっ、見えねぇ!」


 リュークが目を凝らすと、煙の中からリーダーが再び現れ、大剣を振り下ろした。


「小細工は通用しねぇぞ!」


 リュークは反射的に身を低くし、大剣の一撃を回避。地面に着地すると同時に、シャドウファングがリーダーの背後から飛びかかった。


「グルルァッ!」


 しかし、リーダーはすかさず振り返り、大剣の柄でシャドウファングを叩き落とした。


「そんなもんか?」

「リーナ、今だ!」


 ガルドの叫びに応え、リーナが詠唱を完成させる。


「炎よ、敵を焼き尽くせ——《ファイアボルト》!」


 放たれた炎の矢がリーダーの足元を爆ぜさせ、爆風と煙が一帯を覆う。


 視界が揺らいだその瞬間、ザックが影の中から躍り出た。


「──そこだッ!」


 短剣が閃き、リーダーの脇腹を狙って鋭く突き出される。

 だが――


「甘い!」


 リーダーは身体をひねってかわすと、逆にザックへ拳を振るう。


「チッ……!」


 ザックは寸前で身を沈めて回避し、反転して再度、短剣を斬り込ませる。リーダーはそれも読んでいたかのように、剣の柄で受け止める。


「ほう……速いじゃねぇか」

「言ってろ……」


 ザックは跳び退きつつ、体勢を整えた。即座に間合いを詰めて左右からフェイントを織り交ぜた突きを連続で繰り出すが――


「その手には乗らん!」


 リーダーは剣の平で弾き、逆にカウンターの蹴りを繰り出す。ザックは肩をかすめられ、体勢を崩しながらもすぐに前転で距離を取る。


「ザック!」

 リュークが叫ぶ中、ザックは息を整えて低く構える。


 再び跳びかかり、刃を翻した。


「──次は外さない!」


 短剣が閃き、リーダーの腕を狙って突き出される――だが、それもわずかにかわされる。


「その程度か!」


 リーダーが嘲るように大剣を振り上げた、その瞬間――


「させるかよ!」


 ガルドが叫び、間髪入れずに正面から踏み込んだ。

 重い剣を振り下ろし、リーダーの大剣とぶつけることでその動きを封じる。


 ギィィン――!


 火花が散り、金属音が狭い空間に響き渡った。

「こいつ……!」


 リーダーは体勢を崩し、わずかにバランスを失う。

 その隙を逃さず、ザックは空振りを逆手に取って一回転。


 その勢いを利用して逆の腕へと短剣を鋭く突き刺した。


「……ぐっ!」


 リーダーの腕に浅く刃が食い込み、顔を歪める。

 だが、なおも強引に大剣を振り払ってザックを退けた。


「……舐めるなよォッ!」


 怒声とともに大剣を地面に叩きつけるように振るう。衝撃波が走り、ザックは吹き飛ばされ、数メートル先の地面を転がった。


「ザック!」

「……まだだ……終わってねぇ……」


 その時、アジトの奥から別の盗賊が現れ、リーナに向かって飛び道具を構える。


「魔術師を狙え!」

「リーナ、下がれ!」


 リュークが叫ぶと、シャドウファングがその盗賊に向かって跳躍し、妨害に入る。


 リュークは短剣を逆手に持ち、リーダーの懐へ飛び込んだ。


 一直線に切っ先を胸元へ突き出す——


「甘い!」


 リーダーの大剣が素早く横薙ぎに振るわれ、鋭い金属音とともにリュークの刃は弾かれた。


「……っ!」


 反動でバランスを崩しそうになったリュークは即座に体勢を低く保ち、地を蹴って背後へ回り込む。


 しかし——


「見えてるぞッ!」


 リーダーは反転し、踏み込みと同時に肩口から大剣を振り下ろしてきた。


 リュークは寸前で身を引き、剣圧が頬をかすめる。そのまま地面を転がって回避し、再び短剣を構える。


(……攻撃が重い。間合いを間違えれば即死だ……!)


