フィルド自治領へ 2日目
ガサガサッ
「うーん、いてて……。」
護衛の冒険者が支度をしている音で、目が覚めた。
現代の日本人に野宿はつらいな。腰をさすりながら体を起こす。
「シドさん、おはようございます。」
「ジルさんおはようございます。く、レンさんもおはよう。」
「おはようございます、シドさん。」
そうだ、黒川はレンと呼ばないいけないんだった。忘れそうになった。
出発の準備を待つ間、俺たち3人は朝食を食べた。
「お待たせしましたー。出発致しまーす。」
出発の準備ができたようだ。
魔物ってどんな見た目なのだろう。普通の動物とどう違うのだろう。俺は、外を眺めながらそんな事を考えていた。
俺がそんな事を考えていたら、護衛が少し小さな声で言った。
「馬車を止めて下さい。」
御者は馬車を止めた。
「皆さん、馬車から出ないで下さい。」
数分ほど、じっと音を出さずに待つ。
「だめだ、こっちにきてる。迎撃します!」
護衛の冒険者が迎撃体制をとる。
ザザッ。ギャギャ。
「ウルフ」
俺と黒川は馬車の隙間から外を見る。
外には緑の小さな醜い人間のような生き物がいた。
「なんだあれは……。」
俺は唾を飲み込む。
「もしかして、ゴブリン……。大丈夫なのか。」
自分が戦うわけではないが、初めて見る戦闘に不安になった。
「安心して下さい、シドくん。ゴブリンも倒せない冒険者がCランクにはなれないですよ。」
「そ、そうなんですね。」
「まぁいざとなったら、ゴブリン程度私が倒しますよ!」
ジルが俺を落ち着かせてくれた。
「ハァッ!」
「グギャー!」
ついに戦闘が始まった。
護衛隊は3人、そして対するゴブリンは5体。数的には不利だ。
護衛の冒険者達は、装備から見て、剣士、弓使い、魔法使いだと思う。
剣士が前でゴブリンと対峙し、その後ろで弓使いがその他のゴブリンを牽制し、剣士とゴブリンとを一対一の形にしている。魔法使いは1番後ろで何かしているようだが、よく分からない。
剣士は同じ人間とは思えないほどの力で、ゴブリンを叩き切った。また弓使いの身のこなしも、まるでアクション映画のようだった。魔法使いは時折、技を繰り出していた。
そんなこんなで、護衛隊は軽々とゴブリンを討伐した。
剣士はゴブリンの体をナイフでひらき、宝石のようなものを取り出した。
「あれが魔石なのか。」
魔石はビー玉ほどの大きさで、深緑色をしていた。
しばらくして、護衛隊が剣を拭いたりし終わり、再び馬車は動き出した。
その後は何事もなく、夜を迎えた。
夕食も済ませて、早めに寝ようと思っていると、黒川が近づき、話しかけてきた。
「シドさん、今よろしいですか?」
「あぁ、大丈夫ですよ。」
「シドさんは今日の戦いを見てどう思いましたか?」
「どうって……。すごいなとは思いましたけど。どうしてですか?」
「いや、なんでもないです。おやすみなさい。」
そう言って黒川は自分の寝床に戻っていった。
どうしたんだろうか。黒川さんが話しかけてくるなんて、意外だった。
俺はやきもきしながらも眠りについた。




