表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/123

第41話 回想:都市アストラルム

 遥か宇宙の果て、量子重力の波がゆるやかに交錯する領域。


 そこに浮かぶ一つの青白い星。その軌道上、数千もの観測衛星が静かに回転していた。


 惑星の表面に刻まれた構造体は、自然の地形とは明らかに異なる幾何学を描き、巨大な螺旋の中心には、一つの光点が鼓動している。


 それが《アストラルム》だった。


 昼夜の区別すら無意味となったこの世界で、その都市は“外界の太陽”に頼らず、自らを輝かせていた。


 都市の輪郭は光の繭に包まれ、呼吸するように脈打つ粒子が空へと放たれている。


 やがて視点は降下する。大気を抜け、雲をすり抜け、建築群の間へと滑り込み……


 都市の構造そのものが生きているかのような、音もなく滑らかな“始まり”に触れる。


 人々は、朝の光に目を覚まし、けれどそれは“太陽”の昇りではない。

 アストラルムの都市は、建物そのものが呼吸するように目覚める。


 寝室の天井がゆっくりと透け、淡い光が波紋のように差し込む。


 その光は、住人の体内時計と呼吸のリズムに合わせて調整され、目覚まし時計のような“外部刺激”に頼る必要はない。

 部屋の壁は、思考に応じて形を変える。


 読書を望めば、壁が滑らかに本棚を形成し、座り心地の良い椅子が床から生える。


 寒さを感じれば温かな風が、暑ければ肌に優しい冷気が空間に満ちる。


 住居は“機械”ではなかった。意思を持つわけでもないが、住人の生理と心理を正確に読み取り、最適な状態を作り出す──それが“家”だった。


 街の広場に出れば、人々は歩くというより“浮かぶ”ように移動していた。


 重力を制御する磁場板が足元に張り巡らされており、歩く意志に合わせてわずかに浮遊し、疲れも騒音も伴わない。


 遠方へは“跳躍環”と呼ばれる転送ゲートがあり、一歩踏み出すだけで、反対の街区へ到達できる。


 道路や信号は存在せず、“移動”に関する事故や混雑という概念は、遥か昔に廃れていた。


 食事の時間になると、人々は“調和台”と呼ばれる装置の前に座る。


 そこにはレシピも調理器具もない。ただ、体調・心の状態・嗜好を読み取ったデータに基づいて、自動的に栄養価・味覚設計・香りを計算し、


 分子レベルで組み上げられた“完全な一皿”が出現する。


 料理は記憶の再現でもあった。子供の頃に母が作ったスープ、旅先で出会った味。望めば、

 それらも寸分違わず現れる。

 だが、誰もがこうした“機能”に頼るわけではなかった。


 街には手作業で焼くパン屋があり、果実を育てる農園があり、刺繍や陶器に時間を注ぐ職人たちがいた。


 彼らは“効率”ではなく“存在理由”として、それらの営みを続けていた。

 便利であることと、丁寧であることは、両立できるのだと。


 治療は、病になる前に施されていた。

 各人の健康状態は都市システムにより常時記録・調整され、

 微細な異変も“感覚刺激”や“音の共振”によって先回り的に整えられる。


 それでも重篤な症状が起きたときは、再構成カプセルによって組織レベルから修復される治療が施され、痛みも傷も過去のものとなっていた。


 子供たちは、教科書ではなく“体験記憶”で学ぶ。

 教育機関では、模擬空間に投影された歴史の瞬間や科学の法則に、直接触れて学ぶことができた。


“見る”のではない、“感じる”ことで知識は深く刻まれた。

 思考力・創造力が何より重視され、“正解”は与えられない。


 だから、子どもたちは皆、生き生きとしていた。


 そして夜になると、街の中心では文化の灯がともる。


 音楽、舞踏、詩の朗読、光と音の共演。

 即興で結成された演奏会や、過去の記憶から再生された舞台が投影され、誰もがそれを囲んで語らい、笑った。


 娯楽は“享受”するものではなく、“共に創るもの”だった。


 アストラルムの人々は、誰も競い合わなかった。

 優劣や貧富の差は意味をなさず、ただ“どう生きるか”を語り合う時間が尊ばれた。


 日々の暮らしが、記録されるに値する芸術だったのだ。


 この都市は、静かに、誇らしげに、そして何より美しく“在った”。


 それが、アストラルム。


 過去の伝承として語られる、理想に限りなく近づいた文明都市の姿である——。



 次回:新たな力、失われていた感覚

 予告:仲間との模擬戦、蘇る体の記憶。そして、新たな決意。


読んでいただき、本当にありがとうございます。

皆さまからのご感想や応援が、何よりの励みになっています。


もしよろしければ、「評価」や「感想」など、お気軽に残していただけると嬉しいです。


今後の執筆の大きな支えになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