演者二人は人生を賭けたクエストに挑み理想を追求する
「貴様は遠慮を知らんのか!恥をかかせやがって!」
「お言葉ですが殿下、横暴ではありませんの?」
男は女の様子を伺い、ツカツカとあえて足音をたて近付き女に顔を近づけ睨む。
「口答えをするな!」
「学園では実力主義。陛下の意向を無視してます」
「黙れ!」
5月。
ロア王立学園のテスト結果が張り出された掲示板近くに人だかりができていた。
中心には二人の男女、名を男は王太子のカロス=ロア。女は婚約者のシア=ネリア。
二人は婚約者同士である。
不仲であるが、欠点を補い合える理想の関係だろう。
カロスは国民の評判は少し悪いが決断力のある君主。
シアはカロスに口聞きできる唯一の存在。慈善活動をし、国民から聖母。
そんな二人は順位で言い争っていた。
カロスは二位、シアは一位。
構図は自分が一番でないから気に入らないカロスとそれを諫めるアリシア。
二人は互いをさらに睨み合う。
アリシアは瞬きを三度すると、カロスは動き始めた。
「チッ!貴様には何を言っても無駄のようだ。次は俺が一位を取る、優越感に浸っているがいい!」
「では私は次も殿下の上になります」
「ふん!」
カロスは捨て台詞を残しその場を去る。
取り巻きが後を追った。
二人の一連のやりとりは流れるような華麗さすらあった。
「アリシア様お気になさらないでください」
「そうです!アリシア様は聡明なお方です。理解できぬ殿下はおかしいのです」
カロスが立ち去った後、アリシアの取り巻きたちが慰める言葉をかけた。
だがそんなアリシアは微笑み人差し指を唇に置く。
「殿下はあのような態度ですが、本当は聡明なお方ですわ。皆様どこに耳があるかわかりません。シーですよ?」
「「「はぁ…なんと慈悲深い」」」
その姿は慈愛深き女神と錯覚し、見惚れる令嬢たちだった。
実は全て演技だ。
同日夜、王宮のカロスの自室。
「上手く行ったね!」
「全然ダメよ」
「え…手厳しい」
「手の角度、声の張りがイマイチよ」
「ご…ごめん」
二人は反省会をしていた。
実は本来の性格は真逆であり、心優しい気弱のカロスと勝気なアリシア。
演技は幼少期どうすれば理想の統治ができるか考え、結論カロスは聡明な暴君、アリシアは慈悲深い聖母をそれぞれ目指した。
二人は十歳の社交会デビューから演じ続け、騙し続けている。
これは国民を欺く人生を賭けたクエストだから。
二人は演技力の見破れる者は誰一人もいない、理想のため演技を続ける。
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