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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第2章

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第18話 ベルハイムへの道と盗賊の脅威!

 森を抜けた瞬間、視界がひらけた。

 リュークとシャドウファングは、商業都市ベルハイムへと続く広い街道へ足を踏み入れる。


 しばらくは平坦な道が続いていたが、やがて小高い丘を越えたとき——

 遠くの地平線に、灰色の城壁がどっしりと姿を現した。


「……やっと、ベルハイムが見えたな」


 リュークは思わず息を吐いた。

 そのひと呼吸だけで、肩にまとわりついていた重圧がふっと軽くなる。


 隣を歩く黒狼に目をやる。

 シャドウファングは耳をぴんと立て、ただ前だけをまっすぐに見据えていた。


「街は初めてだろ……お前は」


 リュークは小さく呟き、そっと首筋へ手を伸ばす。

 厚い毛並みの奥から伝わる体温は、意外なほど穏やかで柔らかい。

 黒狼は驚きもせず、その瞳で真っすぐリュークを見上げた。


 そこには、不思議な安心と、揺るぎない信頼の色が宿っていた。


(……こいつも、俺と一緒にここまで歩いてきたんだな)


 胸の内側がじわりと温まる。

 ただ隣に誰かがいる――それだけのことが、これほど心強いとは思わなかった。


 ベルハイムに着けば、魔物の素材を売って資金を得られる。

 スキル開放に必要な金貨だって、手が届くかもしれない。


 リュークは大きく息を吸い込み、肺の奥まで新しい空気を満たした。

 風の匂いが変わっていた。

 土と草の香りにまじり、石畳や人の暮らしを思わせる気配が、かすかに鼻先をかすめる。


「……もう少しだな、シャドウファング」


 黒狼は静かにリュークを見上げ、一度だけコクリと頷くように首を動かした。

 まるで言葉を理解したかのような仕草に、自然と口元がゆるむ。


 だが、その矢先だった。


「……ん?」


 リュークは足を止め、眉をひそめる。

 街道の先――道端に、人影がひとつ倒れ伏していた。


 乾いた風が襤褸の布をあおり、バサ……ッと不気味な音を立てる。

 旅人のようにも見えるが、身じろぎひとつしない。


「……大丈夫か?」


 リュークは警戒を解かぬまま、一歩、慎重に距離を詰めた。


 慎重に近づくと、男がうっすらと目を開ける。

 顔色は土のように青白く、汗で濡れた額は触れずとも冷たさが伝わってきそうだった。


「……お、お願いだ……助けてくれ……」


「どうした?」


 かすれた声にリュークが問い返すと、男は途切れ途切れに息を継ぎながら言葉をつなぐ。


「盗賊に……襲われたんだ……」


 その一言に、リュークの表情がきゅっと引き締まった。


「この近くに盗賊が?」


「……ああ……奴らは、旅人や商人を狙い……物資を奪っている……」


 言い終えると同時に、男の身体から力が抜ける。

 ズサッ……と乾いた音を立てて、再び地面へ崩れ落ちた。


(盗賊か……)


 ベルハイムへ続くこの街道は、商人の往来も多い。

 そこを荒らす盗賊がいるとなれば――見て見ぬふりはできない。


「シャドウファング、警戒しろ」


 黒狼が「グルル……」と低く唸り、鼻先をひくつかせて周囲の匂いを探る。

 リュークは倒れた男の容態を確認した。命に別状はなさそうだが、皮膚は冷え切り、呼吸も浅い。


「……応急処置だな」


 水筒を傾け、男の唇に少しずつ水を流し込む。

 喉が「ゴク……ゴクッ」と弱々しく動き、やがて頬にわずかな血の気が戻っていく。

 重たげなまぶたがゆっくりと開いた。


「……ありがとう……助かった……」


「無理に喋るな。休んでいろ」


 リュークは男を街道脇の木陰まで引きずり、布で傷口を押さえながら手早く止血する。

 にじむ血が布に広がり、その重さと熱が掌へじわりと伝わった。

 ほっと胸をなでおろしかけた――そのとき。


 林の奥から、乾いた枝の踏み割れる音。

 気配はひとつではない。


(……やはり、見られていたか)


 リュークは反射的に一歩下がり、シャドウファングへ目配せする。

 黒狼は即座に耳を鋭く立て、地を這うように身を低く構えた。


 そして――


「おい、そこの旅人! 荷物を置いていけ!」


 森の奥から、怒鳴り声が響いた。


 茂みを押し分けるようにガサッ! と枝が折れ、数人の影が街道へ姿を現す。

 粗末な革鎧に汚れた剣や棍棒を握った、三人組の盗賊だ。


(……やはり、いたか)


