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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第2章

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第31話 力を求める対話――仲間と世界の輪郭

 ◆報酬の分配

 一通り反省を終えたところで、ザックが椅子に寄りかかりながら話題を切り替える。


「さて、今回の報酬だけど……どう分ける?」


 リーナがギルドから受け取った袋をテーブルの中央に置いた。

 チャリン、と小さな金属音が響く。


「金貨小17枚、銀貨小46枚。それに加えて、戦利品として金貨小15枚、銀貨大3枚、装飾品と武具、そして……」


 リュークはそっとスキルクリスタルを取り出し、テーブルに置いた。

 淡い光が周囲をぼんやりと照らす。


 リュークはその輝きを見つめながら、心の中で葛藤していた。


(このスキルクリスタルがあれば……成長の足掛かりになるかもしれない。でも、それを独り占めするのは違う)


 沈黙が一瞬だけ漂った後、ガルドが腕を組み直し、静かに言う。


「俺は装備品の方をもらうつもりだが……」


 鋭い目をリュークに向けながら続けた。


「リューク、お前は……スキルクリスタルが欲しいんだったな?」


 リュークは、言葉を慎重に選びながら口を開いた。


「ああ、スキルクリスタルが欲しい。俺の成長に必要だと思う。

 ただ、それがみんなにとって納得できるかどうか……ちゃんと話し合いたい」


 リーナが静かに視線を向け、指先でグラスをなぞる。


「クリスタルね……換金すれば最低でも金貨小二十枚にはなる。でも、スキル開放に使うのも十分価値があるわ」


 少し間を置いて、彼女は柔らかく頷いた。


「リュークとまたパーティーを組んで討伐に行く可能性もあるし……シャドウファングもいる。もし、あんたがこれで強くなるなら――それも悪くないと思う」


 ザックも椅子に肘をかけたまま、軽くあごをしゃくった。


「確かにリュークはまだ伸びそうだしな。必要なら優先していい。ただし……金貨の分は減らしてもらうぞ」


「もちろん」


 リュークは即座に頷いた。その反応に、ガルドが大きく頷きながら笑う。


「悪くない判断だ。金貨より力を得たほうが、長い目で見りゃこっちも助かる」

「それで構わない。短剣も俺がもらってるしな……」


 こうして、スキルクリスタルはリュークが受け取り、金貨と装備品はガルド、ザック、リーナで均等に分配。

 残った銀貨、数十枚だけをリュークが受け取ることで話がまとまった。


「よし、これで決まりだな」


 ガルドが杯を掲げる。


 リュークは姿勢を正し、深く頭を下げた。


「ありがとうございます。……また、ぜひ一緒に討伐に行かせてください」

「気にすんな。むしろ、また頼りにしてるぜ」


 ザックがニッと笑い、ジョッキを軽く掲げた。


「それじゃあ、改めて……乾杯!」


 声と共に、ジョッキ同士が心地よくぶつかり合う音が響いた。



 一息ついた空気の中、リュークがふと口を開いた。


「冒険者のこと、あまり知らないんだ。仕組みとか、道具の売買とか……もし良かったら、少し教えてもらえないか?」


 ザックが思わず目を丸くする。


「なんだよ、今さらか?」


「……まあ、色々あってさ」


 リュークが苦笑交じりに答えると、ガルドが笑いながら杯をあおる。


「いいだろう。教えてやるよ」


 そう言って、彼は重々しい調子で話し始めた。


「まず冒険者ギルドってのは、ただの依頼所じゃねぇ。登録してれば“信用”がつくんだ。たとえば、道具屋で割引が利いたり、信用取引で装備を借りられたりする」


 リーナがその言葉を受け継ぐように続ける――


「あと、冒険者は基本的に物資を自分で調達するの。武器や防具、回復薬、食料なんかもね。だから、遠征の前には必ず市場で買い出しをすること。これは基本中の基本よ」


 リーナが軽く指を立てて言う。


「市場か……」


 リュークは初めて聞く単語のように呟き、視線を伏せた。


「ベルハイムには大きな交易市場があるの。そこでは珍しい魔道具や貴重な素材なんかも手に入るわ。ただし、値段もそれなり。資金はしっかり準備しておかないとね」


 リュークは頷いた。


「なるほど……この世界で生きていくなら、そういう知識も必要だな」

「当たり前だ。いつまでも俺たちに頼ってるわけにはいかないぞ」


 ザックが笑いながら、肘でリュークの肩を軽く突いた。

 その言葉に、リュークは小さく苦笑しながらも、胸の奥にじんと染み入るものを感じていた。


(この世界で生き抜くには、もっと学ばないといけない……)



