表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/123

第16話 スキルクリスタルと共鳴の狼

 リュークがスキルクリスタルを握りしめると、結晶は眩い光を放った。

 同時に亀裂が走り、砕け散る寸前の輝きが全身を包み込む。


「――ッ!」


 体の奥底から灼けるような熱が溢れ、何かが外れた感覚に襲われた。

【蓄積された経験値を確認。レベルが3に上昇しました】


【リューク・サーガハート】

 レベル:3

 HP:90/90

 MP:30/30

 筋力:9

 敏捷性:10

 耐久力:9

 魔力:6

 スキル:メモリーバンク(開放条件未達成)

【記憶断片:未解析データ存在】

 開放条件:金貨小一枚


「……レベル……? 俺にも……あるのか……!」


 わずかな安堵の直後、脳内に鋭い衝撃が走った。


「ぐっ……!」


 視界が白く弾け、断片的な映像が洪水のように流れ込んでくる。

 ――燃え盛る戦場。

 ――鋼と鋼がぶつかる音。

 ――遠くで響く狼の咆哮。


 荒野を吹き荒れる風の中、リュークは短剣を構え、漆黒の騎士と対峙していた。

 鎧に覆われた巨躯が大剣を掲げる。その刃には濁流のような魔力がまとわりつき、重く空気を揺らす。


「フン……小僧。逃げるなら今のうちだ」


 低い声が、現実と幻の境界を震わせた。

 リュークの心臓が、恐怖と共鳴するように高鳴る。


【無限波動 - アストラル・ウェイブ】

 見えない波が広がり、空気そのものが震える。風の流れがわずかに乱れ、敵の筋肉の収縮や関節の動きが、脳内に鮮明なイメージとして浮かび上がる。


「……そこだ!」


 リュークは一瞬早く動いた。

 轟音とともに大剣が地面を抉る。だが、そこに彼の姿はない。


「チッ、小賢しい!」


 騎士が振り返る。すでにリュークは懐へ潜り込み、短剣を閃かせていた。

 空間が歪む。


 ◆瞬転の門 - エンタングル・リープ

 リュークの姿が煙のように揺らぎ、次の瞬間、騎士の背後に現れる。


「なにっ!?」


 鋭い金属音が響く。大剣がぎりぎりで攻撃を受け止めた。

 しかし、リュークはすでに次の一手を重ねている。


「……見切った」


 再び波動が拡がる。

 右上からの振り下ろし――その未来を予測し、回避と同時に再び転移。

 残像のように揺らぎ、次の瞬間、短剣は鎧の継ぎ目を穿った。


「ぐっ……これは……!」


 騎士の姿が霧のように溶け、景色そのものが崩れていく。

 リュークは頭を押さえた。脳裏に、断片的な映像が流れ込む。

 燃え盛る戦場。鋼の衝突音。遠くで響く狼の咆哮――。


(……今のは、俺の……記憶?)


 確かに刻まれた感覚がある。しかし、それは濃い霧に覆われ、形を結ばない。


 混乱の中で、無機質な言葉が残響のように蘇る。

【記憶断片:未解析データ存在】

【開放条件:金貨小一枚】


「レベル……経験値……俺は、何者なんだ」


 握りしめたクリスタルの残骸が、掌で冷たく崩れ落ちる。

 焚き火の向こう、黒狼が静かに眠っていた。

 リュークはその姿を見つめ、かすれた声で呟いた。


「……前に進むしかない、か」



 ◆シャドウファング

 森で出会った黒狼は、リュークを敵とせず――ただ隣に立ち、共に歩むことを選んだ。


(この狼……なぜだ、懐かしい気がする)


 胸の奥に奇妙な既視感が走った瞬間、リュークの脳裏にひとつの言葉が浮かぶ。


「テイム」


(……試す価値はある、か)


 彼はゆっくりと腰を下ろし、警戒を解かぬようにして黒狼へ手を差し伸べた。


「……お前、本当に俺と行くつもりがあるのか?」


 静寂。

 黒狼はじっとリュークを見返す。その瞳には、獣の本能を超えた理性の光が揺れていた。

 やがて――狼は前足を踏み出し、鼻先をそっとリュークの掌へ寄せる。

 視界に淡い光が浮かんだ。


 【黒狼をテイムしました 名前:シャドウファング】


「……成功、なのか」


 半ば信じられぬ思いで目を凝らすと、簡易ステータスが映し出される。


【シャドウファング】 属性:闇

 レベル:???

 スキル:???

 状態:リュークに忠誠を誓う(覚醒待機状態)


「……覚醒待機、だと?」


 意味は分からない。だが、今はただ――この存在が自分の傍にいるという事実が重かった。

 リュークはそっと黒狼の頭へ手を置き、口元に小さな笑みを浮かべる。


「……シャドウファング。お前の名前、か」


「これから頼むぞ――相棒」

 シャドウファングは短く鼻を鳴らし、静かに応えるように目を細めた。


 威嚇ではない。むしろ、静かな共鳴のように聞こえた。


(……やはり、不思議なやつだ)