 深く息を吸い、再び前へ。リュークはフェイントを交えて斜め下から斬り込んだが、リーダーは動じることなく大剣の柄で受け止める。


「小僧、通じねな!」

「じゃあ、これならどうだっ!」


 リュークは片足を踏み込んで距離を詰め、足元へ滑り込むようにして腹部を狙ったが——


「無駄だ!」


 リーダーの膝蹴りがリュークの腹に突き刺さる。衝撃で呼吸が詰まり、膝が揺らぐ。

(……まずい……!)


 その瞬間、大剣が真上から振り下ろされるのが見えた。

 避けきれないと悟った、その瞬間——


「グルルァッ!」


 シャドウファングが唸り声と共に横から突進し、リュークの身体を弾き飛ばすように突き飛ばした。


 ドガッ!


 リュークは地面に転がり、間一髪で斬撃を免れる。刃は地面を抉り、砂塵が舞い上がる。


「シャドウファング……!」


 シャドウファングはリュークの前に立ちふさがり、低く唸る。

 その姿は、リーダーを真正面から睨み据えていた。


 リュークの叫びが響く。しかし、今は立ち止まっている場合ではない。リーダーが冷笑を浮かべながら大剣を振り上げる。


「貴様もその狼もまとめて斬り伏せてやる!」


 その瞬間、ガルドが横合いから斬り込んだ。


「させるかぁっ!」


 ガルドの剣とリーダーの大剣が正面からぶつかり合い、重厚な衝撃音が夜の静寂を切り裂いた。


「チッ……重てぇな!」


 ガルドは後ろに滑りながらも体勢を崩さず、素早く足を踏み直して再び剣を構える。

 リーダーは一歩下がり、片膝をつきながらも大剣を引きずるように振り抜いてきた。


 ガルドは剣を振り上げて受け止めるが、その圧力で後退を余儀なくされる。


「今度は……こっちの番だ!」


 リーダーは吠えるように叫びながら二撃目を振り下ろす。ガルドは刃を斜めに構え、鋭い角度で受け流す。


 金属音が鋭く響き、剣と剣の間に火花が散った。

 その隙を突いて、リーナの詠唱が完成する。


「リーナ、今だ!」

「了解! ライトニング・スピア!」


 雷撃が放たれ、リーダーの足元に閃光と共に炸裂する!


「ぐっ……!」


 膝に雷が走り、一瞬バランスを崩したその隙に——


「こっちもだ!」


 ザックが影から飛び出す。身を翻しながら宙を舞い、リーダーの背後から脇腹に短剣を突き立てた!


「ぐはっ……!」


 鋭い痛みに顔を歪めるも、リーダーは咆哮を上げ、無理やり身体をひねる。

 その腕一本でザックを振り払った。



 ザックは地面を転がりながらも、すぐに体勢を立て直し、肩で息をしつつも冷静に距離を取。


 その目は、もはや恐れではなく、勝機を見据える光に満ちていた。

 リーダーは血に塗れた顔で片膝をつき、なおも大剣を持ち上げる。


「まだだ……! 俺は……こんなところで終わらねぇ!」


 追い詰められた獣のような目。だが――。


「……もう詰んでるぞ」


 リュークが静かに、まるで冷水を浴びせるように言い放った。

 その言葉に、リーダーの肩がピクリと震える。


 ガルドは大剣を構え直し、リーナは既に次の詠唱に入っている。ザックも再び影に紛れ、次の一手に備えていた。


 シャドウファングは低く唸り、四方から包囲するように位置を取る。


「……ぐっ……」


 状況を理解したリーダーの顔に、ようやく恐れが滲む。


 もう逃げ場はない。どこを見ても、仲間たちの意志は揺るがず、包囲と攻勢の準備は万全だった。


「来るぞ……!」。


 ガルドが声を張るより早く、リーダーは唸り声と共にリュークへ突っ込んできた。


 鈍重な体とは裏腹に、その一撃は獣の本能が詰まった直線の一閃――!


 リュークは咄嗟に身を捻り、かすめるように回避する。

 リーダーの大剣が背後の壁を砕き、破片が飛び散った。


(一歩でもずれてたら……危なかった……!)

 冷たい汗が背を伝う中、リュークは歯を食いしばった。


(……もう、逃げない!)

