ギルの訓練
その後やってきた残りの3人も合流し、ギルは訓練を開始した。
ギルは俺と黒川に、"技"と"術"の使い方を教えてくれた。
"技"は剣士の"二連斬り"のようなものを指す。そして"術"は戦士の"防御力上昇"などのような状態を変化させるものを指す。技と術は合わせて"職業スキル"とも言われる。これは俺の持つ危険察知などの"スキル"とは全く別のものらしい。また職業スキルは、職業レベルが上がるごとに解放されていくらしい。
また、盗賊はレベル1の時点で、"目つぶし"という"技"と、"気配遮断"という"術"を使える。
そして魔法使いは、"フレイム"(小さな火を放つ)と"エアカッター"という"技"を使える。"術"はない。
"技"や"術"の発動は念じるだけで可能だ。しかし、"術"は持続的に使うには"術"を意識することが必要で、常に意識していないと、効果が切れてしまうらしい。また、"技"の発動は簡単だが、練習をしないと制御が難しいらしい。そして、"技"は練習を重ねる事でキレが良くなっていくらしい。
魔法使いである黒川は、魔法を数発撃っただけで、コツを掴んだようだ。これにはギルも驚いていた。また、ギルが言うには黒川の魔法は通常の魔法よりも威力が高いらしい。
早々に"技"を使いこなした黒川に対して、俺は"術"の使用に苦難していた。"術"だけを使用するのも難しかったが、"術"を発動しながら、"技"の発動や走るなどの動作をするのは特に難しかった。
「頭の片隅に、"術"を常に意識するんだ。気配遮断は相手に認識されにくくするだけだ。だから一度効果が途切れて敵に見つかると効果がうまく発揮しないぞ。」
この他にも、対人戦の際に使える動きや、基礎体力をつけるためのメニューを教え込まれた。
〜3時間後〜
長くも短くも感じた訓練が終わった。
昨日のやる気のないギルとは違い、本気のギルの指導はかなり厳しかった。しかし確実に実りのあるものだったと言える。
「ギルさん、ありがとうございました。」
俺たちはギルにお礼を伝えた。見ず知らずの異世界人のためにギルが尽力してくれた事は、俺の中でこの世界で初めて感じた光であった。
「残りの教えきれなかった事はさっき渡した指南書に書いてある。それを見て励め。それと、礼はいらない。これは友人との約束を果たしただけだ。」
「それじゃあ、ギルさんまたいつか。」
そう言って俺たちは訓練場を後にした。
他の金髪たち3人は基礎体力をつけるためと言われ、午前は走り込みをさせられていた。