 どこかで、この狼と共に歩いた記憶がある――そんな感覚だけが胸に残る。

 しかし、それがいつ、どこでなのかは思い出せない。

 リュークは焚き火の炎を見つめ、小さく息を吐いた。


「……今は考えても仕方ない」


 ベルハイムまで、まだ数日。

 新たな手掛かりを求めて、リュークは再び旅を続けるのだった。



 ◆夢の描写

 ——白

 果てのない白の空間。

 床も、天井も、壁すら存在せず、すべてが滲むように溶け合っていた。

 浮遊する感覚の中で、リュークは確かに“立って”いた。だが足音はなく、呼吸の音さえも消えている。

 音も重力も、すべてが失われた“虚無の世界”。


 そのとき、不意に――声が響いた。

 耳ではなく、意識の奥底へ直接染み込むような、静かで低い声。


『……記憶の鍵は……汝に宿る……』

『……イグニッション・コード……』

『……この世界は……“偽り”である……』


 断片的に流れる言葉は、古びた記録装置が途切れ途切れに再生しているかのようだった。

 それが命令か、警告か、あるいは祈りなのか――判別できない。


 ——ズズズ……。


 空間そのものにひび割れが走る。

 視界に亀裂が走り、そこから淡い光が滲み出した。


 やがて、裂け目の中心に“少女”が姿を現す。

 銀糸のような髪をなびかせ、胸の前で両手を重ね、目を閉じて静かに佇む――その存在は、現実よりも鮮烈に、意識に焼きついた。


 リュークは声を発そうとした。だが――声帯が断ち切られたかのように、音が出ない。

 少女の唇が、微かに震えた。


「……リューク……」


 その一言だけが、異様に鮮明に響く。


 次の瞬間――**バギィィッ!**と世界を裂く轟音が耳を突き刺した。

 彼女の背後にあった“何か”が崩れ、時間が逆流するように構造物がほどけていく。浮遊する断片が、音もなく解体されていった。


 ズン……!


 大地すらない足元が揺らぎ、リュークは思わず身体を傾がせる。

 祈るように立つ少女の姿は、光に溶け込むように飲み込まれていった。


 その直前――確かに彼女は“こちら”を見た。

 涙も声もなかった。ただ、その瞳だけがリュークを“観測”していた。

 そして、最後の声が重く降り注ぐ。


『……あなたは、“観測の外側”に触れた……』

『……コードは発動された。あとは、“選択”のみ……』


 言葉と同時に、空間全体に圧が走る。

 リュークの内側が軋むように、視界がぐにゃりと歪んだ。

 光も、闇も、音すらも引き裂かれるように消え――

 意識は、現実へと引き戻される。


 ◆メモリーバンク

 静寂の森の中、リュークははっと目を覚ました。

 焚き火の残り火が パチ……パチ…… と小さな音を立て、闇の中で淡く揺れている。


「……夢、か……?」


 額に手を当てる。

 残っているのは音ではなく、“響き”として刻まれたあの声。


『……汝は選ばれし者……』

『……イグニッション・コード……』

『……この世界の……記憶の鍵……世界は、すべて偽り……』


 断片的で意味は掴めない。

 だがその響きは、不可解な手順のように確かで――。


(……誰かの声だったのか? それとも……俺自身の?)


 身体を起こす。

 焚き火の残り火が生む熱が、冷えた空気と対照を成し、現実へと意識を引き戻していく。


「……記憶の鍵……」

「……世界は、すべて偽り、か……」


 思わず口をついたその言葉に、胸の奥がざわつく。

 スキルクリスタルを使ったあの瞬間――確かに、脳裏に“何か”が刻まれた。


(……戦場……剣戟の音……獣の咆哮……)


 断片的な映像は、濃い霧に包まれて輪郭を失っている。

 だが、不思議と「知っている」という感覚だけは、確かに残っていた。


「まだ……全部は戻らない、か」


 小さく息を吐き、意識を集中させる。

 ピッ、と視界に淡い光が走り、ステータスが浮かび上がった。


【ステータス】

 名前:リューク

 レベル:3

 スキル:メモリーバンク(開放条件未達成)

【記憶断片:未解析データ存在】

 スキル開放条件:金貨小1枚が必要


「……やはり、金貨が要るのか」


 その文字を見つめ、ぼそりと呟く。

 焚き火の赤色が再び視界を染めた。

 橙色の揺らめきが、指先や皮膚を柔らかく照らし出す。


(スキルを開放できれば……もっと記憶が戻る。いや、それ以上の何かがある)


 そう思うと、ただの通貨であったはずの「金貨」が、別の意味を帯びて迫ってくる。

 まるで――世界の鍵そのもののように。


「……まずは、ベルハイムだ」


 隣へ視線を向ける。

 黒狼――シャドウファングが、穏やかな寝息を立てていた。

 その胸が上下するたびに、月明かりに毛並みが柔らかく揺れる。


(やはり……こいつとは何か関係がある)


 出会った瞬間に覚えた既視感。根拠はない。

 だが“確信”だけが、胸の底に居座っている。


「……考えても答えは出ない、か」


 リュークはゆっくりと立ち上がり、薪を一つ焚き火にくべた。

 パキ……と枝が弾け、炎が一瞬だけ高く揺れる。


 夜は、まだ終わらない。

 その闇の向こうに待つものを、彼は確かめに行かねばならない。


 新たな力と、得がたい相棒を手にした今――

 彼の旅は、静かに、確実に前進を始めていた。



 次回: シャドウファングとの狩り、魔物の素材!

 予告: 力の代償は、記録されない者にも届くのか。

読んでいただき、本当にありがとうございます!

読者の皆さまの評価や応援の言葉が、何よりの力になります。


質問です。

「夢の中に現れた少女と“観測の外側”の言葉。これは警告?それとも導き? 読者さんの考察、お聞かせください」


もしよろしければ、「評価」や「感想」など、お気軽に残していただけると嬉しいです。


今後も更新を続けていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