表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/123

第42話 新たな力、失われていた感覚

 リュークは静かに宿の扉を開け、夜の街へと足を踏み出した。


 ひんやりとした空気が頬を撫で、月明かりが石畳の上に淡い影を落としている。

(この手に宿った力……試さずにはいられない)


 深く息を吸い、リュークはそっと手のひらを見つめた。

 隣に寄り添うシャドウファングに目を向け、静かに声をかける。


「行くぞ、シャドウファング」


 黒き獣は、まるで言葉を理解しているかのように一度だけ頷き、リュークと並んで歩き出す。


 二人は静けさに包まれた街を抜け、やがて街外れの訓練場へとたどり着いた。


 誰もいない訓練場には、冒険者たちが残した木製の標的や藁人形が並び、夜露に濡れて重く沈んでいる。


 リュークは短剣を抜き、静かに藁人形の前に立った。

(剣術の記憶――)


 自然と体勢が低くなり、短剣を握る手にじわりと力が宿る。

 刃の重みと冷たさが、なぜか“懐かしい感覚”として掌に伝わってきた。


 次の瞬間、身体は迷いなく動いていた。


「はっ!」


 踏み込みと同時に、筋肉がバキッと軋みをあげ、短剣が空気を裂くように放たれる。


 ザシュッ――! 鋭い斬撃が藁人形の首元をえぐり取る。

 手応えと共に、首がゴロリと音を立てて地面に転がった。


「……すごい」


 思わず漏れた言葉は、驚きと実感に満ちていた。


 技術ではなく、本能のように体が“動いた”。その感覚は、紛れもなく新たに得た力の証だった。


 次に、リュークは短剣を収め、ゆっくりと掌を見つめる。

(魔術の記憶も……)


 目を閉じ、呼吸を整えた。

 意識を研ぎ澄ませると、かすかな魔力の流れが指先に集まっていくのを感じる。


「……ライト」


 呟いた瞬間、指先から微かな音を立てて**ピシュッ……**と魔力が放たれ、小さな光の球が生まれる。


 ふわりと宙に浮かび、淡い輝きが闇を和らげながら、静かな訓練場を優しく照らした。


「これが……俺の力か」


 リュークは、手の中に浮かぶ光の球を見つめながら、言葉にできない感情が胸いっぱいに広がっていくのを感じていた。


 驚き、戸惑い、そして――確かな喜びと、込み上げる決意。


 静かに息を吐き、彼は微笑んだ。隣に寄り添うシャドウファングへと目をやる。


 黒き獣は変わらず静かにそばに立ち、まるで「共に進もう」と語るように尾を一度だけ揺らした。


 リュークは、手のひらを再び見つめながら呟いた。

 その目には、確かな覚悟の光が宿っていた。


「リューク?」


 不意に、聞き慣れた声が背後から届く。

 振り返ると、月明かりに照らされて――ガルド、リーナ、ザックの三人が立っていた。


「こんな夜更けに何をしてる?」


 ガルドが腕を組みながら歩み寄ってくる。


「……少し、力を試してみたくてな」


 リュークは短剣を軽く握り直した。柄に伝わる冷たさが、妙に馴染んで感じられる。


 ガルドはリュークの表情を一瞥し、何かを察したように無言で木剣を手に取る。


 リーナはいつの間にか魔法陣を描く準備を始め、ザックは気配すら消してすでに動き出していた。


「ならば、俺たちが手伝ってやる。何か掴めたんだろ?」


 ガルドが剣を肩に担ぎ、口元に豪快な笑みを浮かべる。

 リュークは小さく頷いた。


「頼むよ、ガルドさん」

「手加減はしねえぞ!」


 ガルドの踏み込みは速かった。


 **ズンッ!**と地を打つ重い音と共に、一気に距離を詰めてくる。


 リュークは反射的に体を反らし、ぎりぎりで回避――だがその直後、


 **ビュッ!**と風圧が頬を裂き、薄く血がにじむ。


「まだ動きが硬い!」


 ガルドの声が、まるで雷鳴のように響いた。

 間髪入れずに追撃。


 リュークは短剣を振り上げて受け流すが――


 ガギィン! 


 硬質な衝撃音と共に、刃が弾かれる。

 リュークの体が吹き飛び、**ズザァッ!**と地面を滑る。


「リューク、今の動きじゃ遅いわ!」


 リーナの警告が飛んだ。


「なら……これならどうだ!」


 リュークは歯を食いしばり、魔力を一気に練り上げる。

 手のひらに眩い光が凝縮され、


「――ライトッ!」


 パァァッ!!


