教会にて
教会といっても、城内にあるのですぐに付く。俺も昨日の散策で一度目にした。
教会へ向かう途中、Aチームの奴らとすれ違った。Aチームには、委員長やサッカー部のキャプテンなどの陽キャとヤンキー2人がいた。
ヤンキー2人は嘲笑しながらこちらを取り囲むように立ちふさがった。
「お前らはどんな職業を選ぶんだよ。雑用係か?それともただの村人か?」
金髪のキョロ充が愛想笑いを浮かべながらヤンキーに同調する。
「まあまあ、そう言うなって。ほら、こいつらも可哀想だろ? せめて”ゴミ拾い”とか”飯炊き係”とか、それっぽい名前の職業を選ぶだろ。」
ヤンキーたちはゲラゲラ笑った。
俺は静かに彼らの言葉を聞き流す。こういう奴らは相手にすればするほど面倒になるし、反応を示せば余計に調子づく。無視して通り過ぎようとすると、
「おい、無視かよ? つまんねーやつだな」
わざとらしく舌打ちし、こちらを睨みつける。
「まぁまぁ、そこまでにしなよ。君たちもごめんね。」
サッカー部のキャプテンである"高橋 優斗"が仲裁に入った。彼はクラスで最多の7つのスキルを持ち、王様からも一目置かれているらしい。
彼が仲裁に入ったことで、ヤンキーたちはこれ以上何もしてこなかった。
こういう連中は、今後も現れるだろう。そしてスキルが一つしかない俺は格好の的だ。やはりスキルのことは周りに話すべきではないだろう。
こうして俺たちは教会に着いた。教会には大きな水晶のような物を持った立派な神像があった。
教会にはあの見慣れた神父がいた。
「あー、落ちこぼれ組ですか。さっさと職業を決めて下さいよ。」
先ほどの一件もあり落ち込みがちな俺たちは、明らかに以前とは態度の違う神父に気圧されていた。
そんな中、ギルは少し大きめの声で話し始めた。
「よーし。お前ら、選ぶ職業は決めてるな。金髪君から順に並べ。」
ギルの号令で、俺たちは一列に並んだ。
「じゃあ1人順番に神像の前に出ろ。それじゃあ神父さんよろしくお願いします。」
金髪が前に出ると神父は少し面倒そうに唱え始めた。
「親愛なる神よ、このものに職業の加護を......」
神父が唱え終えると金髪の身体は微かに光始めた。
数秒後、金髪を包む光は収まった。
「これで金髪君は完了だな。えーと、次は……」
こうして順にオタクたちも終えた。ギルは最後にもう一度適性に関する話をしたが、オタク2人は聞く耳を持たなかった。
「次は君だな。」
黒川の番だ。ギルの表情が少し引き締まった。
「親愛なる神よ、このものに、、、」
黒川は先ほどの3人とは比べ物にならない光で包まれた。さっきの3人はホタルほどの微かな光だったのに対して、黒川の光はスポットライトに照らされたような光だった。
数秒後、黒川を包む光は収まった。
「なんですか、この光は!」
はじめに口を開いたのは神父であった。
「この光は、7つのスキルを持つ高橋さんと同程度ではありませんか。」
先ほどまでやる気のなさそうな神父が、大きな声をあげた。
「ま、まぁ、まだ1人残ってるんだ、後からでも良いだろ。」
ギルは話題を変えようと必死そうに見えた。しかし、もしこのまま黒川の話に持ちきりで、俺の職業選択が後回しにされると困るのでギルに乗ることにした。
「そうだ。俺の番がまだだろ。早くしてくれよ。」
「そ、そうですね。とりあえず終わらせましょうか。」
俺は神像の前に出た。
「親愛なる神よ……」
身体が少し浮くような感覚だ。不思議な力を感じる。目を瞑っていても光っているのが分かる。
「ナニヲノゾム」
声は無いが意識のようなものが脳内に伝わってくる。
「えーと、私はシーフを望みます。」
スッと身体が地面に付くような感覚になった。これで職業の選択は完了したのだろう。とりあえず確認してみるか。
【ステータス】
名前:影山 道人
職業:盗賊 レベル1
スキル:危険察知
職業欄がしっかりと盗賊になっている。うまくいったようだ。
後ろを振り返ると、頭を抱えた神父がいた。
「なぜスキルが二つしかない者があのような光を……。どのように陛下へお伝えすれば良いのか。」
「じゃ、じゃあ、私たちは行きますね。」
そう言ってギルは俺たちを手招きし、俺たちは急ぎ目に教会を後にした。