フィルド自治領へ 4日目
今日も昨日のように朝からトレーニング。昨日と違うのは黒川と一緒にという事だ。
昨日は1人という理由で出来なかった、メニューを共にこなした。転移前から黒川は運動をしていたようで、俺よりも軽快に体を動かしていた。
ギルの指南書に書いてあった、組み手をしようとしたが、うまくできず、困っていた。そんな時に、ジルが入ってくれ、俺たち2人に色々と教えてくれた。
短い時間なのにも関わらず、ジルの教えをみるみるうちに飲み込んでいく黒川に比べて、俺は苦戦していた。
情けないな俺……。
そんな事を考えながらも俺は必死に食らいついた。
昨日よりも明らかに有意義な時間だった。
トレーニングが終わる頃には、黒川と前より多少自然に話せるようになっていた。
朝のトレーニングが終わる頃には、体力を使い果たし、馬車ではウトウトしていた。
ビクッ
身体が急にビクついた。
その数秒後
ドーンッ
遠くで激しい轟音がなった。
「様子を見てきます。逃げる準備をして、馬車を後ろに下げておいて下さい。」
そう言って、弓使いが音の発生源の方へと走っていった。
数分後
弓使いが戻ってきた。
「大きな岩が落ちたようです。それと道が土砂崩れで通れない状態でした。」
「そうですか…….。」
少し考えた後、御者は迂回路を通る事を決断した。
俺は魔法で岩を飛ばせないものなのかと疑問に思った。
迂回路の森を通ることで、到着が半日ほど遅れるらしい。
迂回路は正規ルートとは違い、あまり人が通らないので、道が荒れていた。
雑草や木の根が出ていてガタガタだった。
お尻の痛みに耐え、早く正規ルートに戻れと思いながら俺は座っていた。
1時間ほど森を進んで行った頃、俺はどこか胸にざわつきをおぼえた。
胸のざわつきが少しずつ強くなる。
「魔物が近づいてきている!」
弓使いが御者を止める。
ガルルルッ
森の奥から大きな狼が出てきた。
御者が馬車を後ろに下げようとした。
すると
後ろから同じ狼が現れた。
どうやら囲まれてしまったようだ。
「お前は後ろを頼む。馬は俺たちで担当する。」
狼の狙いは馬らしい。
剣士と魔法使いが馬車の馬を守り、弓使いが後ろからくる狼を担当するようだ。
10秒ほど、睨み合いが続いた。
最初に動いたのは魔法使いだった。
魔法使いは仲間に目配せをして、狼に向かって雷のような電撃を飛ばした。
電撃は狼に命中した。狼は体を膠着させ気絶した。
それを皮切りに、狼は飛びかかってきた。
狼は魔法使いを狙うが、剣士がそれを防ぐ。剣士が狼を斬ろうとすると、他の狼がそれを阻止。その後、斬られそうだった狼が剣士に襲いかかる。しかしそれを魔法使いが阻止する。
そうして馬車の前側では、一進一退の攻防が続いていた。
一方で、馬車の後ろ側では、2匹の狼相手に、弓使いが弓を放ち狼を牽制し、時間を稼いでいた。
俺はゴブリンの時のようにあっさり倒してくれるのだと思っていた。
「2対3か、マズいな。」
そう言ってジルは馬車から降り、前方へと向かった。
「あちらの1匹を私が相手します!残りの2匹をお願いします。」
そうしてジルは狼に向かい、ナイフを投げた。狼はそれを横へ飛んで避けた。しかし、狼が飛んで避けた瞬間ジルは短剣で狼の前脚を刺した。
その後は一方な攻撃で狼を数分で倒した。
そうしてジルは剣士と魔法使いの様子をチラリと見た後、電撃で気絶した狼の所へ向かい、トドメを刺した。
そしてジルは馬車の後ろ側へと戻り、弓使いに指示をした後、馬車から離れた。
ジルは鈴のような物を鳴らした。
その音に狼が気を取られた隙に、弓使いが狼の頭を矢で射抜いた。
その後はジルが弓使いと協力して、残りの1匹も倒した。その間に前方の剣士と魔法使いも狼を倒し終えた。
冒険者は軽く感謝を伝え、御者はジルに深く頭を下げ、礼をした。
冒険者は狼の毛皮や魔石を採取した。
冒険者は採取した素材の全てをジルに差し出すと言ったが、ジルは断り、2頭分だけ受け取った。
俺はジルの強さに終始唖然としていた。
その後は何事もなく、夜を迎えた。
俺と黒川は共に、ジルの教えを受けトレーニングをし、その後睡眠をとった。