「そうだ。スキルクリスタルについても少し教えてくれ」


 リュークの問いに、ガルドが真顔で頷いた。


「スキルクリスタルってのはな……特定のスキルを習得するための、魔力を帯びた希少な結晶だ。戦士でも魔法使いでも、適性さえあれば強力な技を手に入れられる」


 彼はジョッキを置き、手振りを交えて続けた。


「ただし、クリスタルにはランクがあってな。高ランクになればなるほど希少で、効果も強力になる。だが、そのぶん使いこなすにはそれ相応の魔力や身体の耐性が必要になる」


「そう。共鳴できなければ、最悪、意識を失ったり魔力を暴走させる危険もあるわ」


 リーナが真剣な表情で言葉を重ねる。


「使い方自体は単純なの。魔力を結晶に流して、共鳴させる。それでスキルが定着するわ。でも、適性がないと……」


「弾かれて終わりだな」


 ザックが淡々と補足する。


 リュークはそっと、自分のポーチに入れたままのスキルクリスタルを握った。

 淡い光が、手の中でぬるく脈打つように感じられる。


「リュークが持ってるのは“通常のスキルクリスタル”。それでも価値は高いし、正しく使えば確実に力になる」

「だが、“高ランクのスキルクリスタル”となると話は別だ」


 ガルドが声を低める。


「そいつはダンジョンの最深部や、強力な魔獣の核からしか得られない代物だ。市場にはまず出回らねぇし、手に入れるには命を賭ける覚悟がいる」


 リーナが腕を組み、静かに言う。


「それこそ、王族や大貴族クラスの後ろ盾がなければ入手できない。金貨を積めばどうにかなるってものじゃないの」


「でも……それほどの力が眠ってるってことか」


 リュークは呟いた。


「そういうことだな。だから、お前が持ってるその結晶――大事に扱えよ」


 ザックが軽く肩を叩いた。


「そうだぜ、普通は簡単には、手に入らない」


 リュークは頷き、手の中のクリスタルをそっと握りしめた。


(これが俺を導く鍵になるなら……必ず、使いこなしてみせる)


「金貨を積んでも、手に入らないか」


 リュークは驚きを覚えつつも、それを表情には出さず、静かに呟いた。


(俺が最初に使ったクリスタル……あれは、貴重なものだったのか)


「それほど貴重なものってことか」


「そういうことだな。見つけたら、運が良かったと思っておけ」


 リーナが穏やかに微笑む。

 その隣で、ガルドが豪快にジョッキを煽り、喉を鳴らすように酒を飲み干した。


「まあ、細けぇことはいいんだよ! 強くなりゃあ、なんとかなる!」


「……相変わらず、雑ね」


 リーナは苦笑交じりに言いながらも、その声色にはどこか安心したような柔らかさがあった。


 リュークは苦笑しつつ、水の入った杯に目を落とす。

 ギルドの喧騒が、まるで別世界のように遠くに聞こえていた。


 隣のテーブルでは、別の冒険者たちが戦果を讃え、笑い声を上げている。


(……こうして普通に笑える時間なんて、いったい何年ぶりだろう)


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


 そのとき、リーナが懐から小さな黒い結晶体を取り出した。

 手のひらにのせられたそれは、微かに輝きを放っていた。


「それと……これ、“魔物核”って呼ばれているものよ」


「魔物核?」


「強い魔物や、特別な個体には稀にこうした“核”が宿るの。魔力の凝縮体で、魔物の中心に近い部分にできることが多いわ」


 リュークはその黒い結晶に視線を落とした。

 中に浮かぶ赤い筋が、脈を打つように明滅している。まるで、いまだ生きているかのように。


「こんなものが、魔物の中に……?」


「ええ。でもすべての魔物が持ってるわけじゃないの。ある程度の自我があったり、特殊な能力を備えた個体にしか現れない傾向があるわ」


 リーナの言葉に、ガルドが頷きながら続けた。


「未解明な部分も多いが、どうやら記憶とか進化の契機に関係してるらしい。ま、ロマンの塊ってやつだ」


「それだけ価値があるってことか」


「そういうこった。見つけたら当たりだな」


 ガルドが笑い、リーナもそっと笑みを返した。


 リュークは無言で、魔物核の黒い輝きをじっと見つめていた。

 その視線の奥には、言葉にできない思索の影が揺れていた。


 足元では、シャドウファングが静かに寄り添い、鼻先でリュークの膝を軽く突いた。


「……ありがとな、シャドウファング」


 リュークは自然と笑みを浮かべ、そっと黒狼の頭を撫でた。

 その手のひらに伝わる温もりが、確かに“ここにいる”という現実を教えてくれた。


 4人と一匹は、静かにジョッキを掲げ、充実した一日の終わりを祝った。



 次回: スキルの記憶と、少女の断片

 予告:夢の中、誰かが呼んでいる。――それは記憶か、未来か。

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