表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

兎森りんこ短編集

別れた元カレが急に部屋に来たんだが

作者: 兎森りんこ


「お笑いでも見ようぜ」


 そう言って元カレのアオキ君は冷蔵庫からビールを取り出して持ってきてテレビを付ける。


「ねぇ、アオキ君さぁ……ここ私の家なんだよ」


「ケチくせ~~あれ映らねー」


「そういうとこだって……そういうのイヤで別れたんだよ」


「アクア泥水のDVD、持ってたよな? それ見よそれ」


 アクア泥水は二人で好きだったお笑い芸人だけど……。


「まったく話聞いてないし……」


 私はビールをとりあえず飲む。まだ冷えてる、美味しい。


「カップ麺も食っていい?」


「あ~……もういいよ。好きな物食べて」


「やったぜ!! お、冷蔵庫にお前のカレーと米もあるじゃん!」


「はぁ……勝手に食べな~、そんなもん嬉しいの?」


「そりゃ嬉しいよ」


「元カノのカレーが?」


「おう、俺はお前のカレー好きだったし、今もお前の事も好きだし」


 思わず一気に飲み干した缶を、電子レンジの前にいる男にぶつけそうになった。


「はぁ~? 馬鹿でねぇの? なに今更あんた」


「地元訛り出てんぞ~~」


「まじなんなん!?」


 本当にイラつく。自分も訛りあるくせに。


「いいからいいから、お笑い見よーぜ」


 温まったカレーライスとお湯を入れたカップ麺をローテーブルに持ってきてアオキ君はお笑いのDVDの再生を押した。


「こっれさ~まじ笑えるよな」


「……笑えない」


「ウケるじゃん! このらーりらっらーりらっからの……あははははは!!」


「無神経すぎない? 元カノの家に急に来てさ」


「笑ったら免疫力アップするんだぜ?」


「そんなもん上げてどうすんのよ……」


 馬鹿みたい、笑えない。

 今の状況コメディ映画じゃないんだよ……アオキ君。


「馬鹿……アホ……バカ男」


「じゃあセックスする?」


「は……?」


 カレー食べながら言うなアホ。


「うちら付き合ってもいないのに、馬鹿じゃん?」


「なんか、やっぱりさ~~~一緒にお笑い見て一緒に笑えたのってハルだけだったなって……今頃思った」


 馬鹿じゃない? 馬鹿じゃない?

 バカバカバカバカバカ


「だからって……もう遅いよ……今更」


「うん、ホントにね」


 ブツッと電気が消えた。

 お笑いのDVDも消えた。

 真っ暗。


 そして、聞こえる。

 ゾンビの叫び声、生きたまま食われる人間の叫び声。

 世界は狂ってしまって、外はゾンビだらけ。

 生きてる人間も、もうわずか。

 此処にもいずれ、ゾンビが来て私達は殺される。


 真っ暗闇のなか、アキオ君に抱き締められた。


「セックスしよ死ぬ前に」


「あんた見てたら、アクア泥水のお笑い思い出して笑っちゃうよ」


「らーりらっらーりらっって、笑いながらヤルか」


「さいてー」


「いいじゃん」


 最後に覚えてたのは、なんだったろうかな。

 アキオ君は本当に馬鹿で笑って免疫力も上がったと思う。

 何度もヤリまくってきっと受精もしたんだろうけど

 そこで私の人生は終わっちゃった。

 ぬるいビール。

 らーりらっらーりらっらーりらっらーりらっ。

 りらり。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