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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第2章

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第24話 ゴブリンの巣を追え!

 リュークたちは、縛り上げたゴブリンを警戒しながら、周囲の痕跡を探り始めた。


 リュークは、縄で縛られたゴブリンをじっと見下ろす。


 小柄な体躯、黄緑色の肌、ぎょろついた赤い目。

 低く唸りながら必死にもがくその姿は、まるで理性を持たない獣のようだった。


 しかし――その時だった。


「……ギィ、ガシャ、ガル……ギィィ……!」


 ゴブリンは、どこか苦しげに、何かを訴えるような声で鳴き始めた。

 その音には、ただの唸りとは異なる、“連なり”があった。


「今……仲間の名前みたいな言葉を言ったか?」


 リュークは目を細め、耳を澄ませる。

 ゴブリンはなおも縄をギリギリと締め上げ、身体をひねっては、何かを探すように空を見上げる。


 そして、巣があると思しき方向へ――必死に体を伸ばしていた。

 その様子は単なる抵抗ではなく、“戻ろう”としている意志が感じられた。


「こいつ……仲間の元へ戻ろうとしてるな」


 リュークは、確信を帯びた声で呟く。


「まさか、呼んでるのか?」


 ザックが眉をひそめた。


「いや、呼ぶというより……恐れてる」


 リュークは静かに、ゴブリンのわずかに震える肩を指差す。


「――巣の奥に、もっとヤバい奴がいるんだろう」


 その言葉に、一同の空気が張り詰めた。


「ボス……か」


 ガルドが低く呟き、リーナも静かに頷く。


「この群れのリーダー。だからこそ、このゴブリンは戻ろうとしてる。

 仲間に助けを求めるためか、それとも……あの存在を恐れているのか」


 リュークは、縄に手を添え、少しだけ引きながら口を開く。


「……こいつは“鍵”になる。無理に殺すより、巣の場所を突き止める手がかりとして利用した方がいい」


 その提案に、ガルドが目を細め、リーナも息を呑む。


「確かに……このまま連れていけば、巣へ戻ろうとする本能で、進むべき方向が見えてくるかもしれないな」


 リュークは頷き、わずかに目線を先へ向けた。


「それに……こいつの怯え方を見る限り、奥には厄介なのが控えている。」


「状況を慎重に探るためにも、無闇に殺すのは得策じゃない」


 ザックが軽く肩をすくめた。


「……なるほどな。勝手に案内してくれるなら、楽なもんだ」


 そう皮肉めいた言葉を返しつつも、その表情には軽さはなかった。


 仲間たちの目にも、冗談を交わせる余裕はない。

 縄を引かれたゴブリンは、時折ギリギリと縄に逆らいながらも、本能的に巣の方角へと進もうとしていた。


 抵抗しつつも、足取りは一定の方向を向いている。


(……間違いない。このゴブリンの動きが、巣の在り処を示している)