 短剣を逆手に握り直し、低く身構える。


 その瞬間、リーダーが僅かにバランスを崩した。


「今だ、ガルド!」


 リュークの叫びに応え、ガルドが斬撃を繰り出す。


「おおおおっ!」


 重い一撃がリーダーの大剣を押し返し、ガードが崩れる。


「リーナ!」

「いくわよ!」


 リーナが即座に詠唱を終え、足元へ光弾を撃ち込む。


 バシュッ!


 眩い閃光と共にリーダーの足元が爆ぜ、強制的に動きを鈍らせる。


「シャドウファング、仕上げだ!」

「グルルァッ!」


 黒き獣が影のように飛びかかり、リーダーの脇腹に食らいついた。

 リーダーは呻きながら、足元を完全に奪われる。


(――今しかない!)


 全員の連携が作り出した一瞬の隙。


 リュークは一直線に間合いを詰め、躊躇なく短剣を振り上げた。


「ここで決める――!」


 鋭く閃いた刃がリーダーの胸元を深々と貫く。

 その瞬間、空気が張り詰め、まるで時間が止まったかのように静まり返る。


「がっ……バカな……俺が……こんな……奴らに……!」


 リーダーは血を吐きながら、ゆっくりと膝をついた。


 その瞳に浮かんでいた怒りと執念は、今やただの茫然とした色に変わっていた。


 ――敗北を悟ったのだ。


 ズゥン……と重く崩れ落ちた巨体が地面を打ち、ついに完全に動かなくなる。


 その直後、緊張の糸がぷつりと切れたかのように、周囲の音が戻ってきた。

 ザックとガルドが最後の盗賊たちを手際よく倒し、リーナが慎重に周囲を確認する。


「……終わった、か」


 ガルドが剣を下ろし、深く息を吐いた。

 リーナも杖を抱きかかえ、ほっとしたように微笑む。

 ザックは肩を竦めつつも、口元を緩めて言った。


「全員、よくやったな……完璧だ」


 リュークは、荒く息を吐きながらシャドウファングの元へ駆け寄った。

 黒狼は誇らしげに吠え、リュークを迎えるように尾を振る。


「ありがとう、シャドウファング」


 リュークはその頭を優しく撫で、改めて仲間たちの顔を見渡した。

 どの顔にも、緊張から解放された充実感と誇りが刻まれていた。


 夜の森には、戦いを終えた静けさだけが残る。


 リュークは短剣を収め、夜空を見上げながら静かに呟いた。


「――これで、本当に終わった」


 仲間たちも黙って空を仰ぎ、束の間の勝利と安堵を噛みしめていた。


「みんな、帰ろうぜ」



 ガルドの言葉に、仲間たちはそれぞれ無言で頷いた。

 そして、静かに森を後にする。


 道すがら、リュークたちはぽつりぽつりと言葉を交わした。


 リーナがふと空を見上げ、微笑みながら呟く。


「……こんな静かな夜空、久しぶりかも」

「確かにな。戦いばかりだったからな」


 ガルドが肩を回しつつ苦笑し、ザックも無言で星空を仰いだ。

 リュークは、隣を歩くシャドウファングの頭をそっと撫でながら、小さく呟く。


「……生き延びたんだな、俺たち。」


 その言葉に、誰も応えはしなかった。


 だが、それぞれの胸には、確かな達成感と、これからへの覚悟が宿っていた。

 淡い星明かりに照らされながら、彼らは静かに歩を進めた。


 その背後、森の暗闇。


 倒れたリーダーの手から、ひとつの小さな青白い水晶が、ぽとりと転がり落ちていた。


 夜露に濡れた土の上で、それはかすかに脈動しながら、淡く青い光を放っている。


 ──その光を、高所から見下ろすように、

 木々の影が“ゆらり”と揺れた。


 誰もいないはずの枝の上に、微かな気配。

 気配だけを残し、黒い影が、枝から枝へと音もなく跳ぶ。


「……深淵の眷属に……続き……」


 かすれた声が、微風に溶ける。


「……あいつらも、“打たれた”か。」


 その声の主は姿を見せないまま、闇に紛れて消えていった――。


 次回:盗賊討伐の報告と新たな力

 予告:力の活用と薬草採取

読んでいただき、本当にありがとうございます。

皆さまからのご感想や応援が、何よりの励みになっています。


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今後の執筆の大きな支えになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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