異世界の始まり
普段通り教室の端で寝ていると、突然眩い光に包まれた。
「うっ……」
目が覚めると、そこは宮殿の大広間のような場所だった。周りにはクラスメイトたちがいて、皆がざわめいている。
「異界の勇者たちよ!」
神父のような格好をした男が声を張り上げた。その言葉にクラスメイトたちはさらに騒ぎ出す。
「は? 勇者って何だよ!?」
「どこよここ! 早く帰らせて!」
当然のように帰りたいという声が上がるが、神父は静かに手を挙げて場を鎮めた。
「皆さん、突然のことに戸惑われるのも無理はありません。しかし、詳しい説明は後ほど行います。まずは、ここが異世界であることを証明しましょう。皆さんの“ステータス”を確認してみてください。」
神父の言葉に、皆が戸惑いながらも手元や意識に集中し始める。すると、不思議な感覚が体を包み、頭の中に情報が浮かび上がった。
【ステータス】
名前:影山 道人
職業:未選択
スキル:危険察知
神父はステータスについての説明を始めた。
「ステータスには三つの欄があります。その1番下のスキル欄、これをよく見ていただきたい。このスキルの数はその人の潜在能力によって数が異なります。召喚された方は、このスキルがこの世界の人間よりも多いとされています。」
そしてクラスメイトたちからは「スキルが3つある!」「俺は4つ!」といった声が次々と上がる中、俺のスキルはたった一つ、『危険察知』だけだった。
(普通、召喚された人間は3つ以上のスキルがあるってことか……。スキルの数はその人の潜在能力に比例するって言ってたけど……これは、もしかして俺は相当ヤバいのか?)
俺はそんな不安を抱えつつも、特にそれを口に出すことはしなかった。クラスメイトたちとも普段から深く関わっていないし、この異常な状況で余計なことを言う気にはなれなかった。
ステータスの確認が終わると、神父は再び声を上げた。
「それでは、皆さん。詳しい説明は別室で行います。こちらへどうぞ。」
案内されるまま、俺たちは別室へと移動した。そこには椅子が並べられており、皆がそこに座っていく。
神父は深刻な表情で話し始めた。
「この国は今、魔王による支配の脅威に晒されています。我々はその魔王を討伐するため、皆さんを“勇者”として召喚しました。そして、元の世界へ帰還するためには、その魔王が持つ“宝玉”が必要です。」
その言葉に再び不満の声が広がる。
「ふざけんな! 勝手に召喚しておいて、帰るには魔王を倒せだと!?」
「そんなの俺たちの知ったことかよ!」
しかし、どれだけ騒いでも現実は変わらない。次第に皆もその事実を受け入れ始めた。
「突然のことですから、すぐに受け入れるのは難しいでしょう。ですが、今後のことは明日改めて説明いたします。今日はそれぞれに部屋を用意していますので、ゆっくりお休みになるか、城内を見て回ると良いでしょう。」
そう言って神父は話を終えた。