 リュークは確信を深めると、すぐに足元へと意識を移す。

 踏みならされた痕跡、獣の爪痕、引きずったような線――

 小枝が折れて「パキリ」と乾いた音を立て、かすかな土のめくれが視界に入った。


 リュークはしゃがみこみ、指先でその痕跡をなぞる。

 わずかに湿った土の感触が、指の腹にざらりと残る。


「……こっちだ」


 声を低く、確信を込めて告げる。

 ガルドは腕を組み、真剣なまなざしで森の奥を見据えた。


「やはり……このまま巣まで突き止めるのが一番確実か」


 リーナも頷き、穏やかだが引き締まった声で言った。


「ええ。このまま見過ごすわけにはいかないわ」


 こうして一行は、縄に引かれたゴブリンの動きと、地面に残る痕跡を頼りに、慎重に森の奥へと進み始めた。


 ざわめく草木、頭上をかすめる鳥の羽ばたき。

 枝葉が風に揺れ、「サラサラ」と小さく鳴るたびに、空気が変わっていくのを誰もが感じ取っていた。


 ――この先に、奴らの拠点がある。


 リュークは無言で短剣を握り直し、気を引き締めた。


 ◆ゴブリンの巣、森の奥の危険

 リュークたちは、ゴブリンの足跡と、生け捕りにしたゴブリンを頼りに、慎重に森の奥へと進んでいった。


 木々が密集し、頭上からの陽光をほとんど遮る暗い森。

 踏みしめるたび、ザクッ、ザザッと落ち葉が湿った音を立て、静寂の中にかすかな音が散る。


「……思ったよりも深い森だな」


 ザックが低く呟き、周囲を警戒する。


「そうね。巣があるなら、この奥に違いないわ」


 リーナも、油断なく視線を走らせる。


 リュークは足元の痕跡に注意を向け、慎重に歩を進めた。

 土の上に刻まれた足跡は新しく、明らかに最近通ったばかりのものだった。


 ふと、木の根元に散らばる白く乾いた骨が目に留まる。

 小動物のものだろう。食い千切られた痕が生々しく残っていた。


「……ここを狩場にしてるな」


 リュークが静かに呟く。


「狩った獲物を巣に持ち帰ってるってことか」


 ガルドが低く答え、地面に視線を落とした。


「なら、巣はそう遠くないな」


 ザックが簡易地図を取り出し、手早く地形を確認する。


 その時――

 リュークの手に繋がれた縄が、ピンッと張った。


 縄の先のゴブリンが、急に足を踏ん張って、崖の方へ戻ろうと必死に身体を伸ばしている。

 瞳には、明確な恐怖と、本能に突き動かされるような焦りが宿っていた。


「……こいつ、分かってる。巣はこの先だ」


 リュークが低く呟く。

 リーナも緊張を込めて頷いた。


「ここまでくれば、もう十分ね……」


 その言葉に、ザックは静かに腰の短剣を抜いた。

 金属がキィンと澄んだ音を立てて鞘を離れる。

 縄を引き寄せながら、無防備に怯えるゴブリンに目を向け、静かに言葉を落とす。


「悪いな。もう十分だ」


 リュークはゴブリンの目を見つめた。

 その目は、どこか理解を示しつつも、強い恐怖に揺れていた。


 ふと、心の中に微かな躊躇が生まれる。


(……利用するだけ利用して、最後は切り捨てる。

 それが、この世界で“生きる”ってことなのか)


 だが、次の瞬間、リュークは迷いを断ち切った。

 仲間の命が懸かっている。


 この先の巣で、より危険な存在と戦わねばならない。


(——割り切れ。甘さは、死に繋がる)


 ズブッ!


 ザックの躊躇のない一突きが、ゴブリンの喉元を貫いた。


 ゴブリンは短く息を詰まらせ、喉を震わせて泡を吹き、**ゴスン……**と力なく崩れ落ちた。

 ザックは無言で短剣を引き抜き、ピシャッと血を払う。


「……これ以上、騒がれるわけにはいかない」


 静まり返った森の中に、ただ冷たい緊張だけが残る。


 リュークは僅かに目を伏せ、そして無表情で前を向いた。

(余計な感情は不要だ……今は、戦うだけだ)


「よし……行くぞ」


 低く、決然とした声が、静かな森に凛と響いた。

 ガルドの一言に、全員が息を詰めて頷く。


 ◆——巣の発見

 やがて、リュークたちは鬱蒼とした森の奥、

 ぽっかりと口を開けた崖下の洞窟へとたどり着いた。


「ここがゴブリンの巣……」


 リュークが低く呟くと、全員の表情が引き締まった。


 洞窟の周囲には、折れた武器や砕けた骨が無造作に散らばっている。

 中には、血の染み込んだ人間の布切れが風に揺れていた。


「……やっぱり、最近誰かが襲われたんだわ」


 リーナが険しい表情で布を見つめた。


「まだ生きてる奴がいるかもしれない」


 ザックが剣の柄に手をかけ、目を細める。


 リュークはしゃがみこみ、静かに地面に身を伏せた。

 洞窟の入り口に目を凝らし、しばらく耳を澄ます。


 すると——


「グルル……ギギ……」


 くぐもった低いうなり声が、洞窟の奥から微かに響いてくる。


「……間違いないな」


 リュークは囁くように言い、地面に残る足跡を素早く読み取った。

 数は、少なく見積もっても五体以上。

 奥には、まだ潜んでいる気配が濃厚だ。


「正面から突っ込むのは危険だな……どうする?」


 ガルドが小声で問いかける。


 リュークは短く息を吐き、眉をわずかに寄せて考え込んだ。

 無策で飛び込めば、確実に袋叩きに遭う。


「……いくつか手を打とう」


 ◆作戦会議

 リュークたちは、洞窟から少し離れた場所に身を寄せ、低く声を落として作戦会議を開いた。


「まず、ゴブリンの動きを制限する必要がある」


 リュークが冷静に口を開く。


「この森の地形を使って、こちらが有利な状況を作りたい」

「例えば?」


 ザックが警戒した様子で問いかける。

 リュークはしゃがみ込み、地面に小枝で簡単な図を素早く描いた。


「洞窟の入り口は狭い。ここに罠を仕掛ける。


 足を取るトラップ、逃げ道を塞ぐ障害物。

 あらかじめ封じておけば、正面からの突撃を限定できる」


「いいわね。それなら、私は魔法で後方支援する」


 リーナが即座に頷き、手を胸元に添える。


「俺は正面からぶつかる。リュークの指示に従うぜ」


 ガルドが腕を鳴らしながら、力強く応じた。


「俺も、全力でいく」


 ザックも剣の柄を握り直し、気合を込めるように頷いた。

 リュークは、隣に控えるシャドウファングに視線を向ける。


「お前は俺と一緒に裏から奇襲する。できるか?」


 黒狼は低く唸り、鋭い眼光で応える。

 その気配だけで、リュークには十分すぎる返答だった。


「よし、それじゃあ……準備開始だ!」


 仲間たちは無言で頷き合い、それぞれの持ち場へと素早く動き始めた。


 次回: 仲間未満の絆と準備

 予告: 罠と信頼を武器に

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