 閃光が闇を切り裂き、ガルドの視界を一瞬で奪う。



 リュークはその隙に、足音を殺して懐へと踏み込む――だが、

「甘い!」


 目を細めながら気配を読み取ったガルドが、木剣の腹で迎撃。

 **ゴッ!**と鈍い音と共に、リュークの腹部に衝撃が突き刺さる。


 そのまま**ドサッ……!**と地面へ転がり、息を切らすリューク。

 ガルドは、ふぅと息を吐き、ゆっくりと剣を下ろした。


「確かに動きは良くなった。だが、まだ力を引き出しきれてねえな」


 ガルドが木剣を肩に担ぎながら言い放つ。


 リーナがそっと手を差し伸べ、苦笑混じりに言った。


「無茶するわね。だけど、悪くなかったわよ」



 ザックはいつの間にか背後に現れ、低く呟く。

「もっと敵の動きを読め」


 リュークは差し出された手を取りながら立ち上がり、拳を強く握りしめた。

(もっと強くならなければ……)


 その瞳に宿る決意は、揺らがない。


「もう一度頼む、ガルドさん!」


 その言葉に、ガルドは満足げに口角を上げ、再び木剣を構え直した。


「いいぜ。来い!」


 夜の冷気が張り詰める中、再び稽古が始まる。


 リュークは短剣を握り直し、前方のガルドを鋭く睨みつけた。

 先ほどの一撃で体はまだ痺れ、足元もふらついている。


 それでも――退く気はなかった。


「次は本気でいくぞ!」


 ガルドが**ズンッ!**と地を蹴る。

 足音が訓練場に響き、重厚な質量が迫る。


「っ――!」


 リュークは咄嗟に横へ**ズサッ!**と転がり、ギリギリで振り下ろされた剣の一撃をかわす。


 しかし、直後に飛び込んできた声が響く。


「逃がさねえ!」


 ガルドの木剣が**ブォンッ!**と風を裂きながら追撃。


 リュークは短剣を突き出し、受け止める。


 ガギン――ッ!


 金属と木が激しくぶつかる音が辺りに響く。

 剣圧が骨を伝い、腕にビリビリ……ッと痺れが走る。


 その重みに、リュークは思わず歯を食いしばった。


「考えろ、リューク!」


 ガルドの怒声が頭に響き渡る。


「力で押し切れないなら――どうする!」


 リュークは乱れる呼吸を抑えながら、懸命に隙を探した。

(勝てない……なら、違う手を打つしかない!)


 瞬時に、足元に転がる小石へと視線が走る。


 **カッ!**と反射的に蹴り上げた石が、**シュッ――!**と音を立てて宙を裂き、ガルドの顔面めがけて飛ぶ。


「っ!? おおっ……!」


 わずかな隙。リュークは**ズッ――!と地を蹴り、迷わず懐へ飛び込んだ。


 逆手に構えた短剣でガルドの木剣をガギッ!と弾き、その勢いのまま空いた手で再び小石をシュッ!**と放る。


「なっ……!」


 石が**ビュッ!**と顔面へ迫り、ガルドが一瞬だけ動きを止めた――その瞬間。

「はっ!」


 リュークは渾身の力を込め、短剣の切っ先を**ギリッ……**と喉元へ突きつけた。

 空気が止まり、静寂が辺りを支配する。


「……やった!」


 リュークは肩で息をしながら短剣を下ろす。

 ガルドは一瞬驚いた顔を見せたが、次第に口元を綻ばせた。


「やるじゃねぇか……ちったぁ成長したみたいだな」


 リュークはその場に**ドサッ……**と膝をつき、荒く息を吐き出す。

 張り詰めていた空気が、少しだけほどけた。


「でも、まだ……足りない。もっと速く、もっと強くならないと……」


 声は震えていたが、決して弱さではなく、燃えるような悔しさが滲んでいた。


 その時、リーナが駆け寄り、そっと彼の腕を支えた。


「無茶ばっかり……でも、さっきの動き、良かったわよ」


 その優しい声に、リュークはふっと笑みを浮かべる。

 力強さと温かさの混じる眼差しで、彼女に頷いた。


 続いて、ザックが木陰から現れ、低く言葉を落とす。


「敵の動きを読む。それが、お前の戦い方に合ってるな」


 リュークは仲間たちの言葉を、ゆっくりと胸に刻んだ。


 力では敵わない相手を、知恵と工夫で切り抜けた――

 その手応えが、まだ火照る体の奥に、確かに残っていた。


(俺は……必ず強くなる。今度こそ、守るために)


 ガルドは剣を肩に担ぎ、にやりと笑った。


「もう一度やるか?」


 リュークは短剣を握り直し、深く頷いた。

 その瞳には、もう迷いはなかった。


「お願いします!」


 夜の訓練場に、剣戟の音が再び響き渡った。



 次回:封印術の真意と必要条件

 予告:古文書に刻まれた封印術。鍵は“魔物核”と“覚悟”


読んでいただき、本当にありがとうございます。

皆さまからのご感想や応援が、何よりの励みになっています。


もしよろしければ、「評価」や「感想」など、お気軽に残していただけると嬉しいです。


今後の執筆の大きな支えになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