 リュークは素早く周囲を見渡す。

 街道のど真ん中で長くやり合えば、林の中から増援に挟まれる危険がある。位置取りが鍵になる。


「逆に、俺から聞こう。お前たち……旅人を襲う盗賊で間違いないな?」


 淡々とした問いに、盗賊たちは一瞬だけ足を止めた。

 その目には、苛立ちと警戒が入り混じっている。


「チッ、頭の回る奴は嫌いだ……! さっさと荷物を置いて消えろ!」


「悪いが、そうはいかない」


 リュークは静かに短剣を抜き放つ。

 隣でシャドウファングが牙を剥き、低く「グルル……」と喉を鳴らした。


「……狼だと? はっ、たかが獣一匹で虚勢を張るか!」


 怒声と共に、一人の盗賊が棍棒を振りかぶり、地を蹴って突進してくる。


(直線で突っ込む……愚直だな)


 リュークは冷静に体を沈め、滑るように横へ回避した。

 棍棒が「ブオン!」と唸りを上げて空を裂き、虚しく空を切る。


 同時に、リュークの足が「ガッ」と音を立てて盗賊の膝裏を蹴り払った。


「ぐっ……!?」


 体勢を崩した盗賊に、黒い影が弾丸のように飛ぶ。

 ガブッ! と鋭い牙が腕へ突き立ち、肉が裂ける生々しい音と共に悲鳴が空気を震わせた。


「ぎゃあああっ!!」


 地に転がる盗賊の絶叫が響く。


「次は……俺だ」


 リュークはすでに二人目へ踏み込んでいた。

 短剣の刃は振るわず、あえて柄を強く握り込む。

 そして、全身の力を込めて顎を**ゴリッ!**と打ち上げた。


「ぐっ……!!」


 鈍い衝撃と共に、盗賊の首がのけぞり、目が白く揺らぐ。

 膝が折れ、その体は崩れ落ちるように地面へ沈んでいった。


「……残るは、あと一人」


 リュークの声は静かだが、その瞳には鋭い光が宿っていた。


 残った盗賊は、膝を震わせながら後ずさった。

 瞳には恐怖が宿り、もはや戦意のかけらもない。


「くっ……覚えてろッ!」


 怒鳴るように叫ぶと、枝を踏み砕き、茂みの奥へと無様に駆け込んでいった。


(まだ仲間が潜んでいる可能性が高いな)


 リュークは油断せず、街道と森の両方へと鋭く視線を走らせる。


「シャドウファング、追うぞ。……だがその前に、片付けておくことがある」


 倒れ込んだ二人の盗賊を木の根元まで引きずり、素早く縄で縛りつけた。

 縄が**ギリギリ……**と食い込む音を立て、盗賊の腕と足を幹にしっかり固定する。


「これで逃げ出せないはずだ」


 リュークは結び目を念入りに確認し、さらに二重に締め上げた。

 呻き声を上げる盗賊の顔に一瞥をくれると、淡々と呟く。


「あとはベルハイムの警備隊に突き出すだけだ」


 荷を整え、シャドウファングに目で合図を送る。黒狼は小さく「フッ」と鼻を鳴らし、森の奥へと視線を向けた。


「……行くぞ」


 二人と一匹は、逃げた盗賊の足跡を辿って森を進む。

 土に刻まれた深い靴跡、折れた枝、擦れた草。追跡は容易だった。


 やがて木々の合間に、粗末な板壁で囲まれた小屋のような建物が見えてくる。

 焚き火の煤が残る煙突、雑に積まれた木箱。


「盗賊のアジトか」


 リュークは茂みに身を潜め、息を整えながら周囲を観察する。

 数人の気配が中にいる。正面から突っ込めば、不意打ちを受けるのは自分の方だ。

(さて……どう動くべきか)

 彼の目が細く光を帯び、次の行動を冷静に思案していた。



 次回: 盗賊のアジトとベルハイムへの通報!

 予告: 盗賊の陰謀、証拠と共に都市へ。

読んでいただき、本当にありがとうございます!

読者の皆さまの評価や応援の言葉が、何よりの力になります。


質問です。

あなたなら、逃げた盗賊を追いますか?

都市の中に潜む“協力者”がいるとしたら……どう動きますか?


もしよろしければ、「評価」や「感想」など、お気軽に残していただけると嬉しいです。


今後も更新を続けていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いします!



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